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夢の雫、黄金の鳥籠 1巻とは?

出版社:小学館
発売日:2011/9/9
作者 :篠原千絵

16世紀初頭、北の寒村からさらわれたサーシャは、オスマン帝国皇帝スレイマンの側近・イブラヒムに奴隷として買われ、知性の高い女性として育てられる。サーシャはヒュッレムという新しい名を与えられ、後宮に入ってまもなく、皇帝の寵愛を受け始めるが!?

 

夢の雫、黄金の鳥籠1巻のネタバレ

冒頭

16世紀初頭、ルテニアという町で育ったアレクサンドラ・サーシャ。
 
むこうに見える山を越えることもこの村の外を出て生活することもなかった時代。
 
サーシャは鳥のように自由に生きていくことを夢見ていた。
 
ある夜、サーシャはタタールという民族の襲撃によって連れ去られてしまう。
 
そして知らない町でサーシャは奴隷として売られてしまった。
 
その晩サーシャは逃げようと試みる。
 
しかし、同じく奴隷として売られたエリザヴェータによってばらされてしまう。
 
見つかってしまったサーシャは奴隷商人に犯されそうになった。
 
その瞬間、黒髪の男が現れて助けてくれた。
 
その男の名はマテウス・ラスカリス。
 
サーシャはマテウスに自分の身を捧げてもいいから自由になりたいと願った。
 
そんなサーシャに対して、今逃げてもおまえは自由にはなれないとマテウスは言った。
 
学んでたくさんの知識と教養を身につけてから世の中を判断できる目を養いなさいと言い、マテウスは去ってしまった。
 
海を渡り、市場に売りに出されたサーシャ。
 
大金を差し出してサーシャを買い付けた男がいた。
 
その男はマテウス・ラスカリスであった。
 
マテウスはサーシャにチャンスを与えた。
 
マテウスは知識と教養を身につけるチャンス、自由な女性として生きるチャンスを与えたのだ。
 
サーシャは多くのことを学んだ。
 
言語や上品な振る舞い、歌、詩を読むことなど、知らないことを知っていく喜びをサーシャは感じていた。
 
それと同時にマテウスへの恋心が次第に大きくなっていく。
 
マテウスのことを見かけるだけで、マテウスが同じ屋敷にいると分かるだけで鼓動が早くなっていった。
 
サーシャがマテウスを想う気持ちを詩にのせて詠っていた。
 
マテウスはその詩を偶然聞いていた。
 
サーシャの吟詠を褒めたマテウスにサーシャは淡い期待を抱いた。
 
しかし次の瞬間、マテウスは自分の主にサーシャを献上すると言ったのだった。
 
サーシャはそばに置かせて欲しいと言った。
 
妾でもいいからそばにいたいと言った。
 
しかし、マテウスはサーシャを主に献上することを変えなかったのだ。
 
献上されるにあたり、マテウスはサーシャに2つの物を贈った。
 
一つは扉のない金の鳥籠。
 
もう一つは「朗らかな声」という意味を持つヒュッレムという名だった。
 
そして連れて行かれた国、それはオスマン帝国の首都であるイスタンブルであった。
 
 
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マテウスとの別れ

イスタンブルにそびえ立つ城に入ったヒュッレムは誰に献上されるのか分からないままマテウスについて行った。
 
ここでのマテウスの名はイブラヒムであった。
 
イブラヒムが深くお辞儀をする主、それはオスマン帝国の皇帝であるスレイマン1世であった。
 
ヒュッレムの新しい主が皇帝陛下であることにヒュッレムは驚きを隠せずにいた。
 
しかし、それと同時にイブラヒムが何者なのかが気になったヒュッレムはスレイマンに尋ねたのだった。
 
皇帝であるスレイマンよりもイブラヒムに興味を示したヒュッレムをスレイマンは不思議がり、気に入ってしまった。
 
イブラヒムに連れられて後宮に向かったヒュッレムは個室を与えられるという異例の待遇を受けたのだった。
 
イブラヒムはヒュッレムと別れる前にシャフィークと呼ばれる付き人を送った。
 
イブラヒムが立ち去ろうとした瞬間、思わずヒュッレムはイブラヒムを引き留めてしまった。
 
そして、もう会えないのかと聞くと、陛下の居室まで立ち入る許可をもらっているためいずれか会えるだろうと言った。
 
イブラヒムはヒュッレムに自分が生き抜くことだけを考えろと伝えて去ったのだった。
 
部屋に案内され、そこにはすでにヒュッレムの荷物が置かれてあった。
 
そこにはイブラヒムにもらった金の鳥籠があった。
 
その鳥籠を眺めながら、ヒュッレムはこの後宮にいればイブラヒムに会える、それだけでいいと心が沈むのを感じながら眠りについた。
 

後宮の女性達

翌朝、お付き女官に連れられ浴場に行った。
 
そこには多くの妾達もいて、ヒュッレムは注目の的だった。
 
イブラヒムからの献上であることや初日から個室が与えられたことはすでに広まっており、ヒュッレムは噂になっていた。
 
