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外面が良いにも程がある。 とは?

出版社:小学館
発売日:2014/12/10
作者 :尾崎衣良

世の中みんな、外面第一でしょ?テキトーに優しくしとけば、カワイイ子とヤれてハッピーだし。と割り切って合コン&テキトー生活を続ける瀬高♂25歳。
しかしとある合コンで出会ったド地味女・吉野に、何故かどんどん惹かれていく瀬高。そしてその先にあった、彼女の予想外すぎる素顔とは…!?
ただの恋愛漫画とはひと味違う。必ず最後に予想を裏切る、尾崎衣良の真骨頂!フツーの少女漫画じゃもうものたりないオトナな貴方に、オススメです。

 

外面が良いにも程がある。のネタバレ

外面が良いにも程がある。のネタバレ

20点女との出会い

今どきのカフェバーの中、男4人女4人がそれぞれ自己紹介をする。
 
女性たちが順に自分の名前を口にしていく中、瀬高(せだか)は思っていた。
 
50点…45点、70点。
 
そして最後の女は、20点!
 
みんなすごく可愛いね、と爽やかな笑顔を向けながら心の中では採点する。
 
人は誰だって、裏の顔を持っているものだ。
 
しかしそういう裏の顔は隠した方が生きやすいため、みんなうまく隠している。
 
瀬高もそのタイプの人間であり、それを悪いことだとは思わなかった。
 
誰だってよい思いをしたいものなのだ。
 
今回の所謂合コンは、同じビルに入っている会社同士がメンバーだ。
 
瀬高が、先ほどの70点…マミとたまたま知り合いだったため実現した。
 
たまたまというのはもちろん嘘で、マミは瀬高の『元カノ』である。
 
いつも通りの表の顔で、気を配る瀬高。
 
メニューが見やすいようにしたり、お酒がない子には声をかけたり。
 
そんなことをしていれば、45点女はすぐに女の顔をみせた。
 
はえーよ45点女、と瀬高は心の中で悪態をつく。
 
顔は爽やかな笑顔を張り付けたまま。
 
今日はハズレだなと瀬高は思った。
 
自分よりレベルの高い女を女は連れてこないというが、本当だと思った。
 
マミが男に愛嬌を振りまくのをみながら、瀬高は怖い女だと冷や汗をかく。
 
私のチャンスを潰したら許さないから!とこちらを睨んでいたなんて、嘘のような変わりっぷりだ。
 
しかし実際、女だってそういうものだと思うのだ。
 
男のためならどれだけでも媚びるものだと、瀬高は感じている。
 
そう思った瞬間、20点女と目が合った。
 
眼中になかったために、目が合ってかなり驚いてしまう。
 
そもそも合コンだというのに、20点女はやる気なんて微塵も感じさせない恰好をしている。
 
他の女性たちが気合を入れた可愛らしい恰好をしているのに、20点女はロングスカート。
 
やはりこの場では浮いている。
 
そんなことを思いながら観察をしていると、20点女の仕草に目が行く。
 
食べ方が、とてもキレイだと思った。
 
それに気を取られてしまっていたのか、同僚から思わぬツッコミを受けてしまう。
 
「何メガネちゃん見つめちゃってんの!?」
 
その指摘に驚き見つめてはいないというものの、周りはざわめく。
 
しかしそこで声を上げたのはマミだった。
 
吉野(よしの)さんに手をだしたらダメですよ、と20点女…吉野に寄り添うマミ。
 
吉野さんは純情なんですからねっと、吉野をオオカミから守ると宣言する。
 
その姿に、男たちはマミはしっかりものだと好感を得たようだ。
 
マミはちゃっかりとそんなことないです~と言いながら、自分のドジなエピソードを話出す。
 
そんなエピソードも、マミの可愛さを引き立てたようだった。
 
笑い声で盛り上がる中、吉野がスッと立ち上がった。
 
帰りますね、と鞄を持ちお金を机に置く。
 
突然帰ると言い出したことで、みんなポカンとしている。
 
吉野が店から出ていくと、瀬高が拒否したせいだと言われてしまう。
 
俺のせいかよ!?と思いながらも、仕方なく瀬高は吉野のことを追いかけた。
 
外に出ればすぐに吉野に追いついた。
 
声をかけたもものの、何て言っていいのか焦る。
 
吉野も不思議なのか、何か?と様子を伺っているようだ。
 
瀬高は自分のせいで居心地悪い思いをさせたと謝罪をした。
 
吉野は少し黙った後、ぽつぽつと話し出した。
 
今日はマミに、合コンをするからぜひ来てほしいといわれたこと。
 
それなのに人を『純情』と決めつけて手を出すなと言ったマミ。
 
「バカにしてますよね」
 
そう笑い背を向けて歩き出す吉野に、瀬高は思わず声をかけていた。
 
そんなことはないと、手を引いた。
 
そして「俺吉野さん狙いだし…」と口走る。
 
ん?と自分で驚く瀬高。
 
吉野も同じように「…は?」と真顔だった。
 

予想外のデート

今瀬高は、吉野と向かい合って食事をしていた。
 
それは昨日の吉野さん狙い発言の後、デートに誘ってしまったからだ。
 
瀬高は自分の発言に、若干引いてしまっていた。
 
いくら外面がいいとはいえ、程があるだろうと思った。
 
なんでこんなことに…もはや病気である。
 
すると吉野が口を開き、今日誘ったことに丁寧なお礼を言ってきた。
 
いえいえ!と手を振りながら、吉野を見る。
 
やはり今日も昨日と同じく地味な彼女。
 
一応デートなのだから、少しくらい垢ぬけた格好をしてもいいのにと思う。
 
どうしてこうなったと思うものの、目の前で食事をする吉野の仕草はキレイだ。
 
仕草だけは…と思いながらじっと見つめる瀬高。
 
さすがに気づいたようで、吉野は不思議そうに声をかける。
 
この間も思ったけど…と白状する。
 
食べ方がキレイだよね、手つきかな?と思ったことを口にする。
 
手もそうだ、おしゃれをしているわけではないのに細長くてとてもキレイだった。
 
本当のことだし、ととにかく褒めることにする。
 
他に褒めるとこもないのだ。
 
すると予想外に、吉野の顔が赤くそまる。
 
恥ずかしそうにお礼をいう吉野に、少し罪悪感を覚える瀬高。
 
そんなに素直に受け取られてしまうと、焦ってしまう。
 
そして吉野は、誤解していましたと話し出す。
 
瀬高がモテそうなタイプのため、自分のようなタイプのことをバカにしている人かと思っていたのだと。
 
それでも昨日、自分のせいでもないのに謝るために追いかけて来てくれた瀬高。
 
「いい人なんですね」と吉野は笑った。
 
瀬高はたじろいだ…何言ってるんだと思った。
 
自分は超がつくほど外面人間なのだ。
 
恋愛だって、その時が楽しければいいと思っているくらいだ。
 
そんな男に、コロッと騙されすぎだ。
 
食事から出る時に、必死で代金を出そうとする吉野。
 
奢られ慣れていないことが、よくわかった。
 
そんな吉野に、今度缶コーヒーでも奢ってよと笑顔を向ける瀬高。
 
そうすれば吉野は、安心したように笑顔を返した。
 
ごちそうさまでした、とお礼を言われる。
 
…アリかもしれない。
 
瀬川はそんなことを思ったのだった。
 

今までにないタイプ

送りオオカミにならずに帰る瀬川。
 
今までにないタイプではあるが、こういうピュアな恋愛もいいかもしれないと感じ始めていた。
 
取り繕う恋愛の駆け引きにも、疲れてきていたのだ。
 
仕事の合間、メールをしてみようと思い立つ瀬川。
 
仕事終わりに食事へと誘ってみる。
 
返信は意外とすぐに帰ってきた。
 
しかし返事は…残業でいけません、とのこと。
 
仕方ないかと思いながらも、また後日メールで誘ってみる。
 
返ってきたのは、今日も残業でいけません。
 
そのまた後日の返事も『残業』だというのだ。
 
さすがに残業多すぎだろう!と思う瀬高。
 
もしかして避けられているのだろうか、若干不安になりつつ電話をかけてみる。
 
今どこにいるのかと聞いてみれば、もちろん会社との回答。
 
残業をしているのだから、当たり前だ。
 
少しくらいなら待つけど…と終わる時間を聞いてみれば、吉野は22時を過ぎるからいい直ぐに電話は切られてしまった。
 
プープーという虚しい電子音を聞きながら瀬高は思った。
 
もしかして、自分は振られたのだろうか?
 
