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金魚妻 1巻とは?

出版社:集英社
発売日:2017/1/19
作者 :黒澤R

黒澤Rが描く、禁断の不倫愛…。 グランドジャンプで大反響を呼んだ、珠玉の4作品にはあなたの知らない“妻”がいる。 妻はなぜ、一線を越えたのか――? 悩める人妻の4つの物語!! 【収録作品】金魚妻/出前妻/弁当妻/見舞妻

 

金魚妻 1巻のネタバレ

金魚妻 のネタバレ

言い出せない願い

朝から太陽の熱気を、ジワジワと感じる朝。
 
あるアパートの一室、仕事に行く夫の背中に平賀さくら(ひらがさくら)は声をかけた。
 
声をかけ辛い雰囲気を感じながらも、あのさ…と勇気を出して声を出す。
 
その声に夫は、微妙に間をあけて返事をした。
 
振り返ることもなく返事をする夫に、言葉を詰まらせるさくら。
 
なかなか話し出さないさくらに苛立ったのか、急いでいると夫は言う。
 
さくらは勇気を振り絞って言った。
 
金魚を飼ってもいい?とやっと伝えるさくらだが、最後のほうは声が小さくなってしまう。
 
夫は冷たい声で「好きにすれば」と言い放ち、乱暴に玄関の扉をしめて去っていった。
 
さくらは静まり返った玄関に残され、扉に向かって行ってらっしゃいと告げた。
 
その日、郵便局の配達員が本人限定受取の封筒を持ってきた。
 
それを受け取ったさくらは、中身を確認した。
 
確認したさくらは、静かに廊下に佇むのだった。
 

金魚屋さん

セミの鳴き声が賑やかな昼下がり、さくらは近所にある金魚屋の前にいた。
 
半袖の白いブラウスに、ウエストの部分にリボンがついたひざ丈のスカート。
 
外に出る時の服装は、どこか清楚な雰囲気だ。
 
こんにちはと金魚屋の中に入ると、店主はちょうど洗面台に向かい電動髭剃りでひげをそっていた。
 
急いで剃るからちょっと待っていてと声をかけられ、さくらはお構いなくと答えた。
 
店内にはたくさんの水槽があり、金魚はすいすいと気持ちよさそうに泳いでいる。
 
赤やオレンジなどの斑点がキレイな金魚。
 
頭がぼこぼことしている獅子頭や、頬を膨らませたようなユニークな金魚もいる。
 
さくらは優雅に泳ぐ金魚を、目を輝かせて見つめていた。
 
髭を剃り終わったらしい店主が、さくらに声をかけてくる。
 
店主は髭をそると随分、若く見えた。
 
ここのところずっと通っていたさくらのことを、覚えていた店主。
 
それを告げるとさくらは、すみませんと謝った。
 
謝られてしまった店主は、謝る必要なんてないと笑う。
 
そんな店主にさくらは、今日こそ決心がついたと話した。
 
夫に生き物はダメだとずっと言われていたのだが、今朝許しをもらったことを報告するさくら。
 
店主はよかったねと笑い、旦那さんもきっとハマるよとほほ笑む。
 
しかしさくらは苦笑いをし、それはどうでしょうと影を落とした。
 
店主は腕まくりをしどの子にするかと聞いてきたが、さくらはまだ決めることが出来ないでいた。
 
さくらはお祭りの金魚を、昔一度だけ飼ったことがあった。
 
だけどその金魚は三日で死んでしまい、そのことを思い出してさくらは暗くなった。
 
金魚を飼うのは難しいだろうかとぼやけば、店主はそんなことはないと答えた。
 
飼い方もしっかりと教えてくれると言われ、さくらは安心した。
 
長い付き合いになると思うからゆっくり選んでと言われ、さくらはペコリとお辞儀をした。
 

お手伝い

その時店の電話が鳴り響いた。
 
店主が電話に出ると、それは金魚を飼っているお客さんからのものだった。
 
電話の相手は、金魚の様子がおかしいことを心配して連絡をしてきたようだ。
 
店主は松かさ病だと答えて、餌は何を食べているのかなど質問をしていく。
 
そこへ馴染みのお客さんがきて、金魚と水草を購入しようと声をかけた。
 
店主はちょっと待っててと謝るが、少し急いでいるのか早くしてほしそうなお客。
 
それを見ていたさくらは、お客に声をかけた。
 
私やりましょうか、と名乗りでればお客は嬉しそうに反応する。
 
店主は彼女はお客さんだと焦るが、さくらは毎日着ていたら覚えてしまったと笑う。
 
スーパーのレジの経験もあるので、清算もできるはず。
 
そうお客と話していると、お客はさくらにここで働くといいと言った。
 
勝手に決めるお客にツッコミを入れる店主だが、お客はとても楽しそうにしている。
 
無事に清算を済ませて帰っていくお客は、去り際に「店長いい奴だよ」と言い残していった。
 

俺の家だ

帰宅した途端、夫の怒鳴り声が響いた。
 
夫はさくらが買ってきた水槽を見て、激怒しているのだ。
 
なんだこれは!と声を荒げる夫に、水槽だと答えるさくら。
 
今朝飼っていいと言ったはずだとさくらはいうが、夫はもっと小さな金魚鉢を想像していたようだ。
 
さくらは、初心者は水量を多めで始めたほうがいいと聞いたのだと説明する。
 
一週間フィルターをブクブクとさせ、バクテリアを増やしていくのだ。
 
しかし夫はそんな話は知らないと「人の話を聞け!」と大声を出した。
 
さくらは身体をビクつかせる。
 
夫は、ここは俺の家だと言い放つ。
 
俺が働いて、ローンを払っているとまくしたてる。
 
専業主婦になって欲しいと言ったのはそっちだ、とさくらは呟く。
 
返してこい、と話しを聞く気がない夫。
 
さくらは、嫌だと答える。
 
しかし夫は、じゃなけりゃお前が出ていけ!と怒鳴るのだった。
 
さくらは夫の顔を見ることができなかった。
 
そしてずっと、気になっていたことを聞く。
 
最近急に冷たくなったよね…何か隠していない?小さな声でぼやく。
 
夫の返事は、早くしろの一言だった。
 
そして夫は、部屋の扉をバタンと音を立ててリビングに入っていった。
 

返却

夫はリビングで一人、電話をしていた。
 
電話の相手は、女性だ。
 
今家じゃないの?と不思議がる女性に、今嫁さん外出中と夫は答えた。
 
さくらは夜の道を、重たい水槽を抱えて歩いていた。
 
金魚屋さんのシャッターは、もう閉まっている。
 
しかしさくらは、声をかける。
 
シャッターをあけた店主は驚いた。
 
疲れてシャッターの前で息を切らしているさくらに、どうしたのかと声をかける。
 
するとさくらは、大きい水槽がダメだと言われたと話した。
 
こっちがむやみに勧めたからと申し訳なさそうにする店主。
 
店の中に招きいれれば、店長さんのせいじゃないとさくらはいった。
 
レジを開けるから待っていてとお金を返そうとする店主だが、さくらは返金はいいと断る。
 
返品は勝手な都合だし、もう水槽を売り場に戻すこともできないはずなのだ。
 
うちで再利用するから大丈夫という店主だが、さくらは頑なにお金を受け取ろうとしない。
 
んーと考える店主は、さくらに提案をした。
 

招かれた屋上

ついてきて、と言われ不思議に思うさくら。
 
普段はお客さんは入れないんだけどと、店主は階段を上っていく。
 
その後を着いていくと、辿り着いたのはたくさんの金魚を育てるためのスペースが広がっていた。
 
屋根のついた屋上全体に、木で出来た大きなお風呂のような水槽。
 
そこに数えきれないくらいの金魚が泳いでいた。
 
さくらは池のようだと思い、圧巻の声を漏らす。
 
店主はここに水槽を置いて、金魚を飼ったらどうだと提案したのだ。
 
広い水の中を気持ちよさそうに泳ぐ金魚を、二人で眺める。
 
綺麗…と声をあげるさくらに、ここは日当たりも良いし風通りもいいんだと店主は言った。
 
好きなものをあげるから選んでいいよと言われ、さくらは焦った。
 
余計に迷惑をかけているような気がしたからだ。
 
店主はさくらに笑顔を向けて、君みたいなかわいい子が来てくれると俺も嬉しいと話す。
 
その返事に、言葉を失うさくら。
 
店主はとっさに謝り、きもかった?と心配した。
 
さくらはそれを否定すると、最近全然そういってもらえないから嬉しいと笑う。
 
店主は不思議に思い、ケンカでもしたのかと聞く。
 
さくらは表情を暗くし、夫は浮気をしているのだと呟いた。
 
浮気をしているのだ、自分よりずっとキレイな女性と。
 
店主は驚き、さくらを見る。
 
しかしさくらは、別の池のところへ移動し声をあげた。
 
その池の中では、色んな柄の金魚が泳いでいたからだ。
 
さくらの様子に、店主は詳しく聞くことをやめたのか話し出す。
 
その池は、ハネっ子の池だった。
 
ハネというのは、選ばれなかった魚だ。
 
金魚というのはたくさん子どもを産む。
 
だからキレイな子を選んで、育てていくのだ。
 
そしてハネっ子は、里子にだしたり金魚すくいに出したりする。
 
肉食魚の餌になることもあると言えば、さくらは驚いて声をあげた。
 
「私…この子にします」とさくらはハネっ子の中から金魚を選んだ。
 
そうっとすくおうとしたさくらだったが、突然金魚が跳ねて外に跳び出してしまう。
 
さくらは叫び声をあげて、急いで救おうとするがうまく拾うことができない。
 
店主はさくらに変わるようにいうと、うまく金魚を手に乗せた。
 
何度も謝り、罪悪感いっぱいになるさくら。
 
しかし店主は、このくらいじゃ死なないから大丈夫だとさくらを落ち着かせる。
 
それでもさくらは、数枚金魚の鱗が落ちてしまっていることが気になった。
 
店主はさくらに、塩を取ってと指を差す。
 
言われた通りに塩を渡すと、さくらが持ってきた水槽の中にたくさんの塩を入れる。
 
1リットルに対して、塩小さじ1杯。
 
金魚にとって快適な塩水は、トリートメントになるのだ。
 
鱗もちゃんと再生するから心配しないでという店主。
 
さくらはよかった~と思わず泣き出してしまった。
 
そんなさくらに笑顔をむけた店主は、ポンとさくらの頭に手をのせた。
 
そしてさくらは店主に「もうちょっと、ここにいていいですか」と聞いたのだった。
 

交わり

コポコポと水槽から水音がする店内の、奥の部屋。
 
さくらと店主は、キスを交わしていた。
 
シャツのボタンを外しながら、本当にいいの?と聞く店主。
 
座る店主の膝の上に、向かい合うように座るさくら。
 
やっぱりやめましょうか、とさくらは頬に手を添える。
 
しかし二人はそのまま、抱き合うのだった。
 

元気になるまで

さくらは今日も金魚を眺めていた。
 
さくらが落としてしまい、鱗が取れてしまったあの金魚だ。
 
塩水でのトリートメントは、どれくらい続けるのかと店主に聞くさくら。
 
すると店主は、元気になるまでと答えた。
 
そしてさくらにも、元気になるまでここにいればいいと伝えた。
 
そこへ常連客が訪れた。
 
店主のことを、豊田(とよだ)さんと呼ぶ中年の男性。
 
再婚したの?と驚いた様子を見せる常連客に、この子は人妻だと答える店主の豊田。
 
さくらは、バイトだと名乗り小さく頭を下げた。
 
なんかヤラシイ!と常連客は叫ぶのだった。
 
お客がいなくなったころ、豊田はさくらに声をかけた。
 
夫からの連絡はこないのか、気になったのだ。
 
しかしさくらは、実は今携帯の電源を切っているのだと答える。
 
きっと今頃、彼女を家に連れ込んで楽しくやっているだろうと思った。
 
それでもさくらは、前ほど苦しくなかった。
 
それはきっと、豊田のおかげだろう。
 
そんなさくらに、豊田は「旦那さん今頃すっごく後悔してるよ」と呟いた。
 
本当にさくらのことが嫌いなのだとしたら、浮気する前から冷たくなるはずだ。
 
さくらはその言葉に、どうでしょうと言葉を濁す。
 
それでも豊田は続けて話す。
 
自分の心の問題なのに、夫は原因をさくらになすりつけてごまかしているのだ。
 
さくらは意味深に呟く豊田に、よくわかってらっしゃると視線を向ける。
 
豊田は、昔のボクと一緒だったからとうつむいた。
 

本気じゃないでしょう?

