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金魚妻 2巻とは?

出版社:集英社
発売日:2017/8/18
作者 :黒澤R

黒澤Rが描く、大ヒット不倫愛シリーズ第2弾。 読んで初めてわかる真実。この中には、夫の知らない“妻”がいる。妻はなぜ、一線を越えたのか――?  悩める人妻たち、それぞれの物語――!! 【収録作品】頭痛妻/芳香妻/園芸妻/金魚妻2/弁当妻その後

 

金魚妻 2巻のネタバレ

頭痛妻 のネタバレ

秘密の関係

川沿いに立つタワーマンションの最上階、それが田口慈子(たぐちひさこ)の家だ。
 
そのことは覚えているのだが、何か大切なことを慈子は忘れている気がしていた。
 
しかし、何だったのか…思い出せずにいる。
 
平日の昼間、タクゾーは慈子の下着を手に取りまじまじと眺めていた。
 
40歳になる慈子だが、下着はものすごくセクシーなものだ。
 
しかし慈子は、タクゾーが喜んでくれると思って身に着けているのだ。
 
こんな面積の少ない下着を身に着けて外に出たら、風邪をひくぞ!というタクゾー。
 
それにムダ毛の手入れもしないと大変な下着だ。
 
そう言われて慈子は、見苦しくならないように全て処理をしていますとうつむいた。
 
タクゾーさん…というこの男は、マンションの近くの河原で半年前から暮らしているという。
 
ひょんなことから知り合いになった二人は、時々慈子が会いに来ては…ここで抱き合っている。
 

出会い

そもそも二人の出会いは二か月ほど前のことだった。
 
いつものように犬の散歩をしていると、犬のぷーちゃんが突然猛ダッシュをして走って行ってしまったのだ。
 
ぷーちゃんはタクゾーの元まで一目散に走って行き、嬉しそうにまとわりつく。
 
知らない人に懐くことがない愛犬のぷーちゃんが懐いていることに、驚きが隠せない慈子。
 
わしゃわしゃとぷーちゃんを撫でるタクゾーは、急いで追いかけてきた慈子に視線を送った。
 
慈子は突然じゃれついてしまった愛犬のことを謝罪すると、タクゾーは抱き上げたぷーちゃんを慈子に手渡す。
 
ぷーちゃんを受け取った途端、タクゾーは突然慈子に顔をグイッと近づけた。
 
突然間近に顔を寄せられ、身体をビクつかせる慈子。
 
そんな慈子にタクゾーは、そこのタワーマンションの奥さんだろ?と声をかけた。
 
慈子はしどろもどろになりながら、なんとか返事をした。
 
初めて出会ったホームレスのような男性に突然声をかけられて、どうしても身体が強張ってしまうのだ。
 
タクゾーはそれを察したのか、そんなに怖がらなくていいと慈子に告げる。
 
別に何かを盗もうと思っているわけじゃないと、タクゾーは自分の家のほうへ戻っていく。
 
慈子はそれでは…と帰ろうとするが、タクゾーは慈子にコーヒーを飲んでいけと言った。
 
慈子は驚きながらも断ることも出来ず、了承したのだった。
 

コーヒー

タクゾーの家は、ビニールシートを使って簡単に立てたテントようなものだった。
 
その中で慈子は、コーヒーをごちそうしてもらっていた。
 
コーヒーを見つめながら、慈子はこのお水は…と口にしていた。
 
タクゾーは何かを察したように、買った水だから安心するようにという。
 
タワマン住まいのセレブ妻は水道水なんて飲めないってか?と言われ、慈子は必死で違うと弁解する。
 
ただ慈子は、単純に興味で口にした言葉だったからだ。
 
慈子は昔、雨水を浄水したものでお米を炊いた経験があったのだ。
 
両親は都会っ子だった慈子に逞しく育ってほしかったのか、慈子は昔サバイバルキャンプに兄と参加させられた。
 
それは10日間、ライフラインのない野山で自給自足の生活をするものだったことを思い出す慈子。
 
兄は泣き叫んでいたものの、慈子はとても楽しかったのだとタクゾーに話した。
 
そんな経験もあり、慈子はライフラインのない生活をしているタクゾーのコーヒーをとてもおいしいと思った。
 
思わず「おいしい!」と頬を抑えた慈子に、タクゾーは豪快に笑って見せた。
 
1月の寒い空気にあたりながら飲むコーヒーは、格別なのだ。
 
さらにタクゾーは、パーコレーターを使って丁寧にいれるというこだわりが詰まったものだった。
 
そんな話を聞きながら、慈子は夫について話した。
 
慈子の夫もコーヒーが大好きで、昔よくいれてくれたのだと呟く。
 
タクゾーは、旦那は今何をしているのかと訊ねた。
 
慈子の夫は会社の社長をしているのだが、忙しくもう半年ほど顔をみていないのだと話す。
 
タクゾーは、慈子に夫のことを色々聞こうとする。
 
夫の年齢を聞かれ応えようとする慈子だったが、その前に名前と年齢を聞いた。
 
タクゾーは自分のことを「タクゾー」と名乗り、年齢は50だと答えた。
 
慈子はタクゾーのことを、夫と同じくらいの年齢だと笑った。
 
しかしな間会っていなかったから忘れてしまったのだとも話した。
 
タクゾーは夫についての質問を繰り返す。
 
どこで知り合ったのか、プロポーズはどこでだったのか?
 
