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妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~ 2巻とは?

出版社:BBコミック
発売日:2019/12/23
作者 :橘 ちなつ

精神科の閉鎖病棟に再入院することになった千夏。果たして、病状は回復するのか、それとも――。実体験を元に描く驚愕と絶望のストーリー、待望の続編!!

 

妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~ 2巻のネタバレ

第6話 のネタバレ

死にたい

入院した後、千夏は人が変わったように叫び続けた。
 
死にたい、殺して。
 
何度も何度も千夏は叫び続けた。
 
そういうことを口にしちゃダメだと言う涼太だったが、千夏の状態は悪化を辿る一方だった。
 
身体の奥から湧き上がる焦燥感に苛まれ、1秒たりとも治まることのない両足の動きに精神は錯乱していく。
 
助けてほしい。
 
楽にしてほしい。
 
殺してほしい。
 
千夏はそんなことばかり考えていた。
 
涼太が帰った後も、涼太が去っていったドアを何度も叩いて涼太を呼び続ける。
 
けれど涼太はもちろん戻らなかったし、固く閉ざされたドアも開くことはなかった。
 
泣き叫び続ける千夏に声をかけたのは、看護師だった。
 
しかし看護師が口にした言葉は優しいものではなかった。
 
なんでこんなところに居なくちゃいけないの!?という千夏の言葉に、お前がこんなところにふさわしい人間だからだろ?と言って笑ったのだ。
 
その言葉が千夏の心に深く突き刺さった。
 

病名

千夏の元に医師が訪れ、鎮静剤が投与される。
 
千夏は医師に、脚の異常を訴えた。
 
勝手に足が動いて辛い、1度検査をしてもらえませんかと言う千夏に医師が告げたのは、脚の運動になると思えばいいじゃないですかという言葉だった。
 
その言葉を聞いた千夏はショックを受ける。
 
私の病名は何なのですか!?と尋ねる千夏。
 
すると医師は、「急性一過性精神病性障害」という難しい病名を口にした。
 
けれど、あなたの場合は病気云々ではなくあなた自身の捉え方に問題があるのではないかと指摘。
 
旦那さんに依存気味だし、精神的にも幼いところがある。
 
自分で病気を何とかしようとしていない。
 
あなた自身が考え方を改めない限り、ここから出ることは難しいでしょうねと言って医師は部屋を後にした。
 
残された千夏は勝手に震える脚に絶望を抱く。
 
──自分が考え方を改めたら眠れるようになって、叫びたくなる衝動も抑えられて、ここから解放される?
 