さくらがいない自宅。
 
さくらの夫は、シャツに下着という服装で彼女を見た。
 
キャミソール一枚で彼女が見ているのは、あの日さくらが受け取った調査報告書だ。
 
「奥さん、気づいてたんだね」と呟く彼女は、本当に探偵を雇ったりするものなのかと思った。
 
そして知らないうちに撮られた写真に写った自分の顔を見て、ぶさいくだと呟く。
 
訴えるつもりなのだろうか…そう夫に問いかける彼女だが、夫はさくらが電話に出ないためになにもわからないのだと言った。
 
彼女は黙って服を着て、身なりを整えだす。
 
そんな彼女に焦ったのか、夫は考えすぎだと彼女を止める。
 
夫はさくらがそこまでするとは思えないというが、彼女はこういうのは無理だと拒絶する。
 
そして「お互いそこまで本気じゃないでしょ?」と言い残し、家から出ていくのだった。
 
夫は一人、部屋に取り残された。
 

金魚が好きな理由

豊田はさくらに、なぜ金魚を飼いたくなったのか聞いてみた。
 
するとさくらは、ここの金魚が気持ちよさそうに泳いでいるのをみて羨ましくなったのだと笑う。
 
そして豊田にも、なぜ金魚が好きなのかと聞いた。
 
店長は少し考えてから、逞しいところだと答える。
 
自然界では生きていけない金魚には、逞しいという言葉は不向きな気がしてさくらは首を傾げる。
 
豊田はさくらに寄り添い、話し出した。
 
金魚…というのは、食べられもしない観賞魚だ。
 
幾分の変遷を、たった一つの『か弱い美の力』で切り抜けてきた。
 
そう呟きながら、さくらを脱がしていく豊田。
 
彼が口にしているのは、岡本かの子の金魚繚乱の一文だ。
 
人が金魚を作って行くのではなく、金魚自身の目的。
 
それが人間の美に惹かれる一番弱い本能を誘惑し、利用しているのではないか。
 
そんなことを話しながら、二人はまた激しく交わるのだった。
 

支配力

ある日ある男性が、金魚屋を訪れた。
 
それはさくらの、夫だった。
 
スマホの画像を豊田に見せながら、この女性をしらないかと聞く夫。
 
豊田はその写真を見ながら、うちは色んな人がくるから…とスマホを返した。
 
そうですか…と呟く夫に謝りながら、部屋に続く扉を閉める豊田。
 
夫は金魚をぼーっと見つめ、飼ってみようかなと呟く。
 
そんな夫に豊田は、ハマると思うよと答えた。
 
その頃さくらは、屋上にいた。
 
抱かれた時に、たくさん中で出していった豊田。
 
さくらは豊田のことを、結構支配欲の強い人なのかもしれないと思った。
 
ふと水槽を見ると、ボロボロになっていた金魚が元気に泳いでいた。
 
悠々と泳ぐ金魚を見ていたら、さくらは笑いが込み上げてくるのだった。
 
 
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出前妻 のネタバレ

謝罪

静まり返った夜。
 
岡崎庵と書かれた蕎麦屋も、その奥のリビングももう人はいない。
 
岡崎杏奈(おかざきあんな)は、夫のあつしとベッドに横になっていた。
 
あつしは杏奈に背中を向けて、目を閉じている。
 
杏奈はあつしの背中に、本当なの…?と声をかける。
 
あつしは目をきつく瞑りながら、「本当にごめん…今まで」と答えた。
 
杏奈の瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちる。
 
両手で顔を覆い、あんなは泣きじゃくった。
 

蕎麦屋

昼時、忙しくにぎわう蕎麦屋。
 
会計をしていたあつしは、常連の客から「杏奈ちゃんは元気?」と声をかけられる。
 
最近見かけない杏奈のことを、気にかけてくれたようだ。
 
あつしは、祖父はぎっくり腰をしてしまったこと。
 
妹は出産で里帰り、母はもう墓の中。
 
そしてあつしと父親は、蕎麦を打たないといけない。
 
そのため杏奈に、出前に出てもらているのだと事情を話した。
 
女の子が出前をすることを心配するお客だが、あつしはもう若くないからと笑った。
 
今日は午後から天気が崩れるからと、教えてくれるお客。
 
マジすかと答えていると、まだやってる!?と勢いよく入り口を開ける声がした。
 
もうラストオーダーで…と断ろうとしたものの、入ってきた客を見て納得した。
 
何だ祥子(しょうこ)か…と言われた彼女は、スーツに胸元まである長い髪の美人な女性だ。
 
いつもの?と聞けば、祥子はとても喜んだ。
 
祥子に気づいた父親が、奥から声をかけた。
 
子どもたちはどうしたのかと聞けば、保育園だと祥子は応える。
 
シングルマザーの祥子は、忙しいのだそうだ。
 
戻りましたーと扉を開けて戻ってきた杏奈は、ワイワイと聞こえる声にハッとした。
 
これはサービスね!という父親の声に、「おじさん大好き!」と元気よく感謝する祥子。
 
杏奈はこっそり、様子を覗いてみる。
 
すると店の奥の自宅から、ぎっくり腰で休んでいるおじいちゃんと里帰り中の妹がわらわらと出てきたとことだった。
 
家族みんなが祥子のことを囲んで、楽しそうに会話をしている。
 
その時あつしの妹が、祥子に聞いた。
 
昔、あつしと祥子が付き合っていたことについて聞く妹。
 
祥子はずっと昔だけどね、と笑う。
 
妹は、あーあ…と声をあげた。
 
「私、祥子ちゃんと姉妹になりたかったなー」
 
妹は、別に杏奈のことが嫌いというわけじゃない。
 
それでも、あつしと祥子のほうがお似合いだと思ってしまうのだと話す。
 
その言葉に、ドキッとするあつしと祥子。
 
父親に顔が赤いことを茶化され、あつしは焦った。
 
祥子は「困っちゃう~」とうまく返している。
 
この人達あやし~と嬉しそうに茶化す妹の声…杏奈は全て聞いてしまっていた。
 
その時店の電話が鳴り響いた。
 
茶化されながら「全く…」と電話に出ようと立ち上がるあつし。
 
しかしその電話は、電話の近くにいた杏奈が取る。
 
杏奈が電話を取った声がして、盛り上がっていた一同は静まり返った。
 
妹は「やば…」と口元を抑え、祥子は苦笑いを浮かべている。
 
「遅い!もりそば一枚に何時間待たせるんだ!?」と電話から大きな声が響いた。
 
その声は話に夢中になっていた父親にも届いた。
 
注文を受けたことを、父親はすっかり忘れてしまっていたようだった。
 
電話口で怒鳴られ青ざめ動転する杏奈。
 
父親は杏奈に電話を変わるように言い、今ちょうど出たところだと誤魔化したのだった。
 
電話の相手は、クレーマーと呼ばれた五味田(ごみた)だった。
 
急げ急げと、あつしは猛スピードで蕎麦を作り始める。
 
そして杏奈は急いで出前の用意をした。
 