そんな質問をされながら夫のことを考えている慈子は、どんどんと頭が痛くなってくるのを感じた。
 
こめかみを押さえて、辛そうに眉を寄せる慈子。
 
タクゾーは慈子に手を伸ばして、横になるか?と声をかける。
 
慈子は家は近くだから大丈夫だと返事をした。
 
そんな様子を、ぷーちゃんは静かに見つめている。
 

交わり

慈子が気がついた時にはもう、タクゾーがスカートの中に頭を突っ込んで夢中になって舐めているところだった。
 
10年ぶりに与えられる感覚と、むしゃぶりつくタクゾーを見ていたら慈子は何故か愛しくなってきてしまったのだ。
 
そしてそのまま、最後まで許してしまった。
 
家に上がり込んでしまったことが、きっともう悪かったのだと慈子は思った。
 
結局その日は、日が暮れるまでタクゾーと色々話して過ごした。
 
その時に頭痛のことも話した。
 
前に散歩の途中で頭を打ってしまったときから痛むようになったこと。
 
病院で検査をしてもらったものの、何も異常はないといわれたこと。
 
心配してくれたことや臆病な愛犬が懐いたことで、慈子はタクゾーのことを優しい人だと感じた。
 
なぜか慈子は、タクゾーの家にいるととても落ち着いた。
 
タクゾーも住んでいたらハマったと話した。
 
電気と火が使えて、パソコンもある。
 
夏は涼しく、冬は暖かい…よくできているだろう?とタクゾーは語る。
 
この家は、この河川敷で暮らしている仲間たちが教えてくれたのだという。
 
ここで生活する前からも、タクゾーはここに住んでいる人たちと交流があったようだ。
 
そしてタクゾーの家にあるものは、全て慈子の住んでいるマンションの住人が捨てようとしたもので出来ているらしい。
 
なんでも落ちているのだから、ここにあるものは全てタダなのだ。
 
自慢げに話すタクゾーだったが、タクゾーも実は半年前までタワマンに住んでいたのだと話した。
 
驚き、何があったのかと訊ねる慈子。
 
タクゾーはうつむきながら、5年前に不倫をしてしまったのだと言った。
 
決着はついていたのだが、妻は許せていなかったのだろう。
 
結局、半年前に追い出されることになったのだ。
 
それからずっとここで一人で生活しているタクゾー。
 
時々は寂しくなるとぼやいたタクゾーに何を思ったのか、慈子はこの時から何度もここに通うようになったのだ。
 

だれのために

ひと思いにお願いします…と目を閉じた慈子は告げる。
 
それを聞いて女性は、ビっという衝撃と共に一機に引っ張った。
 
一気に毛が抜ける感覚がした、慈子は思わず声を出した。
 
ごめんなさいと謝る女性だが、ごっそり抜けましたよ~と慈子に笑顔を向ける。
 
そう、慈子は今日アンダーヘアの処理にサロンを訪れていた。
 
エステティシャンの女性が慈子に年齢を聞くと、40だと答えた慈子。
 
一緒!と声を上げたエステティシャンは、お客さんは40代が多いのだと教えてくれた。
 
どうやら皆、アンダーヘアの処理に訪れているようだ。
 
慈子は皆がどのような理由で処理に訪れたのか気になった。
 
エステティシャンは笑顔で、やっぱり快適だからじゃないかという。
 
そして不倫している人も…と一言付け加えた。
 
その言葉にハッとする慈子。
 
彼が喜ぶからと、客たちは手入れに訪れているようだ。
 
帰り道、慈子は「一緒だわ…」と空を見上げた。
 
サロンで脚を開くと、心まで開いてしまうと思った。
 
ついつい二重生活のすべてを、話してしまいそうだった。
 

二重生活

朝5時、準備をしてぷーちゃんの散歩へ出かける。
 
河原のほうへ向かえば、既に外に出て体操をしているタクゾーがいた。
 
そっと近づき、かけていたサングラスを取る慈子。
 
そんな慈子に、タクゾーは何で朝からサングラスをかけているのだと突っ込む。
 
慈子は、一応変装のつもりだと話した。
 
タクゾーの家に上がり、膝枕をする慈子。
 
今日はもう6時にはここを出発して、夜の10時くらいまで戻らないとタクゾーは告げる。
 
何かあるのかと訊ねれば、タクゾーは仕事だと言った。
 
ゴミを拾い歩くタクゾーを想像する慈子は、今日もう会えないのかと思う。
 
そして膝に乗せていたタクゾーの頭に、胸を押し付けるようにして抱きついた。
 
寂しい!と素直に言えば、タクゾーは慈子の身体に手を伸ばした。
 
タクゾーに求められながら、慈子は思っていた。
 
夫は大きな会社の社長だ。
 
もしこのことが知れてしまったら、何十年と築き上げてきた全てを失ってしまうのだろう。
 
しかしもっと恐ろしいのは、そうなることを自分は望んでいるような気がしてしまうことだ。
 
行為のあと、また頭痛がする慈子。
 
大丈夫かとタクゾーが声をかけられ、慈子は返事をする。
 
こんなことは、いつまでも続けていてはダメだと思っていた。
 

忘れていること

おはよーとリビングの扉をあけたのは、一人息子の春斗だった。
 
いいにおい…とキッチンから漂う匂いに反応している。
 
おはよう、と慈子に声をかけられて春斗は驚いた。
 
記念日かと勘違いするほど、大量の料理が机に並んでいるのだ。
 
うっかり作りすぎちゃったという慈子に、これはうっかりっていう量じゃないと突っ込む春斗。
 
…慈子は、息子を失ってしまったら生きていけないと思っている。
 
朝食をとるため、一緒に机につく慈子と春斗。
 
たわいもない話をしていると、春斗が「父さんどうしてるかなあ」とつぶやいた。
 
一瞬、硬直する慈子。
 
しかしすぐに、しばらく会っていないものねと笑いかけた。
 
春斗に、まだ父さんのことを怒っているのかと問われ慈子はまた停止する。
 
夫に何を怒っているのか、慈子は覚えがないのだ。
 
何のことかと聞けば、あんなに大騒ぎしたのに忘れちゃったのかと春斗は驚いた。
 
そして春斗は半年前にあったことを、慈子に話した。
 
深夜、叫び声をあげて男に花瓶などそこら中にあるものを投げつける慈子。
 
「出てけ!あんたなんか知らない!」半狂乱になりながら、慈子は必死で男を追い出そうとしていた。
 
そこへあまりの騒ぎに起きてきた春斗。
 
慈子は春斗に、警察を呼んで!と必死で訴えていた。
 
しかし慈子が必死で追い出そうとしていたのは、春斗の父であり慈子の夫だ。
 
春斗は不思議に思い「父さん?」と声をかけるが、慈子のあまりの様子に父はとりあえず外へ出ようとしているようだ。
 
父さんまた浮気したの?と春斗は言うが、今の俺は潔白だと話す父。
 
怒りがまたぶり返したのかもよ?と言われ、何か考える様子を見せる。
 
そして「しばらく母さんを頼んだぞ!」と言い残し、去っていったのだ。
 
慈子に話し終えた春斗だが、慈子は驚いたように震えだす。
 
あの男はお父さんじゃないわよ!?と青ざめているのを見て、春斗はまた驚く。
 
慈子は夜中に目を覚ましたら、突然知らない男がいたのだというのだ。
 
だから慈子は必死で、不審者を追い出したのだ。
 
春斗は何を思ったのか、それは怖かったねと慈子に伝えた。
 
春斗が学校に行くのを見送るため玄関に行く慈子。
 
今日は遅くなるかもと話す春斗に、最近夜遅くに出歩きすぎたと慈子は注意した。
 
しかし春斗はあまり気にしていない様子で、息抜きだと話した。
 
春斗は思い出したように振り返り、慈子に言った。
 
「俺知ってるからね、母さんの秘密」
 
慈子は、バカなこと言ってないのと返しそのまま春斗を見送る。
 
そしてドアが閉まった途端、バレていた…と動揺するのだった。
 

アルバム

一人になった家の中、慈子はある部屋のドアをあけた。
 
慈子は辛いことがあると、幸せだったころのアルバムを眺めるのだ。
 
そして慈子は、写真の中にいつ小さな息子に誓った。
 
もう、タクゾーには会わない…そう誓えば涙がとめどなく溢れてきた。
 
しかしアルバムをもう1ページ捲り、慈子は停止する。
 
幼い春斗の隣には、眠っているタクゾーが写っていた。
 

知っている

こぽこぽと注がれるコーヒー。
 
タクゾーの家にいるのは、春斗だった。
 
コーヒーを飲むかとタクゾーが聞けば、春斗は夜眠れなくなるからと断る。
 
ここの生活が随分気に入っているようなタクゾーは、社長といってもただの人だとぼやく。
 
起きて半畳、寝て一畳あれば十分なんだとコーヒーをすすった。
 
そんなタクゾーの言葉に、自分は家のふかふかベッドが好きだという春斗。
 
タクゾーは、いつかお前にも良さがわかると笑った。
 
春斗は、最近慈子がそわそわしていることが多いと話した。
 
不倫の罪悪感なのかなとぼやく春斗だが、実際は不倫じゃないけどと付け加える。
 
実際、今日春斗は慈子にカマをかけてみたが上手くごまかされてしまった。
 
女はおっかないと春斗はタクゾーに話すと、そういうのやめろってとタクゾーは言う。
 
きっと慈子は高次脳機能障害なのだろうと春斗は話した。
 
それは記憶障害の一種で、事故の前に経験したことを思い出せなくなることがあるのだ。
 
今回慈子は、夫であるタクゾーのことだけキレイに忘れてしまったわけだ。
 
始めは以前のタクゾーの浮気が許しきれていなくて、閉め出したのだと思っていた。
 
タクゾー自身も、2か月前に再会するまでそう思っていたのだ。
 
脳の検査をしても得に異常はないと言われているため、きっと思い出すのを待つしかないのだろう。
 
しかしタクゾーは、別にこのままでもいいと話す。
 
最近慈子はキレイになったし、タクゾーはそれなりに楽しんでいるようだ。
 
そして春斗に「お前昔妹欲しいって言ってたよな…」とニヤけ顔をむけた。
 
そんな父親に、青ざめる春斗だった。
 
気持ち悪い…と口元を押さえる慈子。
 
今日もまた、頭が痛かった。
 
 