妾達から声をかけられ、お茶会をすることになった。
 
 
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お茶会にて

お茶会で出された氷菓子を食べたヒュッレムは口の中に痛みを感じた。
 
氷菓子に石が入っており、それを口に入れたことが原因だった。
 
他の妾達の嫉妬によって行なわれたものだったのだ。
 
ヒュッレムは少し驚きはしたものの、その事実に怯えることはなかった。
 
むしろ、妾達を石をいれたとして言いつけようとしたまでであった。
 
その時奴隷として共に売られたエリザヴェータがお茶会の横を通った。
 
陛下の側室となっていたのだった。
 
そしてここでの名はヌール・ジャハーンであった。
 
ジャハーンは気が強く、側室であることを誇りに思っていた。
 
そのため、他の妾から良いように思われていなかった。
 
妾達は陛下の寵愛を受けるを望み励んでいた。
 
妾達とは対照にヒュッレムは望んでいなかった。
 
陛下のお召しがないことを祈っていた。
 
お茶会が終わり、部屋に戻ったヒュッレムは食事をした。
 
スープを飲もうとした瞬間シャフィークがその手を止めた。
 
スープの中に毒が盛り込まれていたのだった。
 
ここでようやくヒュッレムは後宮での恐ろしさを痛感したのだった。
 
氷菓子に石を入れることで後宮を知った気でいたのは甘かったのだ。
 
後宮は命をも狙われる場所なのだと分かった。
 
シャフィークが毒味をすると言いだした。
 
しかし、そのようなことをさせるとシャフィークが危険な目にあってしまう。
 
渋ったヒュッレムにシャフィークは一通の手紙を渡した。
 
それはイブラヒムからの手紙であった。
 
そこには後宮という場所は危険であり、何か起こった時はイブラヒムが助けになると書いてあった。
 
その手紙を胸に抱きしめて、イブラヒムのことを思い、涙を流したのだった。
 

母后との出会い

ヒュッレムは母后のサロンに招かれた。
 
母后とは陛下の母であり、このサロンに招かれることは陛下に召されるために必要な段階であった。
 
しかし、ヒュッレムはサロンに招かれることに喜びを感じなかった。
 
サロンには陛下の母であるハフサ・ハトゥンや第一夫人であるマヒデブラン、側室などがいた。
 
ハトゥンはイブラヒムのためにも陛下にお仕えしなさいと言った。
 
その言葉が気になり、サロンの後に女官に聞いてみた。
 
そこでヒュッレムは自身の行動がイブラヒムの評価に繋がるのだということを知らされる。
 
こんなつながりがあるとは知らなかったヒュッレムは陛下への関わり方に何か問題があれば、イブラヒムにも影響するのだと知った。
 
 
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イブラヒムとスレイマンの関係

イブラヒムはスレイマンの良き理解者であった。
 
スレイマンは妖艶な雰囲気をまといながら女達はかわいいと言った。
 
信頼を置いているのはイブラヒムだけであることを伝えた。
 
そして、イブラヒムに口づけした。
 
ヒュッレムを近いうちに召すと伝えながら。
 
イブラヒムは感謝を告げた。
 

イブラヒムの心の中

監督官がヒュッレムを訪れた。
 
そして今夜陛下がヒュッレムをお召しになることを伝えた。
 
ヒュッレムは急いで身を清めなければいけなかった。
 
全ては陛下をもてなすために。
 
女官達は張り切る一方でヒュッレムの気持ちは沈むばかりであった。
 
日は暮れて陛下が後宮へ訪れた。
 
そこにはイブラヒムもいた。
 
陛下はイブラヒムにヒュッレムは昔のお前に似ていると話し、ヒュッレムを陛下の寝床に召してもいいかと尋ねる。
 
イブラヒムは慌てて気に入ってくれたのなら光栄だと言った。
 
しかし、その言葉に反してヒュッレムのことを考えてしまったイブラヒム。
 
イブラヒムは全ては陛下のためにとヒュッレムを心の中から消した。
 

ヒュッレムと陛下の一夜

ヒュッレムは陛下の部屋へ向かうまでに考えていた。
 
どんどん自分の意思とは関係なく新しい扉が開かれる。
 
せめて自分の足で歩いて行こうと。
 
扉を選ぶ権利がなく、目の前にある扉を開けることしかできないのなら。
 
ヒュッレムは陛下の部屋の扉を開け、入っていく。
 
陛下はヒュッレムに詩を詠ってとお願いする。
 
イブラヒムからヒュッレムが吟詠が得意ということを知らされていたからだ。
 
ヒュッレムが夜にしか鳴かない世界で最も美しい声を出す鳥について詠う。
 
陛下はヒュッレムが他にどのような声を出すのか聞きたいとヒュッレムに優しく口づけをし、ヒュッレムを寝かせた。
 
二人は一夜を共にした。
 
しかし、ヒュッレムはイブラヒムがこの宮殿のどこかにいるかもしれないと気になってしまった。
 
それでもヒュッレムは陛下に抱かれる世界が自分の世界になるのだと気持ちを押し殺しながら陛下と時間を過ごした。
 

イブラヒムの真の目的