出来上がった蕎麦を、配達ようのバイクに乗せるあつし。
 
俺が行こうかと声をかけるあつしに、杏奈は平気だと返した。
 
そして、お店お願いね…と杏奈は笑顔を向け走って行ってしまう。
 
すぐに行ってしまった杏奈を、呆気に取られて見送るあつし。
 
そこへ店から祥子が出てきて、杏奈のことを心配した。
 
午後は天気があれると言っていたからだ。
 
既に空からは雨が降り出していて、雨脚はどんどん強くなっていた。
 
あつしはそんな中、「ああ…知ってる」と杏奈が走って行った方向を見つめるのだった。
 

雨の中の出前

横殴りになってきた雨の中、バイクを走らせる杏奈。
 
ヘルメットに打ち付ける雨の力は、どんどん強くなっていた。
 
何とか五味田の家に辿り着いた杏奈は、声をあげて五味田を呼ぶ。
 
なかなか出てこない五味田を何度か呼んでいると、後ろから「遅え…」と怒りの形相の五味田が現れた。
 
その迫力に、杏奈は驚き体を硬直させる。
 
五味田は雨が激しくなるために、外に置いてある鉢植えを回収してきたようだった。
 
ちょうど今出たと電話で言っていた父親だが、それが嘘だったことはお見通しだったらしい。
 
杏奈がごめんなさいと謝ると、五味田は杏奈に上がっていけと声をかけた。
 
激しくなる雨…どうせ今日はもう出前も中止なのだ。
 
杏奈は「うん」と返事をし、家の中にお邪魔することにした。
 
机の上に出前で持ってきたばかりの蕎麦を並べ、ズズといい音を立てながら蕎麦をすする五味田。
 
そんな彼に蕎麦の感想を聞くと、五味田は茹で方が雑だと言い放った。
 
最近店の評判も悪い…とスマホの画面を見せる五味田。
 
そのサイトには、特定の客をえこひいき…従業員家族の私語が不快など厳しいことが書かれている。
 
それをみながら、杏奈は先ほどの光景を思い出し納得した。
 
地元に愛される蕎麦屋だからといっても、おざなりな対応では評価は落ちていくものだ。
 
杏奈はその言葉を受け止めながらも、耳が痛い話だと思った。
 
しかし杏奈は、あの人達に意見をいうことはできないのだ。
 
嫁の立場ってそんなに低いのかと聞く五味田。
 
杏奈は、他人だし新参者だし…と返事をする。
 
ストレスが溜まりそうだといった五味田に、杏奈は同意した。
 

最後かもしれない

こっち来なよ、と五味田は両手を広げる。
 
杏奈は大人しく、五味田の腕の中におさまった。
 
思えば…ここに始めてきた日も、こんな荒れた天気だった。
 
そう思い出す杏奈を後ろから抱きしめながら、五味田はゲップを出す。
 
それを注意する杏奈だが、五味田は腹一杯になったらしく満足気だ。
 
今日も…する?と杏奈は五味田の様子を伺う。
 
しかし五味田は、来るのが遅かったからもう自分で処理をしたと答えた。
 
そんな五味田に、「なんだ…」と呟く杏奈。
 
もう会えるのは最後かもしれないのだ。
 
それを聞いて、五味田は驚き顔を寄せた。
 
そして杏奈は、五味田の肩口に顔をすり寄らせる。
 
私ね…この町を出ていくの…激しい雨音の中、あんなは呟いた。
 

始まりの日

あの日も雷のひどい日だった。
 
食べ終わった蕎麦の皿をもって出てきた五味田は、座り込んで空を見上げている杏奈に驚いた。
 
まだいたの?と声をかければ、杏奈は雨が止むまでここの下にいさせてほしいとお願いする。
 
五味田は別にいいけどと答えるが、この雨はしばらく止まないことも伝える。
 
それを聞いた杏奈は、雷の大きな音と共に盛大に驚いた。
 
予報はハズレ、夕方まで雷雨の予定だった。
 
五味田はさっきから杏奈が飲んでいるものが気になった。
 
蕎麦湯だと杏奈が説明すると、五味田の瞳が輝いた。
 
部屋に上げてもらった杏奈は、ポットに入れていた蕎麦湯を振る舞う。
 
出前にも蕎麦湯を付けてくれとお願いする五味田に、杏奈は検討しますと答える。
 
杏奈の口調に訛りがないことが気になったのか、地元の人間かと聞く五味田。
 
杏奈はここに嫁ぐ前はずっと神奈川、五味田は東京だ。
 
五味田は東京にいたころに、喘息と鼻炎がひどくなってしまったらしい。
 
そのため空気のいい田舎で、テレワークを始めたのだそうだ。
 
五味田はソファにどさっと体を預け、体調はよくなったが娯楽がなくてヒマだといった。
 
同意する杏奈と、その後も話を続ける五味田。
 
そんな中ふと思ったのか、五味田は杏奈に歳を聞く。
 
杏奈が29だと答えると、五味田は杏奈が年上だったことに驚いたようだ。
 
杏奈も五味田が年下だったことに驚いた…五味田は26歳らしい。
 
子どもはいるのかと聞けば、いないけどという杏奈。
 
年下だとわかった途端にタメ口になった杏奈に、五味田は突っ込むがまあいいけどと呟く。
 
何で子どもを作らないのかと聞く五味田に、なんでそんな質問をするんだと険し気に視線を向ける杏奈。
 
そこに五味田は、旦那とちゃんと夜のコミュニケーションを取っているのかとストレートに言われて杏奈は焦った。
 
そのタイミングで大きな雷が落ち、部屋は停電になった。
 
すると暗くなった途端、五味田は杏奈に近づいてくる。
 
後退りする杏奈に、興奮してきたと迫る五味田。
 
杏奈は驚きながら、ムリだと指輪を見せる。
 
しかし五味田は、キスだけでいいのだと更に迫る。
 
必死で困ると説明する杏奈だが、顔を近づけた五味田の言葉にドキっとしてしまう。
 
「あんた、肌…すっげーきれいだね」
 
ふいうちのセリフに照れてしまう杏奈は、蕎麦を食べているからだろうかと俯く。
 
もっと近くで見せてと再び近寄ってきた五味田に、そのままキスをされる。
 
そしてそのまま、杏奈を押し倒して服の中に手を滑りこませてくる。
 
男性のお客さんの家には、危険だからお邪魔しちゃいけないと言われていたことを思い出す杏奈。
 
五味田なら大丈夫だと、油断していたと杏奈は思った。
 
どんどんと五味田の手が身体を弄る中で、杏奈は家族のことを想った。
 
どうせあの人たちは、今も祥子に夢中なのだろう。
 
私がこんなことになっているなんて、思いもしないのだろう。
 
体を貪る五味田に、杏奈は声をかける。
 
「私と夫ね、相性が悪いんだって」
 
その声に、体の?と聞き返す五味田。
 
そう、杏奈の体はあつしと相性が悪いのだそうだ。
 
杏奈の体は、あつしの精子を異物だと思って殺してしまうのだ。
 
それを聞いて、色々と察する五味田。
 
そしてそのまま、二人は最後まで交わったのだった。
 

あの頃

休憩中の蕎麦屋。
 
家族はみんな、居間で昼寝をしている。
 
あつしと祥子は、誰もいなくなった店の中で話していた。
 
何で私、あつしに振られたんだっけ?
 