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芳香妻 のネタバレ

匂い

雪が降る寒い日。
 
飲み会を終えて、二次会に行く人はタクシーに乗るようにと声がかかる。
 
先輩に押されるようにして融(とおる)がタクシーに乗りこもうとすれば、中から匂いを感じた。
 
「この匂いは…薫(かおる)さん!」とビシっと中を指差す融。
 
そこには思った通り、薫が乗っていた。
 
今香水つけてないのによくわかったね!と薫は笑った。
 
そう、薫の匂いは初めのころ融をとても…動揺させた。
 

二次会

タクシーで薫と2人になった融は、飲み会のテンションのまま話しかけていた。
 
今日は先ほどまで、上司にたくさん弄られたのだ。
 
それは東京にいる彼女に、突然「もう会えない」と言われてしまったのが原因だった。
 
融は薫に泣きながらそのことを話し、もう二次会に行きたくないと泣いていた。
 
薫は、大変ね…と融に視線を向けた。
 
お酒を飲める若い子が融だけのため、そういう役目が回ってきがちなのだ。
 
それを薫に指摘されて、わかります?と反応する融。
 
明るいキャラクターのため悩みがなさそうに見える融だが、結構大変だったりする。
 
頭が回る融は愚痴をこぼす相手もちゃんと選んでいる。
 
それが薫ということだ。
 
融は薫に二次会にはいくのかと聞くと、明日は用事があるらしい。
 
融は薫が来ないことにショックを受けたようで、大げさに反応してみせる。
 
若い子だけで楽しんでおいでと笑う薫に、融は薫が来ないなら自分も帰るとむくれた。
 
薫は君がいないと盛り上がらないでしょう?と声をかけるも、融はあからさまに駄々をこねた。
 
そこに融に二次会呼び出しの電話がかかってきた。
 
早く出るように薫は促したが、融はもう帰りたいと電話を薫に出てもらうようにスマホを手渡した。
 
仕方なそうに笑いながら、薫は電話に出る。
 
そして融は気分が悪くなってしまったと電話の相手につげた。
 
電話の相手と話しているうちに、融は先ほどの駄々はなんだったのかタクシーの運転手に道を指示した。
 
急にシャキッとした融が面白くて、薫は電話を切った後に融にツッコミをいれた。
 
すると突然真顔になった融は、おもむろにビニール袋を口に当てる。
 
そして盛大に戻した。
 
本当に気持ち悪かったとは思わず、薫はとても驚いた。
 
完全に体調を悪くしたらしい融と一緒に薫はタクシーを降りることにする。
 
そして二人、雪がちらつく夜道を歩くことにした。
 
何やら情緒不安定になっているような融は、涙を流しながら「アキちゃん~」と連呼している。
 
きっと例の彼女の名前なのだろうと薫は思った。
 

融のアパート

無事に融のアパートに到着し、薫は帰ろうとする。
 
しかし電気を滞納しているようで、電気がつかないようだ。
 
この寒い時期に光熱費滞納しちゃダメと声をかけながら、薫は背をむけた。
 
電気代は先ほど払ったようで、もうすぐつくはずだと融は話した。
 
融はそんな薫に、コーヒーを飲んでいってくれと引き留めた。
 
ガスや電気は止まっているものの、カセットコンロでお湯を沸かしてコーヒーを作ってくれるようだ。
 
ちなみに電気は、ノートパソコンを明かりにするらしい。
 
明日早いんだけどと言いながらも、せめて電気が来るまでいてほしいという融に根負けする薫。
 
結局、お茶一杯だけ…と融のアパートに上がることにした。
 
カセットコンロでお湯を沸かし、コーヒーを飲む二人。
 
融は何気なく、薫に年齢を聞いた。
 
薫は45だと答えると、融はものすごく驚いた。
 
どう見ても30くらいにしか見えないのだ。
 
薫のことをバケモンか!?とまでいい驚く融。
 
薫は、色々やってますから…と恥ずかしそうにうつむいた。
 
友だちのお母さんと同い年だと薫にいうと、薫は融の母親の年齢を聞いた。
 
しかし融は、わからないと答える。
 
融の母親は、融が小さいころに浮気をして出ていってしまったのだ。
 
大変だったね…と融の苦労を想う薫だが、融は友だちのお母さんが良くしてくれたから大丈夫だと話した。
 
融はなんとなく、放っておけないオーラが出ているので薫はその友人の母の気持ちがわかる気がした。
 
そんなことを呟くと、融はだから困るのだと笑った。
 
彼女一筋だからモテちゃうの困るのだという融を、薫はお調子者だと思った。
 
そして融は、薫は結婚もしているし幸せそうなこともあり会社では一番安心して話せると笑った。
 
あまりそのように見えないのだが、融は同世代や年下の女の子は苦手なのだ。
 
少しでも上から目線発言をされてしまうと、素直に聞けないのだそうだ。
 
それを聞いて薫は自分も気を付けないとというが、融は薫はセーフだと話した。
 
ふと机に目をやると、エッセンシャルオイルがたくさん並んでいることが分かった。
 
彼女の?と聞けば、なんと融の趣味だというので薫はものすごく驚いた。
 
彼のキャラクター的には、サバゲーとかフットサルとかをしていそうな雰囲気なのだ。
 
そして融は自慢げに、このローズの精油は一本2万円もするのだと話した。
 
薫はそれよりも先に、光熱費を払おうねと思った。
 
それにしても何でアロマなのかと薫は聞いてみた。
 
すると融は、作りたい香りがあるのだと話した。
 
どんな香りなのかと問いかける薫に、融は若干頬をそめながら「おばさんの香り」と答えた。
 
思いもよらない答えに、衝撃を受ける薫。
 
おばさんの香りというのは、所謂加齢臭ということなのだろうか。
 
融は、正確には友だちの母親の香りなのだと話した。
 
伊紀(よしのり)という友だちの母親の匂いだ。
 
伊紀の家は、融の家とは逆で父親がいなかったらしい。
 
その母親は融にものすごく良くしてくれたのだ。
 
自分の子どものようにかわいがってくれたその人は、悪いことをすれば容赦なく怒ってくれた。
 
それが融にとって、すごく嬉しかったのだという。
 
融は昔のことを思い出した。
 
伊紀の母親は、いつもいい匂いがした。
 
どこか花みたいな香りだと思っていた。
 
しかし香水はつけていないし、伊紀からは感じないのだ。
 
その母親は、自分じゃわかんないわと笑っていた。
 
融はよく、伊紀から一緒に暮らそうと言われていた。
 
そうしたいのは山々だったが、父親がそんなこと許すわけないと思ってた。
 
今でも、レモンの香りを嗅ぐと記憶がよみがえってくるのだ。
 
プルースト効果というやつだろう。
 