すると後ろから、間延びした声がかかって振り返った。
 
声をかけてきたマミは、会社帰りとは思えない華やかな恰好をしている。
 
ヒマならご飯に行かないかと言われ、そのまま食事に向かう。
 
マミと向き合って食事をするもの、正直瀬高はそれどころじゃなかった。
 
心臓が変な音を立てて動いている。
 
何これ、なんなのコレ。
 
瀬高は何故かとてもショックを受けていたのだ。
 
自分で自分のことを分析してみる。
 
瀬高は子どもに嫌われるとへこむアレと似たような感覚だろうかと思った。
 
話をしていてもうわの空な瀬高に、マミは声をかける。
 
今日は彼とデートのはずがドタキャンされたのだというマミ。
 
そして「も~さみし~」と胸を寄せながら、瀬高を見つめる。
 
落ち込みながらも、しっかりとその胸を凝視する瀬高。
 
自分はどうせダメな男ですよ、と開き直ってくる。
 
直ぐ楽なほうへ流されるのだ…瀬高はマミに優しい言葉をかけた。
 
楽しむためならいくらでも愛想を振りまくのだ。
 
薄っぺらい人間なのだと、自分で思った。
 
その時ふと思った瀬高は、マミに聞いてみる。
 
マミは吉野と同じ部署のはずなのだ…マミはいつも定時であがれるのか?
 