唐突にそう質問する祥子に、昔のことを思い出すあつし。
 
あの頃のあつしは、祥子のレベルが高すぎて心配だったのだ。
 
常に悩んで疲れていて…そういうのが嫌になってしまった。
 
その理由を聞いて、かわいい理由だと笑う祥子。
 
聞いて満足したかというあつしに、祥子は全然と答えた。
 
そしてもう一つ質問をした。
 
正直、杏奈のことをどう思っているのかと。
 
するとあつしは、杏奈とは死ぬまで一緒にいたいと思っていると答えた。
 
予想外の答えだったのか、呆気にとられる祥子。
 
本当?ともう一度聞くも、だから結婚したんだとあつしは祥子を見た。
 
祥子はあつしと杏奈が全く仲が良く見えなかったと、微妙な表情を見せる。
 
しかしあつしは、人前でイチャつけないだろうと答えた。
 
それを聞いて祥子は、気まずそうに視線を逸らす。
 
そして、今日みんなに言おうと思っていたんだと口を開いた。
 
もうすぐここを出ていくと…あつしは祥子に伝えた。
 

夫からの提案

杏奈は五味田に、昨日あつしからされた提案を説明していた。
 
あつしは一緒に不妊治療をしようと言ってくれたのだ。
 
お金もある程度貯まったため、まずはストレスのない環境で集中しようと提案された。
 
子作りねぇと笑う五味田に、杏奈は五味田がいなかったら潰れていたと呟く。
 
手のかからない、働きものの嫁。
 
その嫁が外でこんな憂さ晴らしをしているなど、誰が想像するだろうか。
 
杏奈は今、すごく罪悪感があると言った。
 
五味田は、誰にでも秘密はあるものだと思った。
 
雨が止んで、灰色の雲から光が差してくる。
 
杏奈は外に虹が出ていることに気づき、五味田に知らせる。
 
しかし五味田は、もう会えないということに拗ねているようだった。
 
そして、杏奈のことを好きになってしまったとぼやく。
 
杏奈の心は、ズキっと音を鳴らした。
 

本心は

その頃、同じようにあつしから報告をうけた祥子は驚いていた。
 
みんな楽しくやっていたのにと、あつしに問いかける。
 
しかしあつしは「杏奈以外はな」と下を向く。
 
ここを出るのは杏奈のためなのかと聞く祥子の問に、少し返事が遅れるあつし。
 
そんなあつしの様子に気づき、本当に?ともう一度祥子は聞いた。
 
祥子は確信をしたのか、あつしに歩み寄る。
 
あつしは祥子に気持ちが戻るのが怖かったのだ。
 
祥子が後ろからあつしに抱き着くと、杏奈が戻ってくると焦るあつし。
 
しかし、雷の音はまだ近くに聞こえていたのだ。
 

一瞬の晴れ間

雨が上がったから帰るという杏奈に、また天気はすぐ崩れると杏奈を引き留める五味田。
 
そして五味田は、そのまま杏奈にキスをした。
 
雨はまた振り出し、雷も迫ってくるのだった。
 
 
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弁当妻 のネタバレ

突然の提案

会社の昼食時。
 
いつも美味しそうな弁当を持ってきている保ケ辺(ほかべ)に、後輩の津多(つた)は声をかけた。
 
保ケ辺は交換しようかと声をかけ、隣に腰かけた津多に唐突に提案をした。
 
「うちの妻とヤりたくないか?」と大真面目にいうのだ。
 
結婚生活も8年目に突入した保ケ辺は、さすがにマンネリ化してセックスレス気味だった。
 
相続問題でのいざこざもストレスになり、子作りもしたいのにそういう気分になれないのだそうだ。
 
だから妻が他の男に抱かれているところを見れば、興奮するかもしれないと思ったらしい。
 
妻も津多なら許してくれる気がするというので、津多は何で自分なんだと焦った。
 
しかしこの課で独身で彼女がいないのは君だけだと言われてしまい、津多は若干傷ついた。
 
実は津多は、5年付き合っていた彼女を友だちにとられた過去がある。
 
しかも二人がベッドにいる現場に遭遇してしまったのだ。
 
もうその話は忘れたいという津多に、保ケ辺は興奮したかと聞く。
 
津多は全力で否定した後、浮気を疑って疑心暗鬼になっていたのがスッキリはしたと話した。
 

性癖

そもそも、保ケ辺は何故そんな性癖に気づいたのか気になった津多。
 
その質問に、保ケ辺は興奮したように話し出した。
 
3か月前にあった社員旅行のことだ。
 
家族同伴だった社員旅行で、一緒にうなぎ屋に入った。
 
その時津多が頼んだうな丼が全然来なくて、店の人に聞いてみたのだ。
 
案の定忘れられていた津多のうな丼だったが、津多は全く怒らなかった。
 
「今鶏が卵を産んでいるところだと思って、気長に待ちますよ」
 
そう穏やかにいった津多を、見る保ケ辺と妻。
 
そして保ケ辺の妻は、私のうなぎをどうぞと津多に差し出したのだ。
 
少しだけ口を付けた、うなぎ。
 
その後興奮した保ケ辺は、旅館に戻って滅茶苦茶に妻を抱いたのだという。
 
それが半年ぶりのことだったのだ。
 
男嫌いの妻が、津多に自分からあんな提案をしたことに驚いたという保ケ辺。
 
津多は食べ終わった自分の弁当をそそくさと片付け、立ち上がろうとする。
 
それを保ケ辺は腕を掴んで止めた。
 
諦めきれないのか再度頼む保ケ辺だが、津多は断った。
 
津多はそこまでの想像力があれば、わざわざ奥さんと寝る必要もないだろうと思った。
 
それに津多の両親はクソがつくほど真面目なのだ。
 
上司の妻と寝たなんて知ったら、どうなることかわかったものじゃない。
 
すたすたとその場を離れようとする津多を、まだ必死で止める保ケ辺。
 
我々夫婦の危機を救えるのは君しかいないんだ!と手を合わせて懇願され、津多は困り果てたのだった。
 

保ケ辺の自宅

ホテルみたいな高層マンションの一室。
 
保ケ辺の家は低層階で狭いではあるが、高層階には芸能人も住んでいるマンションだ。
 
結局家に招かれた津多は、持ってきたワインを保ケ辺に渡した。
 
保ケ辺に続いて部屋の中に入る津多。
 
朔子(のりこ)と保ケ辺に呼ばれ、振り返った妻。
 
ショートカットに白い肌がきれいな女性だ。
 
キッチンに立って食事の用意をしている朔子は、少し間をおいてあいさつをする。
 
少し怒っているような様子を、津多は不思議に思う。
 
保ケ辺は津多に全て話したことを朔子にも話したらしくケンカになったと笑うので、それは当たり前だと思った。
 
そういうわけで、今日はご飯だけ食べていってくれと保ケ辺は話す。
 
机の上には、おいしそうな食事が所せましと並んでいた。
 
朔子は津多に謝った。
 
この人は人畜無害そうな顔をして、時々とんでもないことをいうのだと俯く。
 
本当に残念そうにする保ケ辺に、朔子はまだ言ってると呆れる。
 
そして津多に、気にしないでほしいと笑顔を向けた。
 
津多は朔子に、保ケ辺のどこに惚れたのか質問をしてみた。
 
何故こんな冴えない男に、こんなきれいな奥さんがいるのか…と保ケ辺は自分で呟く。
 
朔子は、なんでだったか忘れてしまったと答える。
 
元々は当時中学生の朔子の、家庭教師をしていたらしい。
 
家庭教師は、塾の教師などよりも生徒と仲良くなることが多いものだ。
 
津多も、今でも年賀状のやり取りをしている先生がいると笑う。
 
保ケ辺は、自分はその中でもキモイと評判の教師だったと自虐をした。
 
それでも結婚したということは、朔子のタイプではあったのだろうと質問する津多。
 
しかし微妙な反応を見せる朔子。
 
モテないオスがメスをゲットするには、どうしたらいいと思う?と質問してくる保ケ辺。
 
津多はイヤな想像が膨らんだ。
 
もしかして当時中学生だった朔子を無理やり…とショックを受ける津多。
 
そんな想像をしてしまった津多に朔子は焦って、保ケ辺をたしなめる。
 
実際は、付き合ってくれないと飛び降りる…と脅迫して付き合ったのだそうだ。
 
結局最悪だと、津多は思った。
 

触れる

色々と雑談をした後、保ケ辺は突然「手をつないでみてくれないか」と提案した。
 
驚いて椅子をガタンと鳴らしてしまう津多。
 
朔子も困った様子を見せるが、保ケ辺はそれくらいいいいだろうと駄々をこねる。
 
「イヤか?」と聞かれた津多は、嫌なわけないと答える。
 
それを聞いて驚いたのは朔子だった。
 
イヤじゃないんですか…?と津多を見つめると、朔子が嫌じゃないならと津多は言う。
 
朔子も、握手くらいならと呟いた。
 
朔子のタイミングで…と手を差し出した津多。
 
その手に、ゆっくり朔子は手を伸ばし一瞬触れる。
 
しかしその手を、パッと離し保ケ辺のほうを一斉に見る。
 
保ケ辺はうんうんと何度もうなずき、なるほど少しムカッとしたとぼやく。
 
咄嗟に謝る津多と、だからやめようという朔子。
 
しかし保ケ辺は、次は恋人繋ぎでというのだった。
 
朔子は津多の手をキュっと握り、こう?と恋人繋ぎを見せる。
 
それを見て保ケ辺は、納得したようにうなずいた。
 

感触

そそくさと玄関まで行き、保ケ辺は下まで送っていけなくてすまんと言った。
 
大丈夫だと答える津多の声に被るように、一気に帰りの順路を説明した保ケ辺。
 
そして「じゃあな!」とビシっと言い放つと、家の中にさっさと戻っていった。
 
家に入り、走って朔子のもとに走る保ケ辺。
 
津多は、あんなにワクワクした感じの保ケ辺を始めてみたと思った。
 
そして朔子の手の感触を思い出していた。
 
冷たくて、柔らかかった。
 
その頃、保ケ辺は食器の片付けをしようとキッチンに立つ朔子を急かしていた。
 
この後めちゃくちゃに朔子を抱くんだろうと思いながら、津多は帰っていくのだった。
 

奪われる辛さ

俺のほうが好きになっちゃった…と俯く友人。
 
昔、彼女を奪って行った友人のことを津多は思い出した。
 
いつから?と静かに聞けば、友人は初めて会ったときだと言った。
 
津多は、奪われる辛さを知っているのだ。
 
保ケ辺は津多が帰った後、津多はイイ奴だろうと何度も朔子を抱いたのだった。
 

お詫び

次の日、津多にものすごく豪華なお弁当が渡された。
 
朔子からのお詫びなのだそうだ。
 
なにやら艶々している保ケ辺は、昨日はすまなかったと声をかける。
 
津多は弁当を口に運びながら、おいしさに感動していた。
 
会社の女の子に興味はないのかと聞くが、津多は今のところそういう子は思い当たらない。
 
津多に彼女ができたら楽しみだとぼやく保ケ辺に、津多は何やら冷や汗をかいた。
 
そして唐突に、「朔子が津多とならいい…と」と話し出す。
 
今週末とかどう?と提案してくる保ケ辺に、津多はうつむき考える。
 
しかし、やめておくと答えた。
 
なぜかとても驚いた様子の保ケ辺は、うちの妻じゃイマイチなのかと呟く。
 
津多はそういうことじゃないと言葉を濁す。
 
もし奥さんが、僕のことを好きになってしまったらどうするんですか?
 