おばさんとは今も仲がいいのかと訊ねる薫に、最近はあまり会えていないという融。
 
今は東京にいるとぼやく融に、薫は気づいた。
 
そう、融の大好きな彼女というのはその伊紀の母親だったのだ。
 
それを指摘されて、誤魔化し笑いを浮かべる融。
 
そして絶対言いふらさないでくださいよ!と訴えた。
 
薫はなるほどと思った。
 
融が若い子に全く興味がないのは、そういうことだったのだ。
 
それでも薫は不思議に思った。
 
息子の友だちに、もう会えないなんていうだろうか。
 
その言葉に融は、ずっと拒否られてはいたのだと話した。
 
融は結構一方的に、関係を進めたような感じなのだそうだ。
 
しかし融は真剣な表情になり、今回はマジかもしれないとぼやく。
 
不思議がる薫に、融は言った。
 
「乳がんなんです、彼女」
 
若くて健康な子と付き合いなさいと言われたこと。
 
そして、お金ももう送ってくるなと怒られたという融。
 
保険適応外の治療をしている彼女のために、融はお金を送っていたのだ。
 
一瞬静まり返った暗い室内。
 
薫は、相談しなさいよね…と呟いた。
 
すると融は、今からすると答える。
 
薫はいくら必要なのかと聞くが、お金じゃないと融は応えた。
 
どこか不安気に、怒らないで聞いてほしいというのだ。
 
不安気だが真剣な表情に押されて、薫は息をのんだ。
 
そして融は「薫さんの匂いを嗅がせてください」と薫を見つめた。
 
薫の匂いが似ているのだ。
 
元気だったころの彼女の匂い…消毒されていない本物の匂いに似ているのだ。
 

彼女の匂い

目を瞑って、薫の近くに寄る融。
 
薫の周りの空気を吸い込めば、伊紀の母親…アキが近くにいるような錯覚に陥る。
 
電気がなかった時代には、暗闇の中で男女は香りで相手を判別していることもあった。
 
源氏物語にもそういう話があるよねと薫は声をかけるが、真剣な融の様子に話しかけないほうが良いかと思った。
 
目を閉じて集中している様子の融は、自分の匂いが邪魔だという。
 
そして自分がつけているブレンドを見せてくれた。
 
薫はその香りを嗅いでみると、とても良い匂いがした。
 
今日は服にタバコの臭いがついてる…そう融は悔しそうにいう。
 
今日はダメかもと思った融は、また来てくれないかと薫に頼む。
 
しかし薫は、それはムリだと笑った。
 
納得した様子の融は、さらに薫に距離をつめて懇願する。
 
もっと近くで嗅いでいいですか?と言われ、薫は承諾した。
 
薫の首元に鼻先を押し付ける融。
 
二人はそのままベッドに倒れ込む。
 
薫は思っていた。
 
彼はタクシーに乗り込んだ時から、この絵を描いていたのだろうか。
 
葛藤も抵抗も、もう遅いと思った。
 
彼女とはいつから付き合っているのかと薫は聞いてみる。
 
しかし融は、付き合っていないとぼやく。
 
彼女というのも、本当は嘘なのだ。
 
融は一方的に思いをぶつけて、彼女は仕方なくそれを受け止めていてくれていたにすぎない。
 
切ないね…と薫は呟いた。
 
融はアキを無理やり抱いた時のことを思い出す。
 
そして薫は、彼の話を鵜呑みにしちゃいけないと思った。
 
彼は仕事が出来て、嘘も付ける人間だ。
 
それが仕事をしていて感じたイメージで、尊敬できるところ。
 
そして、怖いところでもあった。
 
それでも薫は、この話は本当だと思った。
 
自分の寝るためだけに、融はこんな作り話をするわけない。
 
うぬぼれてはいけないと思った。
 
「匂いが濃くなった」と呟く融。
 
身体があたたまったことで、匂いが強くなったのだろう。
 
融は、塩を入れて見よう…という。
 
そして今度こそ、出来るかもしれない。
 
そう薫の香りを吸い込むのだった。
 
帰るため靴を履きながら、薫は言った。
 
私がもし、アキで融のことが大好きだったとしたら。
 
やっぱりもう来ないでと言ってしまうと思った。
 
それは融が、まだ若くてとても魅力的だからだ。
 
捨てられる前に自分から別れたほうが、キレイだし傷つかないのだ。
 
みっともない姿を、世間にさらしたくないと思ってしまう。
 
融はそんな薫に、彼女も同じことを言っていたと呟いた。
 
しかし世間体がそんなに大切なのか、融にはわからなかった。
 
薫は大事だと強く言う。
 
幸せか不幸かということは、世間が決めるものだと思うからだ。
 
いくら自分たちが幸せでも、世間が認めてくれなければ…。
 
そうぼやく薫に、融は笑っていう。
 
自分は友だちの母親に欲情する男だと。
 
その後、融は東京へ赴任することになる。
 
それまでの数か月間、何度か呼び出された。
 
しかしそれだけで、燃え上がるような恋ではなかった。
 

プルースト効果

アキちゃん!と元気に声をかければ、病室のベッドにいるアキは不満げな声を上げた。
 
来なくていいといったのに…とブツブツいうアキは、伊紀は?と問いかける。
 
しかし伊紀は、今日が彼女とデートをしている。
 
アキは、もうおっぱいも無くなっちゃったし髪もカツラだと俯く。
 
融は、あってもなくてもどっちでもいいと答えた。
 
そして花瓶の隣に置いてあった小瓶の中身が全く減っていないことに気づいた。
 
それは融が作ったブレンド香水だ。
 
しかしアキは使えなかったのだ。
 
この香りは融の匂いがするから、香りがするのに姿が見えないなんて…。
 
そう呟くアキに、そっか…と何かに気がついた融。
 
自分のポケットからもう一つの小瓶を出す。
 
その中身も、まったく減っていなかった。
 
何それ?と問いかけるアキに、空夏(あきな)フレーバーだと答えればアキは「げ!!」と声をあげる。
 
気持ち悪いというアキは、相変わらずバカだねとため息をついた。
 
その話し方おばさんっぽいと融がぼやけば、自分のことをおばさんだというアキ。
 
早く若い子を連れて来てくれと騒ぎ、結婚の保証人のところにはハンコを押してやるといった。
 
しかし融は、熟女専になったのはアキのせいだという。
 
だから責任をとってくれといえば、アキは困ったように笑う。
 
ベッドに突っ伏して涙を流し、死なないでという融。
 
その夏アキは、とうとう根負けして融と暮らし出した。
 
薫は家族でショッピングモールに来ていた。
 
香水が欲しいという娘と、コーヒー豆が欲しいという夫。
 
薫は相変わらず、幸せに見える毎日を送っている。
 
ふと、振り返る薫。
 
そんな母親を不思議そうに娘はみる。
 
薫は今でも彼と同じ香りに遭うと、しばらくその場を動けなくなってしまうのだった。
 
 