するとマミは、えへへ…と笑いながら説明した。
 
マミが間に合わなかった分の仕事を、吉野にお願いしているというのだ。
 
残業を彼女にさせているのか?驚く瀬高に、マミはデートの時だけだと笑う。
 
しかしマミのデートは週5回…毎日なのだ。
 
マミは悪びれもせずに、吉野だったら会社終わりに予定もなさそうだという。
 
もちろんお礼のジュースも奢っていると話すマミ。
 
なんだよそれ!と思わず声を荒げてしまう瀬高。
 
デートの度に残業を押し付けるなんて、ひどくないか?そう声を大にしてマミに伝える。
 
しかしマミは、瀬高が怒っている意味が分からないようだ。
 
瀬高だって恩恵を受けていたじゃないかというのだ。
 
そう、マミと付き合っていた時…瀬高も会社の後にデートをしていたのだから。
 

最悪だ

瀬高はマミと別れ、吉野に改めてメールをした。
 
仕事中にごめん、外に出てこれないか?と。
 
吉野は驚いたのか、急いででてきてくれた。
 
どうしたんですか?と不思議そうに声をかける吉野。
 
瀬高はその姿を見た瞬間、ごめん!と頭を下げた。
 
謝られる意味が分からない吉野は、戸惑っているようだ。
 
そして瀬高は、残業を手伝うからと一緒に会社に入ろうと急いだ。
 
しかしそんな瀬高を吉野は急いで止める。
 
社外の人にそんなことをさせられるわけがないのだ。
 
瀬高は少し落ち着いて、待っていると伝えた。
 
いつもと同じようにまだ時間がかかると拒否しようとする吉野だが、瀬高は終わるまで待っていると強く伝えた。
 
ベンチに腰掛けながら、瀬高は苛立っていた。
 
最悪だと思った。
 
その時が楽しければいいと思って、表面だけで生きてきた。
 
しかしそのツケが、吉野に向かっていたのだ。
 
今だって『待ってる』と伝えたのはいいが、こんなのは自分の罪悪感を消したいだけにすぎないと思った。
 
少しでもよく思われたいだけなのだ。
 
あんなにピュアな子に対して…恥ずかしい。
 
瀬高は頭を抱えたのだった。
 
その時、吉野が小走りで会社から出てきた。
 
遅くなってすみませんと申し訳なさそうにする吉野。
 
そんな吉野に、瀬高は仕事をマミに押し付けられていたことをきいたと話した。
 
そんな残業を引き受けなくていいと伝えるが、マミは急用があるらしいという吉野。
 
もう情けなくて、瀬高はどうしていいかわからなくなった。
 
すると吉野が思い出したように、コーヒーを差し出した。
 
近所のコンビニのコーヒーだというそれは、とても美味しく会社の冷蔵庫に置いていたのだそうだ。
 
そして「この前コーヒーを奢るって約束しましたでしょ?」と笑う吉野。
 
もうどうしようもなくて、瀬高は吉野を抱きしめた。
 
なんでこんなにいい子なんだよと、吉野の頭に顔をうずめる。
 
胸の中で吉野は、瀬高の身体が冷たくなっていると呟く。
 
そして、瀬高の頬に手をあててキスをした。
 
…ウチに来ます?そう囁かれて、断る理由などなかった。
 

純情ないい子

吉野のアパートで、またキスをする。
 
そしてまた残業のことを謝った。
 
きっと自分のような人間のせいで、嫌な思いをたくさんしてきたのだろうと瀬川は思った。
 
前の合コンの時に、みんながキレイなネイルをしていたことを思い出す吉野。
 
吉野は理工学系の出身のため、実験ばかりしていたらしい。
 
だから会社に入ってとても驚いたのだという。
 
自分とは違う、鑑賞されるためだけにあるような手だと思った。
 
そのため瀬高が吉野の手を褒めた時、とても嬉しかったのだ。
 
ありがとう…そう言われ、瀬高は吉野とベッドに倒れ込んだ。
 
彼女にそう言ってもらえるなら、どんな良い人間にもなれる気がした。
 
カーテンから光が漏れて、朝になったことに気がつく。
 
会社…とぼやきながら目を覚ますと、横にいる吉野もむくっと起き上がる。
 
そして瀬高と吉野の目があった。
 
瞬間、完全に思考が停止する瀬高。
 
メガネを取って、束ねていた髪もほどかれた吉野。
 
信じられないくらいの美女がそこにいたのだ。
 
「…まんが!!?」と思わず瀬高は叫ぶ。
 
メガネを付けた子がメガネを取ったら美女なんて、マンガの世界だと思った。
 
もはや、逆外面である。
 
変な人ですね、と笑う吉野を見ながら瀬高は思った。
 
これは騙されたのだろうか、こんなのはアリなのだろうか。
 
そしてちゃっかり、朝食もごちそうなる瀬高。
 
未だポカンとしている瀬高に、吉野は残業の話をし出す。
 
瀬高が心配するようなことは何もないというのだ。
 
私も楽しんでやっているという吉野のことを、どこまでいい子なんだと思った瞬間さらなる衝撃を受けた。
 
実はマミの仕事の分に、フォルダを開くと一時間後に消去するプログラムを入れてあるのだというのだ。
 
そのために、次の日にマミが仕事を始めると突然データが消える現象が起こる。
 
しかしもちろんその分のデータをコピーして持っている吉野。
 
だからマミは毎回怒られる。
 
そしてマミの『ミス』をフォローするという形で、吉野は毎回評価されているのだ。
 
元々吉野がした仕事なのだから当然だという吉野。
 
それを聞きながら、瀬高は変な汗が流れるのを感じていた。
 
マミは自分のミスでデータが消えたと思っている。
 
それで怒られた腹いせに、また吉野に残業を頼む。
 
そしてまたデータが消える…すべて吉野が仕組んでいるとも知らずに。
 
吉野はキレイな笑顔で笑いながら言うのだった。
 
「あの人おバカなふりしてホントにバカなんですかね?」
 
頭の中がショートしそうな瀬高。
 
待って…と思いながら頭を動かす。
 
この子は黒い…黒いのか!?と。
 
停止した瀬高に吉野は声をかける。
 
そして思い出したように、瀬高は吉野に聞いてみる。
 
合コンの時にマミが言っていたセリフ。
 
吉野さんは純情なんだから…これは実際どうなのか。
 
そう問いかければ、吉野は頬を染めながらその通りだと肯定する。
 
25にもなって恥ずかしいという吉野を見つめ、胸を撃ち抜かれる瀬高。
 
そして思った、大丈夫だと。
 
この子はやっぱり純情でいい子なのだと。
 
『ウチに来ます?』
 
そんな言葉が瀬高の中でフラッシュバックする。
 
初めての女が、そんなこと言えるだろうか。
 
別に初めてじゃなくてもよいわけなのだけど…瀬高はパニックを起こす。
 
こんな美人が今までモテなかったなんてことがあるだろうか。
 
そもそも何で、美人なのに隠しているのだろうか。
 
しかし、どうかしたのかと瀬高を見る吉野はどうしようもなく可愛くて。
 
瀬高は考えることを放棄するのだった。
 
もう顔は緩み、デレデレしてしまう瀬高。
 
しかしいつか、化けの皮をはがしてやると…密かに決意するのだった。
 
 
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業務上偽装恋愛 のネタバレ

可愛げのある女

仕事の出来る女よりも、ちょっとドジで可愛げのある女。
 
男と言うものは、そういう女の方が好きなものだ。
 
玉名栞(たまなしおり)は、そう思っていた。
 
お茶を持っていけば、男性社員は嬉しそうに笑う。
 
他の女性社員にも見習ってもらいたい!なんていう上司に、謙遜を返す。
 
中途採用で入ったばかりだから、これくらいしかお役に立てない…と笑顔を返した。
 
ちなみに今出したのは、栞特性のブレンド茶である。
 
そんな栞を、他の男性社員も見つめる。
 
栞の笑顔に癒されているようだ。
 
その時、ある男性に声をかけられた。
 
突然声をかけられ、きょとんとしつつ返事をする栞。
 
すると目の前の男性は、君こそ僕の求めていたものだと真っすぐ栞を見つめている。
 
周りの社員たちも、突然の出来事にざわつきながら様子を見ている。
 
どうしたのかと栞が効くと、男性はここしばらく栞の仕事ぶりを見ていたのだといった。
 
栞の決して出しゃばらないが、しっかり仕事をする姿。
 
そして男性は、自分は女性に一歩後ろからついてきてほしいタイプだと語った。
 
栞のことを、自分の理想だという男性。
 
「僕と結婚を前提にお付き合いしてください」
 
そうみんなの前で、突然告白したのだった。
 
これはつい半年前の出来事だった。
 
突然告白をしてきたこの男性は、長洲英明(ながすひであき)。
 
なんとこの会社の、御曹司だった。
 
栞が今の会社に転職して7か月。
 
それまでは勉強と仕事だけをしてきた人生。
 
控えめの可愛げのあるOLを演じ続けてきた栞…とうとう大物をゲットしたのである。
 
そう栞は口元をぬぐい、精力絶倫ドリンクを飲みほした。
 
やはり男は出来る女よりも控えめな女が好きなのだ…栞が悟った瞬間だった。
 

逃すわけにはいかない

お昼休憩になり、みんなランチに出かけていく。
 
玉名さんお昼は?と声をかけてもらうも、まだ仕事が終わっていないと断る栞。
 
そしてみんながランチに出かけたあと、栞は超高速でパソコンをたたき出した。
 
お前らの仕事…ミス多いんだよッ!
 