そう思っていたが、そんなことを口に出せるわけない。
 
そして今週は予定があると、断る津多。
 
しかし保ケ辺は、じゃあ再来週は?とあきらめない。
 
言葉を濁す津多に、保ケ辺は風俗に行ったことはあるかと問いかける。
 
そんな経験はない津多は、いかない理由を聞かれ困った。
 
しかしハッとして答える。
 
自分は恋人とだけそういうことをしたい、クソ真面目野郎なのだと説明する。
 
津多はこれで、あきらめてくれると思った。
 

結局その日は訪れる

懸命に断った努力も虚しく、その日は訪れていた。
 
奥さんが津多の分もご飯を用意してしまったと言われたのだ。
 
リビングの椅子に腰かけ、津多と朔子をじっと見つめる保ケ辺。
 
いいんですか?と聞く津多に、朔子はどうぞと答えた。
 
津多は、断じて性欲に負けたわけじゃない…と心の中で思っていた。
 
ドキドキしながら見つめあい、朔子に口づける津多。
 
朔子の唇の柔らかさに、津多は感動した。
 
キスを繰り返す二人をじっと見ながら、舌を入れてみたら…?と提案する保ケ辺。
 
舌を入れると、朔子は突然顔を背ける。
 
がつがつしすぎてしまっただろうかと、心配する津多。
 
しかし朔子は驚いただけだと言い、そのまま舌を絡ませた。
 
次は胸…などと行動を指示してくる保ケ辺だが、見たことない表情で睨んでいる。
 
そんな保ケ辺のことを、津多は怖く思った。
 
それからというもの、朔子は毎日のように津多の分の弁当を作ってくれるようになった。
 
好きな食べ物を聞いてくれ、次の日の弁当に入れてくれたりもした。
 
行為はどんどんと進んでいった。
 
津多は朔子に触れながら、弁当のお礼を囁く。
 
弁当の好みの話をして、朔子の色んなところに触れながら津多は思っていた。
 
気を付けないといけない…勘違いしそうになってしまう。
 
津多さんっ…と思わず名前を呼んでしまった朔子は、保ケ辺に手を引かれて別の部屋に移動した。
 
謝る朔子を、いいよいいよと保ケ辺は受け入れる。
 
リビングに一人残された津多のもとに、別室から朔子の喘ぎ声が届いて…津多は頭を抱えた。
 

有給

この日の晩のことだった。
 
例の友人が、津多の元彼女と結婚したことをしった。
 
SNSには、小さなレストランでほほ笑む二人の姿があった。
 
津多はそれを見ても、怒りはわかなかった。
 
それでもどうしても気分は落ち込んでしまったので、翌日は有給を消化することにした。
 
家でくつろいでいた津多だが、思わぬ来客に驚いた。
 
朔子が一人で、家まで弁当を持ってきてくれたのだ。
 
保ケ辺から津多が風邪で休みだと聞いた朔子は、住所を年賀状で調べて訪ねてきたのだ。
 
恥ずかしそうにそう説明する朔子を見ていたら、津多は抱きしめたくなってしまった。
 
弁当を渡して、そそくさと帰ろうとする朔子。
 
津多は朔子に、実は風邪じゃないんだと声をかけていた。
 
部屋に上がってもらい、津多は朔子に色んなことを話した。
 
自分の歴史を全て話してしまうんじゃないかと思うほど、話し続けた津多。
 
話が途切れたら、朔子が帰ってしまう気がしたのだ。
 
そんな津多に、朔子は疑問を投げつける。
 
何故その友人を、許すことができたのか。
 
津多は朔子を見ながら思った。
 
それを忘れられたのは、朔子のお陰なのだ。
 
しかしそれをつたえることはできず、時間が忘れさせてくれたのだと曖昧に答えた。
 
朔子は最近、保ケ辺とのことをよく考えるのだと話した。
 
津多が家に来た日、保ケ辺はずっと津多のことを聞いてくるのだ。
 
どっちがうまい?あいつのこと好きだろ?そう質問をし続ける保ケ辺。
 
津多にコンプレックスでもあるのだろうかと、朔子は不思議に思った。
 
そんな保ケ辺に、あなたのほうが上手だと言えば子どものように喜ぶのだ。
 
津多はずっと感じていたことを、朔子に聞いた。
 
朔子は平気なのだろうか…すると朔子は、正直仕方なく合わせていたと答える。
 
このままずっとセックスレスなのと、同志を見つけてみんなで気持ちよくなってレスを解消するのとどちらがいい?
 