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園芸妻 のネタバレ

同居

史久(ふみひさ)が実家で、兄夫婦と同居おを始めて3年がたった。
 
母親が亡くなってからというもの、兄の嫁である花純(かすみ)が実権をにぎりつつある。
 
今日も花純に立ちション禁止を言い渡された史久は、俺の実家なのに…と呟いた。
 
母親には何も言われなかったのにとぼやけば、お義母さんが良くても私は許しませんと凛と言い放つ。
 
史久は、こんな古い家をそこまでキレイにしなくてもいいのにと思ったのだった。
 
その時、元気な足音と共に史久を呼ぶ声が迫ってきた。
 
勢いよく史久に抱きついてきたのは、花純の娘の紀里(きり)だった。
 
史久は思い切り紀里を抱きしめて、全力で頬ずりやキスをする。
 
史久は紀里のことがかわいくて、仕方がないのだ。
 
そんな二人を横目に、花純は紀里に幼稚園の時間だという。
 
しかし紀里は、幼稚園をお休みして史久と遊びたいと言った。
 
そんな発言に胸を打ちぬかれた史久は、望むならどこへでも連れていくと叫ぶのだった。
 
適当なことを言わないでくれと花純にたしなめられたその時、「おい」と威圧的な声が響いた。
 
現れたのは、一久(かずひさ)。
 
史久の兄であり、花純の夫だ。
 
両肘から肩にかけてと背中全体に、大きな入れ墨が入っている。
 
花純のことをさっさと連れていくように命令する一久を、無言で睨みつける花純。
 
史久は、帰ってたんだ…と驚いたようにつぶやいた。
 
花純は紀里に、行こうと声をかける。
 
一久が自分の飯はと言っているが、花純は後でやると伝えた。
 
しかし一久は紀里の首根っこを掴み、史久にお前がやれと紀里を渡す。
 
幼稚園の場所わからないんだけど…とぼやく史久は放置され、紀里と一緒に玄関から追い出された。
 
紀里は嬉しそうに、幼稚園に連れてってあげると笑った。
 
幼稚園に向かう途中、紀里が顔見知りらしい近所の女性に声をかけられた。
 
今日はパパと?と声をかけられた紀里は、うん!と元気いっぱいに応える。
 
そんな返事を聞いて史久は、違うと説明しようとするがそれは紀里に止められた。
 
あいつキライ!と声を荒げた紀里は、史久にパパになって欲しいというのだ。
 
そして、おじちゃんがパパになって弟と妹を作ってほしいといった。
 
そんな紀里に史久は、一久も昔は優しい人だったんだと話した。
 
紀里は史久の言葉に盛大に驚いて見せる。
 
そして真剣な顔をして、奴は神に逆らって堕落した天使なのでは…と呟いたのだった。
 

昔の一久

紀里の言葉をきいて、史久はそうかもしれないと思った。
 
昔…二人がまだ幼いころ、いつものように父親が暴れていた。
 
父親は所謂『活動家』で、仲間には神と呼ばれていた。
 
しかし家では家族に大声をあげて、家族を蔑ろにしていた。
 
そのため一久は、父に逆らったのだ。
 
それに激昂した父は、一久を酒の瓶で殴り頭を割った。
 
優しかった一久は、それ以来悪魔のような人格になってしまったのだ。
 
「エンジェルトランペット、かわいいでしょう?」優しい母の声を思い出す。
 
母は園芸に癒しを求めるようになっていった。
 
結局父は家族を捨てて、消えてしまった。
 

秘密

史久が紀里を送っている間、花純は一久にご飯を作っていた。
 
皿をテーブルに置いたものの、一久はどこのだれだかわからない女性と電話をしていた。
 
どうやら今夜のお誘いのようだ。
 
花純はそんな一久を放っておき、庭の手入れをすることにした。
 
雑草を抜いたり間引きをしたりしていると、花純は病院で義母に言われた言葉を思い出した。
 
「あなたにだけ…聞いてほしい秘密があるの」
 
そうしていると、一久に声をかけられた。
 
こっちへ来い、という声に心が冷えるような感覚を覚える。
 
一久のもとへ行くと、一久は花純の恰好を貶す。
 
そして、全部脱げと命令をした。
 
史久がもうすぐ帰宅することを理由に断ろうとする花純だが、一久は引くつもりがないらしい。
 
紀里や史久に見せたいのかと脅され、花純はどうしようもなく服を脱いだ。
 
そしてしばらくして、史久が帰宅した。
 
紀里を送り届けたことを玄関をあけながら報告した史久だが、すぐに状況を察した。
 
押し殺すような花純の声に、息をのむ史久。
 
そう、一久は時々帰ってくるのだ…史久と花純で遊ぶために。
 
立ったまま身体を弄ばれて、必死で耐える花純。
 
史久はそれに気づかないふりをしてその場を離れようとするが、一久に名前を呼ばれ足をとめた。
 
史久が帰ってきていることに気づいていた一久は、こっちへくるようにと命令する。
 
そして自分の変わりに花純を抱いてくれというのだ。
 
今自分は、抱くことができないからと。
 
驚いた史久に一久は楽しそうに説明をする。
 
乱暴をした女性の家族に拉致されたらしい一久は、『切られてしまった』というのだ。
 
あまりのことに、言葉が出ない史久と花純。
 
一久は、仕事なんだから仕方ないと笑っている。
 
クソ野郎…と花純はぼやくが、一久は気にも留めずに史久を急かす。
 