心の中で悪態をつきまくり、修正を急ぐ栞。
 
そしてみんなが戻った途端、またいつもの笑顔。
 
これも栞の地道な努力なのだ。
 
この会社に入ると決めたとき、栞は素の自分を出すことをやめたのだ。
 
素の自分でいても、男は寄ってこない。
 
明後日の納期分まで終わってしまった栞は、先輩に手伝いはないかと訊ねてみる。
 
先輩女性社員は、「あなたにはまだ任せられるような仕事じゃないわよ」と言い放った。
 
しかし実際は、みんなやってるただのデータ整理なのだ。
 
仕方ないと思いつつ、お先に失礼しますと挨拶をする栞。
 
そんな栞に女性社員からは、陰口が飛ぶ。
 
大した仕事もしていないくせに玉の輿ですか。
 
毎日残業頑張ってる私たちはなんなの。
 
女性社員たちは理不尽だと盛り上がる。
 
そのままトイレに向かう栞は、個室に入るなり思った。
 
仕事を時間内で終わらせられない奴が、残業して残業代稼ぐほうが理不尽だと。
 
トイレからでたらいつもの笑顔。
 
するとちょうど良いタイミングで、長洲が現れた。
 
これから食事にいかないかと誘われた栞は、可愛く微笑んで見せた。
 
心の中では「逃すものか!」と叫びながら。
 

お食事デート

笑顔でビールを注げば、長洲はしばらく硬直していた。
 
どうしたのかと名前を呼べば、長洲は「それいい…!!」と感動したようだ。
 
そして長洲は語り出した。
 
最近は女性社員にお酌をしてもらうだけで、セクハラと言われる世の中だ。
 
しかし長洲の理想は、奥さんに着物で出迎えてもらうことらしい。
 
そして定番の、お食事にします?お風呂にします?というやり取りがしたいらしい。
 
その前に君をいただこう…なんていいたいという長洲。
 
栞は「長洲さんってば~」と笑いながらも、この人はアホなのだろうかと思った。
 
随分古風な考えを持っているのだと思う栞。
 
長洲が会社の二代目ということがもはや眉唾ものだ。
 
しかし顔も良く、女性社員からの人気も高いのだ。
 
いくらでもついていってやろうと決意する栞なのだった。
 
そんなことを思っていると、長洲が質問をしてきた。
 
栞の前に勤めていたところは、結構大きい会社だったのだ。
 
なぜ辞めてこちらに来たのかというのだ。
 
謎の逃げられない圧力を感じながらも、栞は話してもいいかと思った。
 
早い話が、失恋をしたんだと栞は話した。
 
彼は同じプロジェクトのリーダーをしていた。
 
だから少しでも力になりたくて、必死で仕事をがんばったのだ。
 
この人のためになるなら…とどんな無理難題もやってみせた。
 
しかし結果は、仕事が出来るからって出しゃばりすぎだとか言われてしまった。
 
出来る女気取っていたいとも言われた。
 
そんなことを思い出してしまい、少し無言になってしまう栞。
 
黙り込んだ栞に流すは声をかける。
 
ハッとした栞は、つまり好きだった人が同じ会社の別の人と結婚することになったのだと笑って見せた。
 
栞は一人でも生きていけそうだと、どこかで聞いたようなセリフのオマケつきだ。
 
その相手は、ごく普通の可愛い女の子だった。
 
彼はミスをフォローしているうちに…ということらしい。
 
それでもそんな理由で仕事を辞めてしまった栞。
 
人生舐めすぎですよね、と自虐して笑う。
 
しかし長洲を見たとたん、栞はギョッとした。
 
なんと長洲が、号泣しているのだ。
 
焦って長洲に声をかければ、長洲は「それだけ辛かったんだろう」と涙をボロボロこぼした。
 
あまりに泣いている長洲をなぐさめながら、なんて私が慰めているんだと思う栞。
 
すると長洲は栞の手を掴んで、僕がついているから大丈夫だと話した。
 
これからは僕と一緒に未来を築いていこうと、またプロポーズのようなセリフを吐く。
 
栞のような可憐な女性が一人で生きていけるわけないという長洲。
 
前の男のことを見る目がないという長洲に、栞は心の中でお前だよとツッコミを入れるのだった。
 
それでも、栞は抱きしめられながら思った。
 
学生のろから勉強ばかりしていた。
 
就職してからは仕事に没頭してきた。
 
こんな時代だから女一人でも自立していけるようにと思ったからだ。
 
だけど、栞は一人でも生きていけそうだと言われたあの時。
 
別に一人でいきたいわけじゃないと思った。
 
いつまでも自分のためだけに、頑張れないと思ったのだ。
 
そして栞は、長洲の胸に顔をうずめた。
 

トラブル発生

会社で雑用もこなしつつ、栞は長洲のことを考えていた。
 
長洲は変な人ではあるが、悪い人ではないのだと思った。
 
すると「玉名ちゃーん、お茶ないんだけど…」と男性社員から声がかかった。
 
はーいと返事をしながらも、お茶がないから何なんだよと思う栞。
 
せめてお茶がなんなのか、用件を述べるべきだと思うのだ。
 
そして、特製のブレンド茶をいれる栞。
 
内訳は、お茶っ葉と…消しカスである。
 
可憐な女性…僕と2人で明るい未来を…そんな長洲の言葉を思い出す。
 
お茶を出しながら栞は、コレはいつまで持つだろうかと思ったのだった。
 
彼の前でも自分はずっと、この自分でいるのだろうか。
 
その時、ある男性社員が女性社員の佐藤に声をかけた。
 
今日の納期分は終わったのか?そう聞かれ、佐藤は今日の資料は少なかったから終わったと話す。
 
男性社員は段ボールの下の資料を指差して、それは終わった分なのかと聞く。
 
段ボールの下には、資料がどっさりと積まれている。
 
それを見た瞬間、男性社員の大声が響いた。
 
必死で謝る佐藤。
 
なんと全てやっていない資料だったのだ。
 
難しいものがあるから後にしようと横に避けておいたまま、忘れてしまっていたという佐藤。
 
慌てて別の社員も大量の資料に目を通すが、なんと3日前にチェックが済んでいないといけないものまで混ざっている。
 
さらに仏文の資料まであり、全てを今日中に目を通さないといけないのかとみんな頭を抱えた。
 
栞は大丈夫ですかと声をかけてみるが、みんな栞には目もくれず話している。
 
先方に納期を延ばせないか打診できないかと言う社員に、さすがに栞は口をはさんだ。
 
それをしてしまっては、会社の信用にかかわってしまうのだ。
 
だから今からみんなで協力してやればいいのではと話す栞。
 
しかし女性社員は、余計な口挟まないでと栞を睨みつける。
 
すると佐藤は栞を見て、長洲に頼んでもらったらどうだと閃いたとばかりに言った。
 
栞が言えば、長洲も引き受けてくれるのではないかというのだ。
 
栞は驚いた…それは長洲に泥を被れということだろうか。
 
そんなことは言えませんという栞に、じゃあどうすればいいのかと逆切れする女性社員。
 
そして、「普段大した仕事をしていないんだからこんな時くらい役に立ちなさいよ」と言うのだ。
 
…栞は、キレた。
 
わかりました、と静かに返事をした栞。
 
仏文は全て私に回してくださいと話す。
 
女性社員はそんなことを言いだした栞に、さらに食いつく。
 
あなたにそんなこと出来るわけない。
 
翻訳ソフトにかけてという女性に栞は言い放つ。
 
時間の無駄です、読んだ方が早い…と。
 
栞はいつも綺麗に下ろしていた髪を、ゴムで一つ結びにする。
 
そして栞は、一気に仕切り出す。
 
社員に仕事を割り振り、指示を出す。
 
しかし入ったばかりの栞が何で仕切るのかと不満の声が漏れる。
 
もういいから誰か部長を呼んできてと声がした瞬間、栞は大きく声を上げた。
 
「うるさい!!!」
 
しょうもない御託を並べているヒマがあったら仕事しな!!!
 