保ケ辺にそう聞かれたのだという朔子に聞き、津多はアドラー心理学を悪用していると思った。
 
その話を聞いて、朔子が本当はイヤだったんだと落ち込む津多。
 
津多は、実は朔子も楽しんでいるのかもしれないと思っていたのだ。
 
ソファでうなだれる津多。
 
情けなさと罪悪感に襲われて、津多は死にたくなった。
 
朔子はそんな津多に、慌てて声をかける。
 
相手が津多じゃなかったら、絶対断っていたと思うと。
 
だけどこれ以上一緒にいたら、きっと好きになってしまう。
 
朔子はそう言って、切なげに眉をひそめた。
 
その言葉を時間をかけて理解して、津多は朔子のほうに視線を向けた。
 

全てを掻き出すように

以前、保ケ辺の言っていたことを思い出した。
 
男性の精器は、なぜあんな形をしているか知っているか?と問われたのだ。
 
わからないと答えると、前に射精した男の精子を効率よく掻き出せるように進化したのだと教えてくれた。
 
ベッドに移動した津多と朔子、部屋の中に荒い二人の呼吸が響いていた。
 
朔子は必死に津多に奉仕をして、上目遣いで津多を見つめた。
 
津多は朔子の体を弄りながら、正直に告げる。
 
僕も…好きになってしまったのだと。
 
津多は朔子の細い腰が砕けてしまうんじゃないかと思うほど、彼女を激しく求めた。
 
朔子の中に残った保ケ辺のものを、全て掻き出すように…。
 

家出

朔子が家を出たと、会社で保ケ辺に告げられた。
 
実家に連絡をしても居場所を教えてもらえないと嘆く保ケ辺。
 
朔子の両親に嫌われているのだと、保ケ辺は激しく落ち込んでいた。
 
津多に、朔子から連絡はないかと保ケ辺は聞く。
 
しかし津多は、番号しりませんし…と答える。
 
保ケ辺は納得し、外で蕎麦を食べてくると席を立った。
 
津多は、弁当があるからと断るのだった。
 
友人と元彼女の間には、半年後に子どもが生まれるのだそうだ。
 
美味しそうな色どられた弁当を食べながら、津多は思っていた。
 
奪われる側の気持ちも、奪った側の気持ちもわかる。
 
同僚に弁当を褒められて、絶対あげないと思った。
 
 
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見舞妻 のネタバレ

お見舞い

ある病院の一室、子どもたちからの手紙と鶴が置いてある。
 
そんな鶴の一つを手に取り、河北真冬(かわきたまふゆ)は「超ウケる」と笑った。
 
その鶴には足が生えていて、なんともユニークな状態なのだ。
 
脚をぐるぐるにまかれて固定されながら、ベッドに座る平野(ひらの)は言った。
 
その鶴は、しっぽにする部分にハサミを入れて作るのだ。
 
平野先生人気者じゃね?とケラケラ笑っている真冬。
 
そんな真冬に平野は、ことの重大さがわかっているのかと問う。
 
笑いをピタっと止めた真冬は、「さーせん…」と微妙な表情で謝った。
 
数日前の夜、真冬はこの小学校の教師である平野を車ではねてしまったのだ。
 
バイクに乗っていた平野は、真冬の車に跳ね飛ばされ田んぼにずっぽりとハマって倒れていた。
 
最悪なことに、真冬はその時お酒を飲んでいた。
 
焦る真冬だが、とりあえず田んぼで倒れる平野に声をかけた。
 
生きてますかーと聞かれ、何とか立ち上がった平野。
 
聞き覚えのある声に振り返ると、そこにいたのは自分が受け持っている生徒の母親だったのだ。
 
痛い?と聞いてくるので、はいと答える。
 
チクる?と聞いてきたので、考え中だと答えた。
 
真冬は突然手を合わせて、お願いだと訴えた。
 
学校の、息子であるたかひろの友だちにだけは言わないでほしいというのだ。
 
それはたかひろ君のお母さん次第だと伝えると、何を思ったのか真冬は突然胸を出した。
 
ポロリと右の胸を出して、これでもダメ~?という真冬。
 
平野は白けた様子で、何やってるんですか…と眉をひそめた。
 

帰宅

元気よく帰ってきたたかのりは、とてもご機嫌だった。
 
ママがバイクで転んだ平野先生を助けたのだと、たくさん褒められたのだというのだ。
 
しかし真冬は、リビングで暗い雰囲気で倒れている。
 
心配しかけよったたかのりに、真冬は「たかのりはママのこと馬鹿だと思う~!?」と泣きながら聞いた。
 
突然のことに驚くたかのりだが、ちょっとおっちょこちょいだと思う…と正直に答えた。
 
その時父親である、まさとが帰ってきた。
 
たかのりは「おかえりー!」と嬉しそうに駆け寄っていく。
 
真冬はご飯はと聞いたが、まさとはもう食べてきたようだ。
 
担任は何と言っていたのかと聞かれ、真冬はとっさに嘘をついた。
 
バイクの修理代と医療費だけでいいと言われたと伝えれば、誰が出すの?とまさとは言った。
 
もちろん私が…という真冬に、用意できんのかと冷たい声でいうまさと。
 
とにかく迷惑をかけるなと、まさとは部屋を出ていった。
 
まさとの閉めたドアは、大きな音を立てて閉まる。
 
部屋に残された真冬は、わかってると一人でつぶやいた。
 
夜…背を向けて眠るまさとに、声をかける真冬。
 
誘う真冬だが、そんな場合かよと冷たくあしらわれたのだった。
 

今日もお見舞いへ

また平野の見舞いへと訪れた真冬だが、あからさまに落ち込んだ様子だった。
 
平野はそんな真冬に、今日は元気がないですねと声をかける。
 
真冬は、最近色々ありすぎたのだとため息をついた。
 
普段からしているのかと平野に聞かれ、そんな頻繁にポロンポロン出していないと否定する真冬。
 
しかし平野が訊ねたのは、飲酒運転の件だ。
 
真冬はそんなことしない!とまた強く否定した。
 
飲酒運転のことを最低だと言った真冬に、なんでそんなことをしたのか平野は聞いた。
 
そして真冬は、あの日にあったことを話し出した。
 

事故の日

あの日真冬は、たかひろをおばあちゃんに預けて友だちの家で飲んでいた。
 
久々に友だちの家での宅飲みということもあり、楽しんでいた真冬。
 
しかしその時、夫のまさとから電話がかかってきた。
 
車は?と聞かれ、今友人の家にいることを伝えた真冬。
 
明日の昼まで貸してくれるといったので、そのことをつたえるとまさとは激怒した。
 
聞いていないと怒るまさとに、絶対伝えたと話す真冬。
 
しかしまさとは、次の日の朝に仕事仲間と出かけるため車が必要だというのだ。
 
今すぐ返せというまさとに、お酒を飲んでしまったムリだと真冬は話す。
 
しかしまさとは更に怒り、今すぐ帰ってこないなら二度と帰ってくるなと言う。
 
そして声を荒げ、離婚だと言われてしまう。
 
それでどうしようもなく、やってしまったのだという。
 
黙って聞いている平野。
 
真冬は、そんな奴とはもう別れろと友だちに言われたと呟いた。
 