朝になり、陛下はヒュッレムに何が欲しいと尋ねる。
 
後宮の女性は陛下からの褒美が多い程良いとされていた。
 
多くの金貨や宝石を欲しがると考えていた陛下は書物が欲しいと言ったヒュッレムの願いを以外だと驚くも承知した。
 
後日届いたものは図書館の鍵であった。
 
女官たちや他の妾達には理解できなかったが、ヒュッレムはこの贈り物を大変気に入ったのだった。
 
それから毎晩陛下はその晩の伽にヒュッレムを所望した。
 
ヒュッレムは宮殿にイブラヒムがいることが気になりながらも、陛下の腕の中で寝るのが次第に心地よくなっていった。
 
陛下からヒュッレムに贈られる贈り物の量が多くなっていく。
 
周りの妾からも注目されるようになったが、ジャハーンだけは余裕な面持ちでヒュッレムを眺めていた。
 
というのも、ジャハーンは陛下の子供をお腹に宿していたのだった。
 
御子が産まれた場合、ジャハーンは夫人という地位に上がるということだ。
 
そんなジャハーンから手紙が届き、指定された場所へヒュッレムは向かった。
 
そこでジャハーンが連れ去られるところを目撃した。
 
助けにいこうとしたヒュッレムを止めた者がいた。
 
イブラヒムだった。
 
シャフィークが怪しく思い、イブラヒムを読んだのだった。
 
なぜジャハーンが連れて行かれたのか、ヒュッレムはイブラヒムに問いただした。
 
陛下の第一夫人、ギュルバハルが指示したことであった。
 
陛下の御子を懐妊したため、自分の子供に陛下の後継者となってもらえるように殺させていたのだ。
 
衝撃な事実を知らされたヒュッレムはイブラヒムから、本当の目的を知らされる。
 
イブラヒムは今後オスマン帝国が最高の帝国となるためには多くの御子から最高の陛下を選ぶことが必要だと考えていた。
 
ギュルバハルと戦えるほどの賢くて強くて、そして陛下の子供を産むことのできる女性をイブラヒムは探していた。
 
そのためにヒュッレムをイブラヒムは買ったのだった。
 
 
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夢の雫、黄金の鳥籠 1巻の感想

まだ交通も発達していない、自分の村以外を知る方法も知る必要もなかった時代。
 
そんな時代にヒュッレムは鳥になって飛び回りたい、自由に生きてみたいと願っていた。
 
そう願いながらヒュッレム自身この村で一生を過ごすことになるのだろうと諦めていた夢は、無残にも願ってもいない時に叶ってしまう。
 
突然世界が変わり、周りに助けてくれる人がいない環境で現れたイブラヒムのことをヒュッレムの目はどのように写したのか、想像するのはそう難しくない。
 
そして自分を救ってくれた人が奴隷として売りに出された時にヒュッレムを大金を払って買った。
 
この事実に夢をみてしまったヒュッレムは健気にもイブラヒムに認められようと必死に知識や教養を身につけるのだ。
 
また、ヒュッレムにとってイブラヒムはただの恩人ではないというところも「夢の雫、黄金の鳥籠」の醍醐味である。
 
ヒュッレムは元から自由になりたいと人一倍願っていた。
 
そんなヒュッレムに対して、イブラヒムは今のままで過ごしていても自由を手に入れられないと教えた。
 
しかし、自由になる方法はあることを教える。
 
「学べ。」
 
そう言ったイブラヒムにヒュッレムはどれほど希望を持ったことだろう。
 
現実を変えることができないが、自分を変えることによって自由になる方法はあると言ったのだった。
 
こんなかっこいい登場の仕方があるのだろうか。
 
女性差別や貧困などが今よりも激しく、問題視もされなかった時代だ。
 
生きづらい世の中で叶うはずのないヒュッレムの夢、その夢に向かって進む道をイブラヒムは作ってくれたのだ。
 
イブラヒムに対する気持ちが大きくなっていった頃、ヒュッレムは残酷なことをイブラヒムから告げられる。
 
イブラヒムの主にヒュッレムを献上するというのだ。
 
ヒュッレムはイブラヒムにそばに居させてほしいと懇願するが、この思いは届かず献上されてしまう。
 
それもそのはず、ヒュッレムが奴隷という身分であったのと同じようにイブラヒムも陛下にお仕えする奴隷であったのだった。
 
イブラヒムは陛下に献上する他に残された道はない。
 
ヒュッレムが後半に言っていた、自分で開く扉を選ぶ権利がないという言葉はイブラヒムにも通ずることだったのだ。
 
お互いを思い合う気持ちに反して二人の距離が段々と離れていってしまう。
 
陛下の言ったことは絶対で自分の意思や気持ちは二の次である時代であり、型にはめられた時代を生き抜くためだったのだろう。
 
それでもヒュッレムとイブラヒムのことを思うと、悲しく切ないと思ってしまう。
 
二人が今後どうなっていくのか、ヒュッレムとイブラヒムの歩む道に幸せはあるのか、追ってしまいたくなる作品であった。
 
 
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