そう叫んだ瞬間、ちょうど入ってきた長洲と目が合った。
 
驚いている様子の長洲。
 
しかし栞は仕事に集中する。
 
超特急で仕事をこなしながらも、栞は思った。
 
終わった…と。
 
そして周りの社員たちは、栞の仕事の早さに驚愕したのだった。
 

20点女との出会い

栞は階段にしゃがみ込み、落ち込んでいた。
 
仕事は無事に済んだ…それはよかった。
 
しかし明らかにみんなは引いていたのだ。
 
そしてあの剣幕を、長洲に見られてしまった。
 
なんて言い訳したらいいのか、もうわからなかった。
 
その時、近くから長洲を呼ぶ声が聞こえた。
 
先ほどミスをした佐藤と、栞に突っかかってきていた女性社員だった。
 
二人は先ほどの栞のことを話し出した。
 
あの人ずっと猫被ってたんですね!と長洲に詰め寄る。
 
長洲も、あの豹変ぶりは僕もビックリしたと笑う。
 
胸がズキンと痛む栞。
 
女性社員二人は、あの人は長洲の理想とは違うと言い寄る。
 
長洲は控えめで男性を立ててくれる女性が好きだといっていたから、と。
 
それからもどんどん長洲に捲し立てる女性たち。
 
長洲は騙されている。
 
今回は助かったけど、あれじゃあ上司の面目は丸つぶれだ。
 
そんなことを言い続ける二人に、長洲は笑顔で話しかけた。
 
随分怒ってるけどどうしたの?そう長洲に聞かれ、佐藤は声をあげた。
 
長洲のことがずっと好きだったのだと、恥ずかしそうにいう佐藤。
 
長洲はどこか軽い様子で、そうなの?と返す。
 
そして佐藤は、あきらめようと思ったけど長洲が騙されてるのにあきらめるのは悔しいという。
 
長洲は、へーと返事をしながら佐藤に言う。
 
「君は僕の後ろをついてきてくれるの?」
 
そう言われた佐藤は、もちろんだと頬を染める。
 
好きな人のためならついていくというのだ。
 
すごいね、僕の理想そのもの!と声を上げた長洲。
 
栞はその言葉に、固まった。
 
長洲のことばに、佐藤は期待が高まり「じゃあ…」と口元を押さえる。
 
栞が逃げるようにこの場を離れようとした瞬間、長洲の冷たい声が響く。
 
「ま、ムリだと思うけど」その言葉に固まる佐藤たち。
 
そう言った長洲はいつもの笑顔とは違う、どこか冷ややかな笑みを浮かべている。
 
そして佐藤に向き合って言ったのだ。
 
バカな子には無理だ、すぐはぐれて君はついてこれない。
 
いざというときには、一人で別ルートでも追い付けるような賢い子。
 
長洲が好きなのは、自力で自分の後ろを突いてくることが出来る子なのだ。
 
ドジだけど可愛い私を守って?なんて思ったのかと笑う長洲。
 
そして長洲は、半年くらいから納品のミスが格段に減ったのだと話し出す。
 
それは栞が密かにフォローしていたからなのだ…それに長洲は気づいていた。
 
派手な仕事じゃないから、みんな気がつかなかっただろう。
 
そして佐藤たちは、楽して玉の輿だとでも思っていたのだろう。
 
そう語る長洲は、突然栞の名前を呼んだ。
 
なんで…と驚く栞に、長洲は言葉を続けた。
 
言ったじゃないか、男性を立ててしっかり仕事をこなす控えめな君が好きだと。
 
そして、毒を吐く君もねと笑う。
 
長洲は栞を真っすぐみて礼を口にした。
 
君のお陰で助かった。
 
長洲に本性がバレたとわかったときも、言い訳するよりも先に仕事を選んだ。
 
栞はそのままでいいのだと長洲は伝える。
 
それでも今回のようなやっかみや中傷もあるだろう。
 
だから矢面には自分が立つから、盾にしてくれていい。
 
そう言った長洲はもう一度栞に伝えた。
 
「僕の後ろをついてきてくれますか?」
 
栞はパニックだった。
 
いつから知っていたのか…全部知ってて近づいてきたのか。
 
長洲の本当の顔はどれなのか。
 
もしかして騙されていたのは、自分だったのだろうか。
 
何も分からなかった。
 
それでも…今までかけてくれた長洲の言葉が、全て心にストンと響いた。
 
だから栞は「はい!」という言葉以外見つからないと思った。
 
長洲はそんな栞の頭を、嬉しそうに撫でるのだった。
 
 
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いたい にがい 少しあまい のネタバレ

元カレの結婚式

純白の白いドレスに包まれた女性と、タキシードをきっちり着こなした男性。
 
新郎新婦はどちらも幸せそうに、祝福の言葉にお礼を言っている。
 
これから二次会が行われるようだが、実鈴(みすず)はその誘いを断った。
 
そしてその足で実鈴は、行き慣れたバーへ辿り着いた。
 
実鈴が入ってくるのを見ると、店員は久しぶりと声をかける。
 
最近彼氏と来ないけれどどうしたのかと何気なく聞いたのだが、実鈴の表情から愚問だったと悟った。
 
沈んだ表情を見せた実鈴だが、その彼氏の結婚式に参加してきたとシレっと言ってみせる。
 
それを聞いた店員は、驚きの声をあげたのだった。
 
そう、今日参加したのは『元カレ』の結婚式だった。
 
新郎である基山(きやま)とは、2年ほど付き合っていた。
 
同じ職場ということもあり、周りには秘密。
 
決して仲は悪くなかったし、ここ1年は実鈴のアパートで半分同棲のような生活をしていたのだ。
 
それなのに、半年前のある日のことだった。
 
ベッドの中で基山は、結婚しようと思うと言い出した。
 
急に言い出したため、どうしたのかと聞いた実鈴。
 
しかし続いた言葉は、予想外のものだった。
 
子どもができたというのだ。
 
実鈴は意味が分からなかった。
 
もちろん自分は、妊娠なんてしていなかったから。
 
そして基山は更に続けたのだ…実鈴とはもうこれっきりにすると。
 
彼はあっけなく去っていった。
 
本当に、実鈴にとってはまさかの二股だった。
 
彼の話によれば、相手は大学時代からの彼女だそうだ。
 
仕事でこっちに出てきた基山と、遠距離恋愛をしていたらしい。
 
今思えば怪しいところもあったかもしれない。
 
結局、浮気相手は実鈴だったということだ。
 
その爆弾発言があって以来、スマホもアドレスも変えられていた。
 
さらに同じ職場で会っても、完全にスルーされるようになる。
 
付き合っていた2年なんて、何も無かったように。
 
突然幕を閉じた。
 
それを聞いて、店員は激怒した。
 
あまりに最低な話である。
 
そんな奴の式に行く必要なんてなかったのに!と怒る店員に、実鈴は苦笑した。
 
課の先輩の式に、実鈴だけ行かないわけにはいかなかったのだと説明する。
 
店員は実鈴に、今日は安くしておくから呑んで!というのだった。
 
その言葉に実鈴は、ありがとうとお礼を言った。
 
酔いはどんどん回っていき、思考はぐるぐるとまわる。
 
結婚しようと思うと基山が口にした時、まだ早くない?と思った実鈴。
 
自分じゃないのに…結婚するのは自分じゃないのに。
 
式の最中も一度も目が合うこともなかった。
 
それはそうだ、実鈴の存在はあってはいけないのだ。
 
あのキレイな白いドレスに、あってはならない『シミ』なのだ。
 
幸せそうな二人を見ていて、生きててすみませんとさえ思った。
 
お酒を呑みながら、このまま呑み続けていれば溶けてなくならないかと思う。
 
そうしたらきっと、楽になれるのに。
 

出会い

ズキンとした頭の痛みで目が覚めた実鈴。
 
徐々に思考が覚醒していく中、昨日自分はどうやって帰ったんだったかと考える。
 
そして次の瞬間、目の前にある温もりに一気に覚醒する。
 
誰!?そう思い、ベッドの中で一気に男を押して距離を置く実鈴。
 
目の前にいる男はそれで目が覚めたのか、眠そうに目を開けた。
 
実鈴は相手に見覚えがあった。
 
鳥栖(とす)さん…たしか隣の課の人だった。
 
昨日の記憶がほとんどない実鈴は、なんで?と頭を傾げた。
 
当たり前のように一緒に通勤となり、電車に揺られながら昨日の話を聞く。
 
鳥栖も昨日の二次会に出ずに帰宅し、あのバーに立ち寄ったのだそうだ。
 
しかしその時すでに実鈴は出来上がっていた。
 
同僚ということもあり、鳥栖が家まで送ることになったのだそうだ。
 
それは大変なご迷惑を…と実鈴はいたたまれない気持ちになる。
 
そんな実鈴に鳥栖は、意外だったと話した。
 
会社での実鈴は、いつもクールなイメージだった。
 
感情を表に出すようなタイプに見えない実鈴が、人前で呑んだくれてグダグダになっていたからだ。
 
顔見知り程度の鳥栖に醜態を晒してしまい、ぐるぐると考える実鈴。
 
酔って余計なことを話していないだろうかと、心配になってくる。
 
そんな実鈴の心配にはすぐに答えが出た。
 
「新郎が二股デキ婚の元カレだもんね」とぼやいた鳥栖が、仕方ないよねと言ったからだ。
 
全て知られてしまったことを悟った実鈴。
 
このことは内密に…と伝えるしかない。
 
そんな実鈴の声にも、奥さん身重だしね…と納得したように鳥栖は呟く。
 
その言葉に実鈴は更にいたたまれなくなるのだった。
 
電車を降りると、鳥栖は突然「俺と付き合わない?」と提案してきた。
 
失恋には新しい恋というしという鳥栖に、実鈴は即答でお断りする。
 
あまりに即答だったため、少しは考えてと鳥栖は抗議する。
 
しかし実鈴は、普通そうでしょうと冷ややかな視線を向けた。
 
鳥栖はむーっと何か考えた後、まあいいやと勝手に完結させる。
 
そして、今日の帰りに実鈴の家に寄るからと言ってきた。
 
驚く実鈴だったが、何やら結婚式のスーツを実鈴の家に置いてきたらしい。
 
ちなみに昨日は仕事の帰りに結婚式に参加したため、今日のスーツには困らなかったようだ。
 
そういうわけでよろしく、と勝手に決めて鳥栖は会社に入って行ってしまったのだった。
 

馴染んでくる男

あまり関わりたくないと思った実鈴の気持ちとは裏腹に、鳥栖は宣言通り実鈴の家を訪れていた。
 
玄関先でスーツを渡した実鈴だったが、社交辞令というものでお茶でも飲んでいくかと声をかける。
 
しかしそれを待っていたのか、鳥栖はビールのほうがいいと部屋に上がり込んだ。
 
部屋の中でめちゃくちゃくつろいでいる鳥栖に、なんで?という疑問しか出てこない実鈴。
 