しかし昔はとても、ラブラブだったのだろ平野に写真を見せる。
 
妊娠した時、真冬はまだ15でまさとは18だったらしい。
 
あまりの若さに、平野は思わず声を上げてしまった。
 
その若さで父親になったまさとだが、真冬の両親にもしっかり頭を下げた。
 
親の支援は受けないと、会社とバイトを掛け持ちして子どももとてもかわいがった。
 
本当に真冬にとって、最高の旦那だったのだ。
 
そう話す真冬に、平野はかける言葉がなかった。
 
そして真冬は、もしかしてなんだけど…旦那は自由になりたいのかなぁと呟いた。
 
黙る平野に、色々言ったけどと真冬は封筒を取り出した。
 
バイクの修理と医療費だと平野に差し出すと、足りなかったらまた言ってくれと話した。
 
そして、もうあんな馬鹿なことは絶対にしないと頭を深々と下げた。
 
そんな真冬に、平野はお金は要りませんと伝えた。
 
これは自分の不注意で起きた事故だ…そう言う平野に、そんなわけにはいかないと真冬は焦った。
 
お金を無理やり渡そうとしても、要らないという平野。
 
「先生いい人すぎ…!困る!」と真冬は眉をひそめた。
 
何が困るんですかと驚く平野に、真冬はだって悪いのだとモジモジする。
 
そんな真冬に、平野は「もう一度昨日のあれをやってください」と笑った。
 
昨日のアレ…で胸のポロリを思い出した真冬は、突然の発言に驚いた。
 

サプライズ

病院からの帰り道を歩いていると、たかひろを始めとした子どもたちが走ってきた。
 
みんなも学校帰りのようだ。
 
明日もお見舞いに行くのかと聞かれ、行くと答える真冬。
 
すると子どもたちは、先生に渡してくれと紙袋を渡してくる。
 
病院の決まりで、子どもは病室に入れない。
 
そのため病院に行く真冬に、子どもたちは先生へのプレゼント渡してくるのだった。
 
平野先生に会いたいのかと聞くと、そりゃまあ…と頷く子どもたち。
 
そんな子供たちに真冬は、ちょっと着いてきなとわらった。
 
その頃病室では、学校の同僚の教師がプリントなどを持ってきてくれていた。
 
たかひろのお母さん…真冬がよくお見舞いに来ていることを話す教師。
 
まさかコレ?と小指を立てて笑うので、平野はいやいやいや…と否定をした。
 
それでも教師は正直にいっていいよと笑うので、平野は再度否定をする。
 
真冬が車ですれ違った時に自分がこけたから、責任を感じているのだと話す平野。
 
意味深に笑った教師は、たかひろのお母さんは職員の間で結構人気があるのだと話した。
 
その時、窓の向こうから「平野先生ー!」と大声で名前を呼ぶ声がした。
 
先に気づいた教師が窓の外を指差し、高台の上を示してくれる。
 
平野がそちらに視線を移すと、高台の上には真冬とたかのり…そして二人の生徒が大きく手を振っていた。
 
「早く良くなってね~」と声をそろえて叫ぶ一同。
 
その様子を見ながら、一緒にいた教師の山内は正直タイプだと呟いた。
 
平野が手を振ってくれるのを見て、みんなは満足したのだった。
 

帰り道

家へと帰る途中、たかのりが突然驚くことを口にした。
 
「母ちゃん平野先生と結婚したら?」と真面目な顔で言うのだ。
 
突然の発言に、激しく動揺する真冬。
 
しかしたかのりは、思いのほか真剣な表情でつぶやいた。
 
父ちゃんがママに酷いことを言ったりするのが、すごく嫌だ。
 
その発言に胸が痛む真冬。
 
そしてたかひろは、オレがいるからって我慢しなくていいかんな?と真冬を見上げたのだ。
 
その頃病室では、山内がまだ真冬のことを話していた。
 
真冬のことをどうだと聞く山内だが、平野には奥さんがいる。
 
そして、もうすぐ父親になるのだ。
 
平野の妻は今、北海道に里帰り中でお見舞いに来れないのだ。
 
それをグッドタイミングだと笑う山内に、平野は呆れて笑うしかなかった。
 
真冬はたかひろに言った。
 
ママは絶対に、父ちゃんと別れないと。
 
何で?と不思議そうに聞くたかひろに、真冬は話した。
 
学校で嫌なことがあったとき、家でいつもみたいに笑えるか。
 
もし外で嫌なことがあったら、私だったらイライラしてパパやたかひろに当たってしまうと思うと真冬は考えた。
 
それでもそんな自分のことを、理由を聞かずに許してほしいと思うのだ。
 
たかひろは、父ちゃんも外で嫌なことがあったのかなと思った。
 
真冬はそれは分からないといいつつも、私ならそうなるかもしれないと話した。
 
もう、まさとが自分のことを嫌いで酷いことをしているならば耐えられないかもしれない。
 
だけどそうじゃないなら、全然大丈夫なのだ。
 
だけどたかひろは、真冬にばかり怒ることがやはり疑問だった。
 
でもそれを聞けば、真冬は「ママに甘えているから」と笑う。
 
それはたかひろも一緒なのだ。
 
病室で長話をしている平野と山内。
 
山内は、入籍したことを平野に報告した。
 
結婚はしないと話していた山内だが、何やら気持ちが変わる出来事があったようだ。
 
妻以外の女性とは一生恋愛しないなんで、おっかない契約だと今でも思うと語る山内。
 
それでも、そんな相手とはそうそう出会えるものじゃないと平野は思った。
 

思い出す時間

たかひろを寝かせようと、寝室に連れていく真冬。
 
たかひろに「おやすみ」というまさとに、真冬は「いつもお仕事ありがとね」と声をかけた。
 
真冬のおやすみに、まさとが応えることはない。
 
真冬はたかひろと布団に入りながら、今日あったことを思い出していた。
 
『もう一度昨日のあれをやってください』
 
そう言われ、自身の胸元に手をあてた。
 
見られている恥ずかしさで、目をつぶっていてほしいとお願いする。
 
しかし平野は、じーっと音がつきそうなほど見ていた。
 
両胸を露わにした真冬は、あまりの恥ずかしさに目を背けた。
 
しかし平野は、もっと近くに来てほしいという。
 
少し体を寄せるが、それも見づらいと言われる。
 
そして平野は、ここに跨ってくださいと自分の上を指差した。
 
思い出しても恥ずかしいその行動を、なぜ素直に言うことを聞いてしまったのかわからなかった。
 
素直に跨る真冬に、触っていいかと訊ねる平野。
 
盛大に驚く真冬に、平野は嫌ならいいですよと言った。
 
しかしなぜか「触るくらいいいけど…」と答えてしまったのだ。
 
思い出せば思い出すほど、自分の行動に突っ込みたくなる真冬。
 
真冬の胸に手を這わせ、胸に口づける平野。
 
ゾクゾクとものすごく感じてしまうことに、真冬は困っていた。
 
そして下半身に、平野のものを感じてしまい真冬はまずいと思った。
 
勢いでやってしまう雰囲気だと、頭の中で警笛がなるのが分かった。
 
どうしようどうしよう…今から断る?
 