そう思った千夏は、夜の廊下を徘徊し続けた。
 
10回、50回、100回、200回…。
 
千夏は廊下をひたすら歩き続けた。
 
震える脚を誤魔化すように、恐怖で怯える心を誤魔化すように。
 
 
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第7話 のネタバレ

日課

今日も朝が来た。
 
朝を迎えた千夏には日課がある。
 
身体がいうことを聞かなくなる前に、NICUに入る時に必要だったエプロンを使って女子トイレで首を吊るのだ。
 
けれど体重のかけ方がよく分からなくてうまく首を絞めることが出来ない。
 
そしてそのうち脚がガクガクと動き出し、また身体がいうことを聞かなくなる。
 
そうなるともう首を吊ることなど出来なくなる。
 
そして今日も死ぬことを諦める。
 
そんな日々の繰り返しだった。
 

帰らなきゃ

精神病棟に入院している人たちは何人もいた。
 
自殺を図って運ばれてきた人や強迫性障害に悩む人。
 
千夏の周りにも色んな人がいた。
 
そんな中、千夏に声をかけてきたのは千夏よりも2カ月前に入院したというKさんだった。
 
年が近いということもあって話しやすく、2人はすぐに仲良くなった。
 
2人が廊下を歩いていると、病棟の奥にある個室から叫び声が聞こえてきた。
 
声の大きな男性がひたすら「おーい」と誰かを呼んでいる声と、年配の女性の「殺してよぉー!」という金切り声。
 
聞いただけで頭が狂いそうになる。
 
千夏は我慢できなくなり、思わず自分の病室へ駆け出した。
 
──自分のいるべき場所に帰らなきゃ。
 
そう思った千夏が勝手に退院の準備をしているところが、看護師に見つかってしまう。
 
退院なんて許可できない、と言われた千夏はとうとう暴れ出してしまう。
 
スタッフ総出で千夏を抑え込む看護師たち。
 
その騒ぎを聞きつけた医師も千夏の元に駆け付けた。
 
そして医師は千夏に、人間として扱ってほしいのなら自分のベッドで大人しくすることを覚えなさいと言ってのけたのだ。
 
千夏はいつの間にか笑い出していた。
 
おかしくなった人間には何を言ってもいいと思っているんでしょう?と言いながら笑い、そして涙で顔中を濡らした。
 
千夏が大声で笑うその様子を見た医師は溜息をつき、とうとうある決断を下した。
 

千夏に与えられた点滴

しばらくして涼太が千夏の元を訪れた。
 
千夏は珍しくぐっすり眠っていた。
 
眠れているようで良かったと胸を撫で下ろした涼太だったが、点滴されている薬の名前を見て驚愕する。
 
薬剤師をしている涼太にとって、その薬は千夏に使われるべき薬ではないと思ったからだった。
 
 
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第8話 のネタバレ

廃人状態

千夏がしていた点滴は、錯乱したり暴れたりして手が付けられなくなった患者に用いられるものだった。
 
強い鎮静作用があり、幻覚や妄想を抑えてくれる効果がある。
 
どんな薬でも効果が無かった千夏だったが、この薬を投与されてようやく落ち着きを取り戻した。
 
悪く言えば千夏の自我を奪い、廃人状態にする薬だった。
 
医師から薬のことと千夏の現状の説明を受けた涼太は、千夏の状態がそれほど悪化しているのかと呆然とする。
 
しかし、落ち込んではいられない。
 
フラフラと廊下を歩き回る千夏に、点滴が終わったら院内を散歩しようと言って笑いかける涼太。
 
千夏を売店に連れ出して、千夏がじっと見つめていたシールを買って渡した。
 
ところが千夏はぼーっとしたまま、特に言葉を口にすることもなかった。
 
そんな中でも常に脚はカクカクと動き続ける。
 
涼太はそんな千夏をNICUに連れて行った。
 

悪い予感

NICUに着いた途端、それまでぼんやりとしていた千夏の意識が突然叫びだした。
 
──悪い予感がする。
 
千夏の胸はうるさく鳴り響く。
 
そして千夏の目の前に翼が連れてこられた途端、千夏の中の何かが崩れた。
 
千夏もミルクあげてみるか?と涼太が言ったその時、千夏はこんな子知らない、可愛くもないと口にしてしまう。
 
もう帰ろう?ここは怖いよ…と言う千夏を見て、涼太は愕然とする。
 
産後のホルモンバランスの乱れのせいで一時的にこうなっているだけだ、と自分に言い聞かせる涼太。
 
結局千夏はその日、翼を抱くことなくNICUを後にした。
 

産むんじゃなかった

消灯時間が近付き、涼太は病院を後にする。
 
残された千夏の元に看護師が薬を持ってきた。
 
薬を飲もうとした千夏だったが、手の上に乗せられたはずの薬が見えない。
 
薬はどこに…?と尋ねる千夏に、看護師は寝ぼけてるんですか?と答える。
 
見えないながらも何とか飲もうとする千夏。
 
けれど見えないせいで、手のひらから薬を零してしまった。
 
すると看護師はいらだった様子でまたもらって来るから待っててくださいと言ってその場を離れた。
 
しかし、千夏の目にはその看護師の顔も見えない。
 
目をこすってみるが、自分の手すらよく見えない。
 
千夏は動揺した。
 
目まで見えなくなっちゃうの?とへたり込む千夏。
 
──全てはあの子を妊娠してからだ。
 
──あの子を出産してから恐怖と絶望しか感じることが出来ない。
 
千夏はとうとう、あんな子生むんじゃなかった…と思ってしまうのだった。
 
 
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第9話 のネタバレ

涼太の努力

8月中旬。
 
翼はようやくNICUを退院し、自宅に戻ることが出来た。
 
介護休暇という名目で休みを取ることが出来た涼太は、必死に翼の世話をする。
 
慣れない育児ながらも何とかこなし、成長していく翼の可愛い仕草に癒される涼太。
 
そんな慌ただしい日々の合間を縫って、涼太はなるべく毎日千夏に会いに行けるよう努力していた。
 
ところが千夏のいる病院までは高速を使っても片道1時間はかかる。
 
そのうち1日おきでしか通えないようになる。
 
睡眠時間もままならない涼太は負担を強いられるが、自分まで折れてしまってはいけないと何とか踏ん張っていた。
 

本心…?

薬の副作用が原因で視力が著しく低下していた千夏は、思い切って薬を中止することになった。
 
視力はだんだん回復してきたが、その代わりに薬で抑えていた部分が再び現れることとなる。
 
涼太が翼のベビーカーをどれにしようかと千夏に相談しても、千夏は興味なさそうにしてそれよりも散歩に行こうと言い出してしまった。
 
言われるままに散歩に連れ出す涼太だったが、そんな涼太の元に実母から連絡が入る。
 
それは、翼が熱を出してしまい病院に連れて行くという連絡だった。
 
涼太が千夏にそのことを話し、もう帰らないといけないと言ったとたんに千夏は豹変した。
 
まだ来たばっかりなのにどうしてもう帰るの?
 