そして何本かビールを開けながら、鳥栖はこの部屋いいね~と口にした。
 
確かに実鈴の家は会社まで電車一本なのだが、昨日実鈴の家から通勤して鳥栖は感動したらしい。
 
まったく帰る様子のない鳥栖に、実鈴は『終電』と声をかけた。
 
それでも鳥栖はそのまま話し続けた。
 
そして実鈴に、社内恋愛が向いているという。
 
戸惑う実鈴だが、口は堅そうで顔にも出なさそうだからと鳥栖は言った。
 
だから基山とのことも、こんなことがなければ気がつかなかったと話す。
 
実鈴は鳥栖の話を聞きながら、だから今弱っているしセフレにちょうどいいということかと質問する。
 
しかし鳥栖は、そんな実鈴の言葉に驚いたようだった。
 
身体目当てだと思われてるなんて心外だと言いながら、それなら最初の日に抱いていると笑う。
 
鳥栖が言っているのは、そんな実鈴の意外な一面を見て気になりだしたという話なのだ。
 
だから、そこは評価してほしいと机に突っ伏す鳥栖。
 
実鈴はそんな鳥栖を、静かに見つめていた。
 
鳥栖はそのまま…ずりずりと床に倒れていき、爆睡し出した。
 
実鈴は眠ってしまった鳥栖に、毛布をかける。
 
そして、自分もベッドに潜り込んだ。
 
そんな実鈴の様子を、鳥栖は見ていたのだった。
 

元カレの欠片を断捨離

その日からというもの、鳥栖はなにかにつけて会社帰りについてくるようになった。
 
最初のほうこそ、色々理由をつけていた鳥栖。
 
しかし部屋に来た鳥栖は別に何をするわけでもなく、テレビを観たり仕事の話をしたりするだけだ。
 
別に襲われるようなことも、全くない。
 
きっと来るのを拒絶してもよかったのだろうが、それも面倒でしなかった実鈴。
 
何となく、実鈴は自分が無気力になっている気がした。
 
そんなある日のことだ。
 
突然鳥栖が、ちょっと掃除をしてもいいかと聞いてきた。
 
掃除発言に驚くが、それよりも休みの日くらい帰ったらどうだと思う実鈴。
 
しかし鳥栖は、自分はお掃除男子だから大丈夫だと答えにならないことを言うのだった。
 
そして鳥栖は本当に、掃除をし出した。
 
まずやり出したのは、洗面台だった。
 
鳥栖の手には、元カレの歯ブラシと元カレのタオル。
 
元カレの歯ブラシでゴシゴシと蛇口を磨く鳥栖を、実鈴は何も言わずに眺めた。
 
そして元カレのマグカップには、いつの間にかサボテンが植えられていた。
 
元カレのCDを抱えて持ってきたと思ったら、売りに行く?と言われてる。
 
あれよあれよという間に、CDを売りにいった二人。
 
結局そのCDをすべて打っても、2000円程度にしかならなかった。
 
帰り道、ドーンと儲けて豪遊したかったのにとぼやく鳥栖。
 
あれ私のじゃないから…と伝えてみるが、あらそうなのーと棒読みのセリフが返ってくる。
 
人のものを勝手に売っていいのだろうかと考えるが、もうどうしようもない。
 
宝くじでも買って一攫千金する?と提案した鳥栖。
 
しかし実鈴は、一攫千金は好きじゃないと話した。
 
鳥栖があまりにも、豪遊したい!無駄遣いしたい!というので実鈴は提案した。
 
コンビニスイーツ全種買いの提案に、甘党らしい鳥栖は同意したのだった。
 
コンビニスイーツを、買えるだけ買って実鈴の家に帰る。
 
意外に侮れないおいしさのスイーツを、二人で美味しいと食べた。
 
この期に及んで、まだ人のモノを売ったお金ということを気にする実鈴。
 
鳥栖はそんな実鈴を笑い、慰謝料代わりなら安いものだろうと言う。
 
元カレのCDで買ったスイーツ。
 
そして元カレの欠片が掃除で無くなった実鈴の部屋。
 
実鈴は鳥栖に、ありがとうと素直にお礼を言った。
 
穏やかに言った実鈴に、鳥栖は近づく。
 
そして頬に手をあて、ふたりはキスをした。
 
見つめあって、またキスをして…そのままベッドに寝ころぶ。
 
しかしその瞬間に、実鈴の中に元カレが去っていった時の記憶がよぎる。
 
そして幸せそうに笑って、こちらを見もしなかったあの日。
 
やめて…と目元を隠して呟く実鈴。
 
鳥栖は、まだ基山のことが好きなのかと問いかける。
 
実鈴は、わからないと答えた。
 
きっと自分の中にあるのは、未練とかじゃない。
 
それでも半年前に、何の前触れもなく突然振られた。
 
あまりに突然すぎて、まだ自分の中でケジメがつけられていなかった。
 
だから心のどこかで、妊娠中の奥さんに不満が募ってまた来てくれるんじゃないかと…期待をしていた自分がいたのだ。
 
しかし結婚式の日に、思い知らされた。
 
もう自分は、完全に蚊帳の外なのだ。
 
自分なんて存在しない世界で、二人は幸せそうに笑っていた。
 
だったら私は、どこに行けばいいのだろうか。
 
どこで泣いたらいいのだろうか…もうこんな喪失感を味わいたくないと思った。
 
こんな気持ちを味わうくらいなら、踏み込んだ関係なんていらない。
 
実鈴はそう、苦し気に呟いた。
 

あの日から一週間経っていた。
 
それから、鳥栖は家に来なくなった。
 
実鈴は自分に、大丈夫だと言い聞かせる。
 
寂しいなんて…思う関係じゃないから。
 
それでも、基山さんの面影を消してくれたのは間違えなく鳥栖だと思った。
 
基山の待ち受けを見ながら、女性社員が盛り上がっている。
 
どうやら待ち受け画面が、生まれたらしい子どもの写真になっているようだ。
 
実鈴も一緒に見ようと声がかかったが、実鈴は笑顔でやり過ごした。
 
のどが渇いて、給湯室に移動した実鈴。
 
そこではタバコ休憩をしていた基山がいた。
 
一瞬戸惑うも、実鈴は大丈夫だともう一度自分に言い聞かせた。
 
基山から話しかける雰囲気はなく、何も言わずにタバコを吸い続けている。
 
実鈴は思い切って話しかける。
 
お子さんは女の子かと聞けば、少し黙った後でまぁねと返事をする基山。
 
実鈴は笑顔を保ったまま、話し続ける。
 
立派なパパなんだ、すごいですね。
 
写真たくさん撮ってるんですか?
 
大丈夫、平気…そう何度も言い聞かせて普通に話す。
 
置いてあったスマホに目をやり、写真みせてくださいと言う実鈴。
 
しかし基山は、やだよとスマホを握りしめた。
 
「危害加えられたらコワいし」
 
微笑を浮かべながらそう言われ、実鈴は固まった。
 
その瞬間、鳥栖が基山の胸倉を掴んでいた。
 
怒りの形相で基山を睨みつける鳥栖。
 
危害を加えられかねないようなことをしたのかと、基山に叫ぶ鳥栖。
 
それだけのことをした自覚があるのか。
 
基山のスマホは、鳥栖に胸倉を掴まれた勢いで飛んでいく。
 
実鈴は鳥栖を止めた。
 
実鈴に言われ離れた鳥栖だが、それでも怒りが治まらないのか荒い呼吸を繰り返していた。
 
しばらくし冷めた様子で鳥栖は、すみませんいきなり…と落ちていたスマホを手に取った。
 
そして基山に、お子さん可愛いですねとスマホを渡す。
 
基山は鳥栖の手から、奪うようにスマホを受け取った。
 
鳥栖は基山を真っすぐみていった。
 
将来突然好きな男が出来婚して、その後モノみたいに無かった存在扱いされるような…。
 
「そういう目に合わないといいですね」
 
そう言い、鳥栖は実鈴の手を引いて給湯室を出た。
 
誰もいない会議室に入った二人。
 
実鈴は、あんなこと言わなくていいのにと呟く。
 
どんなに腹が立っても、子どもには罪はないのだ。
 
そう言えば鳥栖は、そうなることを願っているわけじゃないと話す。
 
それでも基山は、自分のしたことにビビればいいんだと言った。
 
実鈴はじっと鳥栖を見つめる。
 
そして、ありがとうと伝えた。
 
怒ってくれて、嬉しかったのだ。
 
何で鳥栖はここまでしてくれるのか、実鈴は不思議だった。
 
それを素直に聞けば、鳥栖はあの日のことを話し出す。
 
バーでつぶれていた実鈴を送っていったあの日。
 
酔っぱらってもう別人になっている実鈴をなんとか送り届けた。
 
鍵を開けて、実鈴の部屋に入る。
 
鳥栖は吐くといけないと、実鈴の部屋からタオルを準備した。
 
その時に、色んなところに男の存在を表すものが置いてあるのを見た。
 
タオルを実鈴に渡そうと近づいて声をかけると、実鈴は部屋の前で立ち尽くしていた。
 
そして、呆然としながらボロボロと涙をこぼしていたのを見る。
 
実鈴の涙はどんどん溢れて、床にボタボタと涙が落ちる。
 
激しく動揺したした実鈴は、大きな叫び声をあげて床に崩れ落ちた。
 
実鈴は、子どものように丸まって大きな声で泣いたのだ。
 
鳥栖はそんな実鈴を、放っておけなかった。
 
一人になんて、したくなかったのだ。
 
そう実鈴に告げれば、実鈴は表情を崩す。
 
もし居場所がわからないなら、自分のところに居ればいいと実鈴を真っすぐみて鳥栖は伝える。
 
「泣くのも笑うのも、俺のそばでしろよ」
 
そう伝えれば、実鈴は鳥栖の腕の中におさまった。
 
腕の中で、もう泣くのはイヤだとぼやく実鈴。
 
鳥栖はなるべく泣かさない!と言う。
 
笑ってしまった二人は、もう一度抱きしめあった。
 
また、泣くことがあるのかも知れない。
 
だけどいつか心から笑うために、実鈴は恋をするのだ。
 
 
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優しい毒薬 のネタバレ

こんな写真を撮ってしまったんですけど、と見せられたのは彼氏の浮気写真だった。
 
杏奈(あんな)は彼氏が写ったスマホ画面を見て、はぁ!?と声を上げた。
 
仕事から家に帰ると、彼氏の雅由(まさよし)がすでに家で寛いでいた。
 
おかえりーといつも通り笑顔を向ける雅由。
 
杏奈は曖昧に返事をしながら、とりあえず聞いてみる。
 
先週の土曜日は何をしていたのかと。
 
すると雅由は至って普通に、杏奈が休みだったから自分の家でテレビを観ていたと話した。
 
うそつけー!と心の中で叫ぶ杏奈。
 
しかし「ならいいんだっ」とそれ以上追及はしなかった。
 
心の中で、「よくねぇよ!!!」と自分にツッコミをいれながら。
 
実鈴はキッチンに立ちながら考える。
 
この写真なに?と問い詰めてみようか?
 