頭の中で色々考える真冬。
 
ここで引き返したとしても、きっと平野はイイ人だから怒らないと思った。
 
それなのに、自分の口から出たのは考えていたのとは真逆のセリフだったのだ。
 
「絶対…誰にもいわない?」
 
頭の中では、違う違うバカバカ…と自分を責めた。
 
だけど現実は、全く違う行動を取っている。
 
ベッドの上で平野に跨り、深く交わる二人。
 
すごい快感の中、真冬のどこかで冷静な自分いた。
 
こんな簡単に不倫をしてしまった…負けてしまった。
 
気持ち良すぎて、おかしくなりそうだった。
 
子どもに謝る真冬は、絶対にみんなに迷惑かけないから…と誓ったのだ。
 

自由になりたいのは

平野との時間を思い出していた真冬に、突然まさとが声をかけてきた。
 
驚いて起き上がる真冬に、まさとは担任にちゃんとお金を渡したのかと聞いてくる。
 
先生にはお金は要らないと言われたことを、まさとに報告する。
 
しかしそれが疑問なまさとは、後々面倒なことにならないだろうな?と険しい視線を向けた。
 
多分…と答えた真冬に、まさとは何かスイッチがはいったようだった。
 
始まった…と空気が変わったのを察した真冬。
 
リビングの机に座って、酷いことを言われ続けた。
 
それでもなぜか、今日は全然平気だった。
 
怒られながらも、考えるのは平野のことだった。
 
退院しても、実家が遠いから誰も手伝いに来てくれないといっていた平野。
 
手伝いに行きたいと思うけれど、あまり会っていたら怪しまれるだろうか。
 
奥さんは産後も、しばらく帰ってこないと言っていた。
 
まさとも来月から出張の予定だ。
 
そして真冬は、どうやって平野に会おうか考える。
 
平野も来てほしいと言ってくれているし、真冬も会いたいと思った。
 
そして、今日は死ぬほど気持ちよかった。
 
ピルをもらいにいかないと…頭の中でそんなことを考えていた。
 
そして気づいたら、ポロポロと涙がこぼれていた。
 
気づいたのだ…自由になりたかったのは、自分のほうだったことに。
 
突然泣き出した真冬に、驚いたまさと。
 
そんなまさとに、真冬は「ありがとう」と言った。
 
今までずっと我慢してきたんだよね…これからはまさとの好きに生きていいんだよ。
 
そんな真冬を、まさとは呆然として見つめた。
 

何もない何もない

平野は無事に職場に復活し、赤ちゃんも無事に生まれた。
 
生徒は口々に、おめでとう!と祝いの言葉をくれた。
 
平野はたかひろに、お母さんにお礼を言っておいてほしいと話す。
 
色々と世話になったからというと、たかひろは得意気に笑う。
 
たかひろに一人の友だちが、お前んち離婚するっていってなかったかと聞いた。
 
しかしたかひろは、今普通に親が仲よしだという。
 
少し前は転職したばかりで、まさとはイライラしていたらしいのだ。
 
今はとても優しくなったと伝えれば、友だちはよかったなと言ってくれた。
 
そしてナイショだけど…とナイショじゃない声でたかひろは言った。
 
実は母ちゃん今お腹に赤ちゃんいるんだよ!そういう後ろには、平野がいる。
 
真冬はお腹をさすった…何もない何もないということで。
 
 
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金魚妻 1巻の感想

4本の短編が入っている金魚妻。
 
どの妻もとても可愛く、男が酷かったりおかしかったりしました。
 
全員不倫をしてしまうわけですが、心理描写がたくさん描かれていて…納得してしまいます。
 
それがすごくリアルなので、こういう風に人は不倫をするのだと思ってしまいました。
 
そして絵がとてもきれいなので、ドキドキとしました。
 
どの妻にも、幸せになって欲しいと思いました。
 

金魚妻 の感想

とにかく夫が酷い…まずはそんな感想を持ちました。
 
さくらへのあたりが強くて、金魚の水槽を返しに行くシーンでは胸が苦しくなるほど。
 
間違いなく今回の4話の中で、一番クズな夫でした。
 
店主である豊田がさくらに興味を持ったのは、前に自分が犯してしまった罪を思い出したからなんですかね。
 
夫の気持ちがよくわかったから、さくらを守りたくなったんでしょうか…。
 
ハネっ子の金魚の傷が癒えていく様子が、さくらが元気になっていく様子を表していました。
 
そんな描写のキレイさと、夫の残酷さと…色々と入り混じったお話でした。
 
最後夫が金魚屋に来ていて、怖かったです。
 
さくらはこれからどうするのかな…DVとかもしそうな夫なので、無事にお別れしてほしいです。
 

出前妻 の感想

最初に杏奈が、夫であるあつしに何かを言われ泣いているシーンから始まったのですが…これはどういう意味だったんでしょうか。
 
今までごめんと謝っていたあつし、そんな…と泣き出していた杏奈。
 
お話を最後まで読んだものの、このシーンがどこに繋がるのかわかりませんでした。
 
このシーンは、杏奈に祥子への気持ちを話したってことなんでしょうか。
 
一緒に家を出ようと話したといっていたシーンには見えないですし、結局祥子を取るってことなのか?
 
蕎麦屋の家族…ちょっとひどすぎますよね。
 
元彼女である祥子は、明るくて魅力的な女性なのかもしれません。
 
それでも家族でワイワイ囲んで、杏奈のことは置き去り。
 
しかもあの妹の発言…フォローもしないあつしと祥子。
 
みんな悪気がないところが余計に悪くて、見ていてムカムカしてきてしまうほどでした。
 
だから五味田がいてくれて、良かったと思いました。
 
ちょっとぶっきらぼうな五味田ですが、杏奈にとっては本当に心の拠り所だっただろうと思いました。
 
杏奈とあつし…これからどうするんでしょうかね。
 
続きを読んでみたいです。
 

弁当妻 の感想

また意味不明な夫…保ケ辺。
 
これは本当に、どうしようもないですよね。
 
寝取られ願望というのでしょうか…おかしな性癖を持つ保ケ辺。
 
中学生の時の家庭教師で、しかも飛び降りを匂わせて朔子と付き合う。
 
そりゃ朔子の両親に嫌われて当然…完全に危険な男でした…!
 
津多と朔子の気持ちの変化は、よくわかりました。
 
体に触れていく度に、どんどんと気持ちが近くなる二人。
 
二人で保ケ辺の性癖に付き合い心理を操られたわけですが、二人がくっついてくれてどこかほっとしました。
 
友人に彼女を取られた経験のある津多ですが、友人は初めて見たときから彼女のことが好きだったと言っていました。
 
津多もそうだったような気がしますね。
 
奪われる側の気持ちも、奪う側の気持ちもわかる津多。
 
会社の上司と部下である二人ですが、ここの関係もどうなるのか気になります…!
 

見舞妻 の感想

若くて一見軽い雰囲気の真冬ですが、とても素敵な女性だったと思いました。
 
雰囲気は軽いのだけど、色んな立場から物事を考えることが出来る真冬。
 
妻としても母親としても、カッコいいなーと思いました。
 
もちろん胸をポロンと出してしまうところとか、ちょっと残念なところもありますが…
 
息子であるたかひろがいうように、ちょっとおっちょこちょいな雰囲気が可愛かったです。
 
平野先生が何を考えていたのか、そのあたりの描写は少なかったです。
 
それでも真面目な雰囲気の平野が、真冬に惹かれているのは真冬が魅力的なので納得でした。
 
平野と触れ合った時に、真冬が頭で考えていることと口から出てくる言葉や行動がチグハグなのがリアルでした。
 
理性と本能…噛み合わないことあるよなあと、思いました。
 
そしてその経験から、自分の中にあった『自由になりたい』という感覚に気づいた真冬。
 
そんな真冬に、ちゃんと向き合うことが出来たと思われる夫のまさと。
 
ここの二人は、ハッピーエンドかな…?
 
お腹の子は…まさとの子ですよね?
 
まさか平野の…というちょっと意味深なエンドでした。
 
 
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