そして「好きなんだろ?こいつのこと」と花純のことを史久に見せつけるように抱いた。
 

片思い

ある日、スマホの画面を見つめる史久に一久は声をかけた。
 
その画面には、花純を隠し撮りしたような写真が映っている。
 
ホームセンターの園芸コーナーで働いている女だな、と知った風なことをいる一久。
 
園芸なんて興味がないだろう一久に、なんで知ってるんだと驚く。
 
しかし一久は、売り物になりそうな女は大体調べてあると笑ったのだ。
 
一久に目を付けられた女は、誰も逃げることができない。
 
そしてしばらくして、花純はホームセンターを辞めてしまった。
 
よく相談に乗ってもらっていた母親は、とても残念そうにしていた。
 
しばらくしたある日、一久が紹介するよと連れてきたのは花純だった。
 
家に連れてきた時にはすでに、花純のお腹は大きく膨らんでいた。
 
驚いた母親にお腹を指摘された花純は、すみません…と小さな声で謝ったのだった。
 
すぐに史久は、一久を問いただした。
 
彼女に何をしたんだと、真剣に聞く史久。
 
しかし一久は、ただ普通に付き合って子どもができただけだという。
 
監禁したり脅迫したりしたのかと責め立てる史久に、笑いながら誤解だという一久。
 
そして一久は、花純のようなタイプの女は好青年のふりをして近づくのが一番なのだと話す。
 
そして取返しの付かないところまで関係を作ったところで、自分の正体を明かすのだ。
 
騙したのか!と責める史久に、一久は舌を出した。
 
母親の嬉しそうな顔を見ろという一久。
 
そして別に一久が手を出さなくても、花純と史久がどうにかなることは無いのだと馬鹿にした。
 
…花純とはこんな形でしか結ばれなかったのだろうか。
 
史久は思わずにはいられなかった。
 
母親は史久に、一久は家に寄りつかないから史久が来てくれると助かると花純が言っていると話した。
 
いっその事、家に戻ってきたらどうだと言われたのだ。
 
生まれたばかりの紀里に既にメロメロだった史久は、どうしようかな~と頬ずりをする。
 
そして思い出したように、庭にあったスズランのことを聞いた。
 
知らない間に抜かれていたことを聞いてみると、あれは猛毒だから紀里が口に入れたら危ないだろうと母は言った。
 
実は奥のほうにある花も毒のものがあるけど、奥にあるものは大丈夫だろうと言う。
 
そんな物騒なもの植えないでよ!という史久。
 
どれが毒か知っておかないと!と急いで二階に置いてある図鑑を見に行った。
 
本が置いてある部屋には、花純がいた。
 
すると花純の手には、なんとなく捨てられなくてプリントアウトして隠してあった花純の写真が握られていた。
 
これ、史久さんが?と聞かれ史久は頭を下げた。
 
もう昔のことなので…といえば、花純はいつのことだと聞いてきた。
 
花純が一久と出会うよりまえだと目を逸らし、気持ち悪いですねと自嘲する史久。
 
しかし花純は否定せず、写真を持っていてほしいといった。
 
この写真は、自分が一番きれいだったころの写真だからと。
 
思わず史久は、花純はいまでもきれいだと伝える。
 
花純は、史久と母がいい人で良かったと呟いた。
 
そして静かに史久に手を伸ばし、胸におさまる。
 
史久も花純のことを、静かに抱きしめたのだった。
 
何故植物は、毒を作るんですか…?
 
史久が呟くと、一度根を下ろした場所から動くことができないから…と花純は切なげにいった。
 

楽しそうな一久に見られながら、花純を抱く史久。
 
史久は一久の機嫌を損ねると、怒りは花純へ。
 
そして花純が一久の機嫌を損ねると、怒りは紀里へと向かっていく。
 
だから二人はいつも、一久の言いなりになるしかなかった。
 
抱き合う中、花純は史久に小さく声をかけた。
 
一久の食事に『花』を入れたというのだ。
 
その花は、庭の奥にある下向きに咲く白い花。
 
そしてお義母さんがお義父さんに使った…毒だ。
 
あの時病室で義母が花純に話した秘密。
 
それは、義父のことだったのだ。
 
母親は、優しかった一久を変えてしまった父のことを許せなかった。
 
だからどうしたら殺せるのか、ずっと考えていたそうだ。
 
花に全く興味がなかった父に、みそ炒めにして出したという母。
 
猛毒とは知らずに、バクバクと食べたのだそうだ。
 
遺体はトイレ裏の土の中に埋めたらしい。
 
あんなに神だと崇められていたが、実は嫌われていたらしい。
 
突然いなくなっても、誰も探しに来なかったのだ。
 
そんな秘密を話した母は、もう死ぬからいいわよね?と笑っていたそうだ。
 
史久は思った…この時のために仕打ちに耐えていたのかもしれない。
 
殺人の罪悪感を相殺してしまうほどの怒りを、二人は溜めていたのだ。
 

これから

一久の遺体を土に埋めて、花純はこれからどうしようかと呟いた。
 
そんな花純に、史久は応える。
 
紀里が弟と妹が欲しいと言っていたと。
 
花純はそれから、死体の上に魔除けになると言われていたキンギョソウを植えた。
 
キンギョソウに毒はない。
 
しかし、子孫繁栄のためにさやに3つの穴をあけて種を撒くその姿はまるでドクロのようだ。
 
その姿を3人の子どもたちが眺めていた。
 
こわいね、と笑いながら。
 
 