もしかして勘違いかもしれないし、聞いたら意外と誤解で笑って済むかもしれないじゃないか。
 
もう一度写メを確認してみる。
 
楽しそうな女性の肩を抱く雅由。
 
そしてそこはホテルの前。
 
…明らかに誤解じゃないと、理解するのだった。
 
現実に打ちひしがれ、膝をつく杏奈。
 
実は、雅由の浮気は二度目なのだ。
 
前の浮気の時、杏奈は泣きながらそれを責めた。
 
しかし雅由は、杏奈が言えば言うほど離れていってしまった。
 
いつまでグチグチ言ってるんだと言われ、姉にも責めても逆効果だと言われた。
 
責めているときの顔は醜いものだから、そんな女のところに帰る気にならなくなるのだそうだ。
 
優しく笑ってご飯を作って、どーんと構えていればいいのだと言われた。
 
そして杏奈は、雅由の大好物であるオムライスを作って出す。
 
カフェで働いている杏奈は、料理が得意だ。
 
雅由は杏奈のオムライスを盛大に褒めながら、喜んで食べる。
 
しかし杏奈は、一緒に食べることが出来ない。
 
杏奈は卵アレルギーなのだ。
 
俺のためにわざわざごめんなーという雅由に、オムライスは卵に触らずに作れるからと笑顔を見せた。
 
ちなみにハンバーグや唐揚げのように、手で触れるものは流石に作るのは怖い。
 
それでも、雅由のためならいつでも作るよと優しく伝える。
 
雅由はそんな杏奈を抱きしめるのだった。
 
姉に言われた方法は、やはりどうしようもなくモヤモヤした。
 
だけどそれ以外は何の問題もない、雅由は優しい彼なのだ。
 
杏奈はもう気にしないと決めた。
 

口の悪い同僚

昨日浮気現場の写真を激写し見せてきた彼、荒尾(あらお)に結果を報告する杏奈。
 
それを聞いて荒尾は、修羅場にならなかったことを残念がった。
 
杏奈はそんな荒尾に、あんな写真ごときで動揺しないわ!と強気な発言をした。
 
そんな杏奈を笑いながら、荒尾は昨日動揺しまくっていたことをツッコんだ。
 
痛いところをつかれたが、杏奈は浮気は生理現象だと余裕ぶって見せる。
 
トイレに行くのと同じなのだ!
 
結局雅由も自分のところに戻ってきたし、浮気相手の女の子に同情するとまで強気で言って見せた。
 
しかし荒尾は、そんな垂れ流し男と付き合っている杏奈はなんなのかというのだった。
 
ちなみに杏奈は、自分にとってどうでもいい人間がどうでもいい造形に見えてしまうとことがある。
 
セクハラしてくる男なんて落書きみたいな顔だし、同僚である荒尾も薄いものだ。
 
杏奈は、荒尾のことを本当に神経を逆なでしてくる男だと睨みつけてやった。
 
荒尾はまだ気になるのか、なんでそんな男と付き合っているのかと聞く。
 
浮気だって今回が初めてじゃないのを、荒尾は知っているのだ。
 
そう聞かれ、杏奈は素直に話す。
 
理由は『優しいから』である。
 
小さい時に、男子からしょっちゅうからかわれた杏奈。
 
そのせいで、ガサツな男がとても苦手なのだ。
 
雅由はいつも、杏奈のことを大切にしてくれる。
 
さりげなく荷物を盛ったり、大変な時はすぐに手伝いをしてくれる。
 
そう言いながらも、誰にでも優しかったらダメじゃんって話なのだけどと俯いた。
 
そんな杏奈に、よくわかってるじゃないですかと荒尾は言う。
 
無言になってしまった杏奈に荒尾は、まあどーでもいいやと呆気なく話を打ち切り仕事の話に切り替えるのだった。
 
杏奈は荒尾のようなタイプは苦手だった。
 
荒尾は職場のカフェの調理担当で、仕事は完璧でとても丁寧だ。
 
打ち合わせでよく顔を合わせる杏奈だが、とにかく荒尾は口が悪いのだ。
 
荒尾は絶対ドSだと、杏奈は思っていた。
 
やっぱり杏奈は、優しい人がいいのだ。
 
浮気はイヤだし、本当は怒ってやりたい。
 
それでも雅由は優しいから、杏奈がそうなったらすぐに他の女の子に持っていかれるだろう。
 
それだけはイヤだと思った。
 
だから現実から『浮気』の部分だけ取り除いてしまえばいいのだと思った。
 

やさしい毒

帰宅すると、雅由がご飯を作っていた。
 
驚いてキッチンに顔を出すと、雅由が作っていたのはハンバーグだった。
 
雅由は今日仕事が休みだったらしい。
 
しかしハンバーグは食べれないのだと、杏奈は申し訳なさそうに謝る。
 
そんな杏奈に雅由は、これは杏奈も食べられるやつだから大丈夫だと笑う。
 
わざわざ自分用に作ってくれたのかと訊ねれば、雅由はオムライスのお礼だという。
 
そんな雅由のやさしさに感動し、杏奈は涙が出るのだった。
 
どうしたんだと抱きしめる雅由。
 
やっぱり不安だったのだ…それでも大丈夫だと思った。
 
不安…でも大丈夫だ、信じる。
 
杏奈はそう思った。
 
ご飯を食べ終わり、お皿は自分が洗うと席をたつ杏奈。
 
雅由は、ハンバーグ美味しかった?と近寄ってくる。
 
うん!と返事をした瞬間、お腹が嫌な痛みを訴えた。
 
不思議に思っていると、雅由は笑った。
 
「なーんだ、大丈夫じゃん」
 
そう笑っているのだ。
 
そして笑顔のまま言った、さっきのハンバーグ卵入れてたんだよねと。
 
なんでもないじゃん!大げさに言ってた!?
 