翼のことはお義母さんに任せておけばいい、翼なんかどうでもいいじゃん!と叫ぶ千夏。
 
そんな千夏の様子を見た涼太は、今のは本心なの…?と千夏に問いかけた。
 
すると千夏はあの子は泥棒だ、私から涼太を盗ろうとしていると言い出す。
 
そして自分のことなんかどうでもいいんでしょ、こんな壊れた嫁なんか病院に入れていた方が楽だもんねと言ってしまう。
 
すると涼太は千夏を抱き締め、そんなわけないだろと言った。
 
俺が望んで千夏をここに預けているわけないと言う涼太の声は震えていた。
 
帰路に着いても、涼太の頭の中からは千夏のあの言葉が離れなかった。
 
けれど、自分まで潰れてしまったら回らなくなる。
 
涼太はどうにか自分を奮い立たせることで精いっぱいだった。
 

主治医の苦悩

一方その頃、千夏の主治医は様々な薬と向き合っていた。
 
これまで千夏に投与したどの薬も大した効果は見られない。
 
一体何の病気なのか。
 
どの薬なら千夏を救えるのか。
 
主治医は必死に考えていた。
 
 
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第10話 のネタバレ

退院へのきっかけ

入院する人がいれば、退院していく人もいる。
 
千夏は今日も退院する人を羨望の目で見送った。
 
すると仲のいいKさんが千夏にある方法を勧めた。
 
あの子は外泊成功してそのまま退院につなげることが出来た。
 
千夏も外泊してみたらどうか。
 
その言葉を聞いた千夏はさっそく涼太に相談してみることにした。
 

外泊許可

最近は夜も眠れていて、少しずつ落ち着きを取り戻している。
 
調子がよさそうだね、と言われることも増えてきた。
 
主人も外泊を了承してくれていると千夏が主治医に相談すると、主治医はご主人が許可しているのならとOKを出してくれた。
 
ところが本当は涼太は外泊には慎重な姿勢を見せていた。
 
それでも千夏が強引に外泊を迫ったのだ。
 
こうして千夏の外泊が週末に決まった。
 

久しぶりの外の空気

千夏は久しぶりに病院の外へ出ることが出来た。
 
夏の暑い空気が千夏を取り囲む。
 
車に乗り込むと、やはり千夏の目の前は歪んだ。
 
不安で胸がいっぱいになる千夏。
 
そんな千夏の様子に気付いた涼太は、今ならまだ引き返せるよ?と問いかけた。
 
しかし千夏はそれを振り切り、平気だと口にする。
 
涼太は無理そうだと思ったら病院に戻るからね?と約束させたうえで千夏を家へと連れ帰った。
 
──絶対に成功させるんだ。
 
千夏は心にそう固く決めていた。
 

外泊、そして退院

家にたどり着いた千夏を、千夏の両親が出迎えてくれた。
 
落ち着いた会話を交わす4人。
 
だいぶ元気そうだねと言って安心した様子を見せた両親の笑顔に、千夏もホッとしていた。
 
ところがそこに翼を連れた義母が訪れた時、空気は一変した。
 
翼はお腹を空かせてぎゃあぎゃあと泣いている。
 
それを見た千夏の身体は急にこわばった。
 
けれど、今は涼太が見ている。
 
必死に頑張ろうとする千夏は自分から翼に手を伸ばし、翼を抱っこしてミルクをあげてみた。
 
ところが、千夏は翼のことをちっとも可愛いとは思えなかった。
 
何で周囲の大人たちがこの子を可愛いと思えるのか、不思議で仕方なかった。
 
それでも、あの病院に戻らなくて済むために千夏は必死に耐えた。
 
大丈夫になった自分を必死に演じて「もう千夏は大丈夫だ」と認めさせ、翼の側にいたいと言う嘘をついてまで病院に戻ることを拒んだ。
 
そして9月2日、千夏は精神科閉鎖病棟を退院する。
 
それは治りきったとは全く言えない状態での強引な退院だった。
 
 
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妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~ 2巻の感想

死にたいと口にし続け、正常な判断を下せないまま病室で生きるしかない壮絶な千夏の様子を見て、こちらまで辛くなってしまいました…。
 
薬も上手く効かず、いつになったら治るのかも分からない千夏の不安は余程のものだったでしょう。
 
けれど千夏自身はもちろん、看護師にも医師にも解決方法が見えていませんでした。
 
原因が分かればもっと楽になるのでしょうが…
 
そして千夏は自分や周囲を欺いてまで強引に退院してしまいます。
 
治っていない千夏が退院して、一体どうなってしまうのか…
 
次巻からも目が離せません!
 
 
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