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金魚妻2 のネタバレ

ボロボロ

いつものように金魚の世話をしている店長に、さくらは声をかける。
 
何をしているのかと訊ねると、金魚の人口受精をしているところだと教えてくれた。
 
自然に任せていると、オスがメスを追いかけることでメスがケガをしてしまうのだ。
 
店長が視線をやった水槽を見てみると、自然に任せた繁殖をしたメスたちが泳いでいた。
 
トリートメント中の水槽には、ボロボロになりよろよろと泳ぐメスたち。
 
金魚も激しいんですね…と意味深に呟くさくらも、顔を怪我してボロボロになっていた。
 

自由に

就業後、さくらは店長に明日休みをもらっていいかと聞いてみた。
 
どうぞと簡単に返事をくれる店長。
 
帰りの時間も伝えようと考えるさくらを、店長は振り返る。
 
そして、時間なんて気にしなくていいのだ話した。
 
好きな時に、好きなところに行っていいと。
 
さくらが休みを申し出たのは、数日前に夫が店に来たことが原因だった。
 
さくらのことを探しているようだった夫。
 
店長に知らないと言われたのだが、金魚を飼ってみようと思いついたようだ。
 
金魚ってこんなに種類があったのかとぼやく夫。
 
金魚は飼ったことないと言っていたのだが、大丈夫だという。
 
夫が購入していったのは、飼育難易度が高いピンポンパールという品種だった。
 
そんなピンポンパールを、小さな金魚鉢で飼うと購入していった夫。
 
店長は思うところがあったものの、客が欲しいといえば売らないわけにはいかないのだ。
 
一緒にお風呂に入りながらその話を聞いたさくらは、あわあわと震えた。
 
金魚はとても繊細な生き物だということを、さくらも知っていた。
 
とても水を汚す金魚は、自分が汚した水で死んでしまうのだ。
 
そして、温度の急激な変化でもすぐに命にかかわる。
 
少ない水はその分汚れやすく。温度も変化しやすい。
 
そんなことを考えながら、さくらは夫のことを思い出した。
 
知り合ってすぐにさくらのことを気に入ってくれた夫は、すぐに結婚しようと言ってくれた。
 
さくらは素直に、嬉しいと思った。
 
結婚してすぐのこと、帰ってきて部屋が荒れていたことに夫は文句を言った。
 
お互い仕事が忙しいからね…と応えたさくらを、夫は意味が分からないという風に見た。
 
さくらは正社員じゃないんだから、お互いっていうのはおかしいだろうと当たり前のように言った。
 
さくらはそれから頑張った。
 
家事と仕事を両立させていれば、夫は優しかったからだ。
 
しかし無理がたたったさくらは、生理が止まってしまった。
 
過労が原因だと説明すると、夫はどうすんの?と聞いてきた。
 
仕事を辞めるという選択をさくらがすれば、夫はほらな?という。
 
最初から専業主婦をしていればよかったんだと言われたさくら。
 
手伝ってという一言が、さくらは言えなかったのだ。
 
そしてある日、さくらは聞いてしまった。
 
やることやっているのに子どもができないと思ったら…時間の無駄だった。
 
そう電話で話していた夫。
 
そして夫は、不倫をするようになった。
 
さくらは、店長に出会った。
 

妻の名前がつく金魚

お風呂なかで交わる店主とさくら。
 
さくらに暴言を吐き出ていけといった夫が、『さくらピンポンパール』を買っていった。
 
妻の名前が入る金魚を買った夫は、何を考えているのだろうか。
 
さくらは気になっていた。
 
とっさに夫の名前が口から出たさくらは、急いで口元を押さえた。
 
違うんです…と弁解をするが、店長はいいんだよと笑った。
 
そして店長は、旦那のことが気になるなら行ってもいいと言ってくれたのだ。
 
自分のことは気にしなくていいからといった店主は、今ならまだ戻れるかもしれないと呟いた。
 
ピンポンパールの世話を始めた夫は、案の定困っていた。
 
砂を入れて水草も植えたのに、餌を食べないのだ。
 
そのため弱った金魚を売りつけられたと思った夫は、悪いレビューを書いて店を潰そうと思った。
 
明らかに弱っている金魚を売られたと書くと、すぐに返事がついた。
 
それは常連客からのものだった。
 
そこの金魚屋は絶対に弱った金魚を店頭に出さない。
 
クレームをつけている人が買ったのは、ピンポンパールじゃないのか。
 
飼育難易度が高い魚だから、店長にきけば親切に教えてくれると書いてあった。
 
信者がついていると、苛立ちを隠せない夫。
 
さらに悪いレビューを書いて評判をさげてやろうと、パソコンに向かう。
 
すると玄関のほうから声が聞こえ、夫はハッとした。
 
「さくら!しっかり!」
 
金魚鉢を大切に抱え、さくらは台所に走った。
 
薬や塩を入れて、金魚を大きなバケツに移す。
 
突然金魚を塩水につけるさくらに、夫は声をかけた。
 
金魚に塩水にいれたらダメだというが、さくらはとても楽になるのだと説明する。
 
そして、金魚がどうしたら元気になるのか夫に話す。
 
砂や水草も入れないとかわいそうだろうという夫に、金魚に一番必要なのは水だとさくらは言う。
 
そして、小さい器で飼うならば毎日水を交換しないといけないという。
 
夫は毎日ということにかなり驚いたようだ。
 
さくらはその後にも、金魚の世話をするためのアイテムや飼育本を出して説明をした。
 
病気にさせないことが大切なんだと語った。
 
それを受け取った夫は、すぐにそれを机に置いた。
 
後でな、とさくらに手を伸ばして抱きしめる。
 
無事でよかったと囁く夫に、さくらも急にいなくなってごめんと声をかける。
 
そして身体を離した夫は、突然さくらの頬を叩いた。
 
これは黙っていなくなった分だと、ぼやく夫。
 
しかし夫は、他にもあるぞとさくらに冷めた視線を送る。
 
「あの子に振られたの?」とさくらに聞かれた途端、夫はさくらの顔面を拳で叩きつける。
 
あまりの衝撃にうずくまるさくら。
 
生意気な口をきくなとさくらを見下ろし、こっちは忙しいんだと言い放つ。
 
鼻から血が出るのを、さくらが手で押さえる。
 
さくらは夫を睨みつけて、変わらないね…とぼやく。
 
夫のやり方じゃ金魚は腐った水の中で苦しんで死んでしまうのだ。
 
そう叫べば、夫は更にさくらに拳を振り上げた。
 

終わりと始まり

ゴン!と激しい音が聞こえ、常連のおじさんは水槽を覗き込んだ。
 
今年は激しいなあと話すおじさんは、取れてしまったメスの鱗を心配そうに見る。
 
乱暴にメスに迫るオスを見ながら、どうする?と店主に聞く常連客。
 
どれどれ…と店長は水槽を覗き込み、2匹を引き離すことに決めた。
 
暴力をふるわれ、床に倒れるさくら。
 
待ってて店長…ボロボロになったさくらは、店長のところに辿り着く。
 
そして乱暴に迫られていたメスは、自分で水槽を飛び出した。
 
常連客にキャッチされたメスと、店長の腕の中におさまったさくら。
 
ダメだった?と店主に聞かれ、ダメでしたと答える。
 
さくらの名前がついたピンポンパールは、さくらの両親が連れていった。
 
常連客は飛び出した金魚とさくらを見ながら、ここの金魚は元気だなあと笑うのだった。
 
夫は離婚届にサインをしていた。
 
目の前には、さくらの両親。
 
さくらはどこにいるのかと訊ねる夫に、両親はそれは言えないと話した。
 
さくらは自分が暴行される様子を、動画に収めていたのだ。
 
さくらの母は、自分が愛されていない証拠を残すなんて恥ずかしかっただろうとさくらを想った。
 
そして父は、真面目で正義感が強く若いのに子どもが欲しいという夫を感心してみていたのだと話した。
 
しかし怒りが収まらない母は、言いなりになる家来はたくさんいたほうがいいのだろうと声を荒げる。
 
父は母になんとか落ち着くように声をかけ、付き合っている時は隠すものなんだと言った。
 
さくらに何て詫びたらいいのかと俯く夫だが、両親はそんなもの必要ないという。
 
そして、あなたは自分の心配だけしていろと言うのだった。
 
怒り心頭のさくらの兄が、ここに向かっているのだ。
 
父は、さくらはたくましいから大丈夫だと夫に告げた。
 
さくらはもう泳ぎ出している。
 
離婚活動を始めてから、コツコツと自分の通帳に移していたお金。
 
さらに離婚をして財産を半分もらえるから、3年はのんびりできるだろうと思った。
 
屋上で金魚の世話をしている店長のところに顔を出したさくら。
 
金魚のようなひらひらとしたランジェリーを着て、楽し気な様子だ。
 
店長は怪我の心配をするが、さくらはおかげさまでと笑って見せる。
 
そんな恰好でうろうろしていたら危ないよとさくらを抱きとめる店長。
 
離婚後300日問題…重要な問題なのだ。
 
良く晴れた空の下、店長はさくらに聞いた。
 
こんなおじさんでいいのかと。
 
さくらは笑顔で返事をして、早く店長の赤ちゃんが欲しいと答える。
 
店長は笑いながら、さくらさんが一番激しいねとさくらを抱いた。
 

弁当妻 その後のネタバレ

失うくらいなら

会社の上司である保ケ辺(ほかべ)に、妻とヤリたくないかと声をかけられた津多(つた)。
 
そのお願いを聞くことになった津多と妻である朔子(のりこ)だったが、結局津多と朔子が惹かれる結果になってしまう。
 
朔子は保ケ辺に実家に帰ると告げ家を出たのだが、実際は津多のもとにいた。
 
結局朔子を取ってしまったことを、津多は一応反省している。
 
ベッドの中、今日の話し合いの結果を聞く津多。
 
朔子は、離婚には同意してもらえたことをつたえる。
 
それを聞いて津多は、殴られた甲斐はあったかなと思った。
 
ほんとうは朔子とは、ほとぼりが冷めたら別れるつもりだったのだ。
 
しかし相手が悪すぎると思った。
 
朔子のことを知れば知るほど、離れられなくなってしまったのだ。
 
津多にとって朔子は、全てが理想だった。
 
もう出会ってしまったことが、いけなかったと津多は思った。
 
胸を露わにした朔子に、ビデオカメラを向けながら津多は考えていた。
 
津多と朔子はこれから、保ケ辺が出した離婚の条件に従う。
 
ケンカが苦手な朔子は、離婚の条件がいくらめちゃくちゃなものでも断れないのだ。
 
そして津多も、朔子を失うくらいなら何でもするのだ。
 
離婚条件が、二人の抱き合う姿を録画することでも。
 
元後輩津多と、元妻である朔子が抱き合う姿をテレビの画面越しにみる保ケ辺。
 
画面の中には、激しく乱れる朔子が映っている。
 
手紙には、このやり取りを最後に二人で遠くに行くと書いてあった。
 
そして、朔子のことは心配しないでくださいと…画面をみつめ保ケ辺の目からは涙がこぼれた。
 
画面の中の朔子はとても、幸せそうだった。
 
最後には、次の出会いが痛んだ心を癒してくれるでしょうと書いてあった。
 
津多も恋人を友人に奪われたことがあるから、言えるのだ。
 
保ケ辺は金魚のグッズを買いに、店を訪れていた。
 
いつもありがとうございます!と笑顔を向けてくれる店のスタッフのお腹は、大きく膨らんでいる。
 
ここで買った金魚は今も、元気いっぱい泳いでいる。
 
 

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金魚妻 2巻の感想

頭痛妻 の感想

綺麗に夫の記憶というか、顔を忘れた様子の慈子。
 
犬が夫であるタクゾーに向かっていったのをきっかけに、忘れた夫にまた恋をするのが面白かったです。
 
数年前の夫の浮気でおかしくなったのに、また癒してくれるのは夫であるタクゾーで。
 
タクゾーもそんな不思議な関係を、楽しんでいるようでした。
 
しかも息子の春斗も気づいている不思議な二重生活。
 
最後に昔のアルバムにタクゾーが写っていることを見た慈子でしたが、記憶が戻ったらどうなるんでしょうか…。
 
続編も描かれるのか、気になるところです。
 

芳香妻 の感想

これもどこか不思議な話でした。
 
世話になった友人の母親に恋をする融。
 
ひょうひょうとしていてムードメーカーな彼が、薫の匂いに彼女を重ねる姿が印象的でした。
 
匂いというのは、本当に深く記憶に残るものなんだなと感じました。
 
融には幸せになってほしいな…と思います。
 
家庭もあり美人で幸せに見える薫の心情が、とてもリアルです。
 

園芸妻 の感想

少し怖い…そんな雰囲気のお話でした。
 
片思いしていた花純が兄の毒牙に落ちてしまい、同居することになった義弟である史久との微妙な関係。
 
死ぬ間際に花純に秘密を暴露した母は、花純も同じようになることをなんとなく予想していたのでしょうか。
 
酷い仕打ちを受けてきた花純と史久…ハッピーエンドと言っていいのか。
 
最後に描かれるキンギョソウは、なかなかぞっとするものがありました。
 

金魚妻2 の感想

金魚妻1巻に掲載されていた、金魚妻の続編。
 
どうなったのか気になるところだったので、続きが読めて嬉しかったです。
 
夫の浮気と金魚を飼おうとしたさくらへの否定が酷くて、店長との幸せを願って終わった前話。
 
今回はまた更に夫が酷くて、読んでいて悲しくなりました。
 
しかしさくらが強くて!たくましく生きていくのさくらと金魚が重なって気持ちよかったです。
 
夫は本当に…反省してほしいです。
 

弁当妻 その後の感想

こちらも1巻に掲載されていた、弁当妻の後日談のショートストーリーでした。
 
こちらもかなり気になる終わり方をしたので、ショートストーリーとはいえちゃんと描かれていて嬉しかったです。
 
意味のわからないことをお願いしてくる保ケ辺なので、さすがに離婚条件も意味がわからない。
 
それでも津多と朔子は、きっと幸せになるだろうと思えました。
 
保ケ辺が最後に、金魚妻の金魚屋さんの常連になってしました。
 
さくらのお腹が大きくなっていて、ちゃんとさくらも幸せに過ごせているところが見れてほっこりしました。
 
 

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