そうあっけらかんとしている雅由。
 
好き嫌いレベルかよと楽しそうにしている。
 
杏奈に卵を克服してほしくてさ!という言葉が遠くに聞こえた。
 
激しくむせて、その場にうずくまる杏奈。
 
雅由は不思議そう近づき、どうした?と声をかける。
 
ひゅーひゅーとおかしな呼吸音が、杏奈から漏れる。
 
杏奈の身体にはどんどん、発疹が現れてきていた。
 

優しい男

病院に辿り着くと、看護婦に注意をうけた。
 
ちゃんと気を付けないとだめだ、命にかかわることもあるのだと言われる杏奈。
 
杏奈が薬を持っていたため、処置が早かったのが幸いだったのだ。
 
看護婦が部屋から出ると、まじビビったーと雅由はぼやく。
 
そして、卵食べるとあんな風になるのかとあっけらかんと謝る。
 
そして発作が出た際に、杏奈が自分で太ももに注射器を刺したことをどこか楽しそうに話す。
 
病院のベッドで横になる杏奈はもう、乾いた笑いを浮かべるしかできなかった。
 
上手く笑え内のは、薬のせいだろうかと思った。
 
杏奈は一晩入院することになったため、雅由は杏奈の職場に電話をしておいたらしい。
 
気が利くでしょ?と言う雅由に、杏奈は礼を伝える。
 
その時病室に、荒川が入ってきた。
 
どうやら店長から、杏奈のことを聞いたらしい。
 
杏奈は荒川に苦笑いを向けて、こんな状態だから明日休ませてもらうと謝る。
 
しかし言葉を最後まで言い終わる前に、荒川が雅由に掴みかかった。
 
胸倉を掴み、声を荒げる荒川。
 
自分の彼女に何をしてるんだ、殺す気かよ!?と怒りを露わにしている。
 
しかし雅由はそんな荒川に、何マジになってるの…とボヤキどこか真剣さがない。
 
そんな態度を見せる雅由に、荒川は更に腹を立てた。
 
浮気をしてもそういう態度だったのかと、雅由を真っすぐ見る荒川。
 
杏奈はその様子を、黙って見つめた。
 
何を言っているんだと適当にあしらおうとする雅由。
 
荒川は、そうやってムキになるほうをバカにして杏奈の気持ちを閉じ込めていたんだろうと言う。
 
全て知っていることを伝えれば、雅由は杏奈のほうを見た。
 
杏奈は言葉に詰まるが、雅由は「ごめん!」と頭を下げた。
 
自分は杏奈に甘えていた、杏奈は優しいから許してくれると思っていたと。
 
そんな雅由に荒川は、その言葉が嫌いだと言い捨てる。
 
『アレルギーは甘えだ』と言う人間と、同じニオイがするからだ。
 
アレルギーというのは、命に関わるのだ。
 
本当に死ぬほどつらいのだ。
 
それなのに許さない杏奈が悪いみたいな言い方をする雅由が、荒川は許せなかった。
 
雅由は、優しい男じゃないのだ。
 
雅由は結局、自分に甘いだけの男なのだ。
 
その荒川の言葉に、ハッとしたのは杏奈だった。
 
いつも杏奈は辛かったのだ…今もとても辛かった。
 
アレルギーも浮気も、雅由にとっては「杏奈なら許してくれる」。
 
その程度の認識だったということだ。
 
命に関わることもあるアレルギー。
 
雅由と付き合うということは、命がけと言うことなのだろうか。
 
杏奈はそれってどんなハリウッドセレブなのだろうと思った。
 
雅由の顔が、どんどん崩れていった。
 
そう、杏奈は自分にとってどうでもいい人間はどうでもいい造形に見える。
 
もう雅由は、便所の落書きくらいにしか見えなかった。
 
杏奈は思った。
 
自分は『これ』に命を懸けるのか?
 
ハリウッドスターでもないこの男に?
 
そう思った瞬間、杏奈は口を開いていた。
 
「ごめん、別れて」
 
突然の言葉に、雅由はとても焦ったようだった。
 
もう浮気はしないからと必死に詰め寄る。
 
しかし杏奈にはもう、雅由は便所の落書きにしか見えない。
 
ムリ、と一刀両断されて雅由は去っていった。
 

解けた洗脳

翌日、荒川はまた病院に来ていた。
 
大丈夫ですか?と杏奈に声をかけるも、大丈夫じゃないとベッドに突っ伏している杏奈。
 
さすがにダメージは大きかったようだ。
 
荒川は、洗脳が解けてよかったじゃないですかと言う。
 
杏奈は『洗脳』という言葉を、黙って受け止めた。
 
そして荒川に、アレルギーは詳しいのかと聞いてみた。
 
すると荒川も、昔キウイに反応が出たのだと話してくれた。
 
それなのに親戚の『ババア』が、アレルギーのことを甘えだと思うタイプの人間だった。
 
「甘えるなと」か「食べて免疫をつけろ」と言われて無理やり食べさせられ、病院に運ばれたことがあるらしい。
 
ちなみに最近その親戚に、好き嫌いするなといってイナゴを食べさせてやったようだ。
 
すると荒川は、杏奈に何かを手渡した。
 
タッパーに入っているのは、卵無しのハンバーグだそうだ。
 
自分なら卵無しでも、美味しく作れるという荒川。
 
そして、あんなアホな男のしょうもないハンバーグにがっつかないでくださいと背中を向ける。
 
その言葉に、反射的に反論しながらも杏奈は考えた。
 
この人は、わざわざこれを作ってきたのだろうか。
 
実はサービス精神旺盛な人なのか、調理師の性なのか。
 
そういえばSというのは、サービスのSともいうなと思う杏奈。
 
…ということは、実は荒川は優しいのか。
 
そして杏奈は、荒川に言われた言葉を思い出す。
 
雅由に言ってくれた言葉や、今言ってくれた言葉。
 
そう思ったら、目の前にいる雅由がキラキラ輝いて見えた。
 
杏奈にとって、どうでもいい人はどうでもいい造形になる。
 
しかしどうでもよくない人は、キラキラして見える。
 
突然輝いて見える荒川と、そう見えてしまった自分に杏奈は驚き眉を顰める。
 
その杏奈の表情を見て、何そのブサイクな顔といってくる荒川は相変わらずだ。
 
自分に戸惑いながらも、杏奈は荒川にいつも通り言葉を返すのだった。
 
 
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外面が良いにも程がある。の感想

外面が良いにも程がある。 の感想

イケメンで世渡り上手な瀬高。
 
爽やかな男を装いながらも中身はなかなか毒舌で、こういう人多いだろうなと思いました。
 
しかし20点女と位置付けた吉野の存在で、少しずつ変わっていった瀬高。
 
世渡り上手ということは、しっかり周りを見ることもできるということ。
 
吉野と関わるうちに、自分のしてきたことにも気がついてしっかり反省していきました。
 
だから本当の意味で、いい男になっていったんじゃないかなと思いました。
 
吉野が逆バージョンの外面を被っていたのは、面白かったです。
 
本当はとても美人な吉野は、何のために外面を作っているのでしょうか。
 
瀬高にはこれからも振り回されつつ、吉野の内側を探ってほしいなと思いました。
 

業務上偽装恋愛 の感想

実はめちゃくちゃデキる女だけど、控えめな可愛い女性を演じていた栞。
 
そんな栞に告白した、御曹司である長洲。
 
栞の努力が認められた瞬間の、悪い表情のギャップが面白かったです。
 
同僚の女性たちのミスを影で直しているにも関わらず、それを表に見せない。
 
さらにその女性たちに、楽しているのに玉の輿とか陰口を言われる栞。
 
それなのに控えめに徹する栞、すごいと思いました…。
 
長洲はどこか緩くて、おバカそうなキャラクターでした。
 
だけど最後のシーンで、本当の栞の姿をわかっていたことがわかります。
 
めちゃくちゃカッコよかったです!
 
得に腹の立つ女性社員を、ピシャっと成敗したところが最高でした。
 
出来るところをあまり見せないけど、本当はちゃんと出来る。
 
似た者同士な二人でした。
 

いたい にがい 少しあまい の感想

とにかく元カレである基山が最低すぎました…実鈴が可哀そうで切ない。
 
そして最後まで何もしらない基山の奥さん。
 
これでいいのかと思ってしまいましたが、子どもにも奥さんにも罪はないんですよね。
 
とても傷ついているのに、人前では顔に出さない実鈴。
 
偶然とはいえ、そんな実鈴を支えてくれた鳥栖。
 
本当に居てくれてよかったと思いました。
 
傷ついてボロボロになっていた実鈴を見てしまって、放っておけなくなった鳥栖。
 
鳥栖の基山のモノを消していく作業が、本当に素敵でした。
 
最後基山が、子どもの写真を実鈴に見せなかった時に発した一言でこちらも発狂しそうになりました。
 
でも思ったことを全部鳥栖が言ってくれて、スッキリ!
 
鳥栖と実鈴には、めちゃくちゃ幸せになってほしいです…!
 

優しい毒薬 の感想

こちらも最低な男が彼氏でした。
 
何をしていてもどこか飄々としている彼、雅由。
 
本音でちゃんとぶつかろうとする杏奈がムキになるのを、その方がおかしいと思わせていく洗脳。
 
こういう人、結構いるんじゃないでしょうか。
 
本当に甘い男で、読んでいてモヤモヤしました。
 
アレルギーについても、本当に真剣に考えていなかった様子の雅由。
 
杏奈が病院に運ばれるほどだったのに、どこか軽い。
 
そこに荒川がガツンといってくれて、気持ちよかったです!
 
口は悪いけれど、実は優しい荒川。
 
杏奈もきっとこれから、そこに気づいていくんだろうと思いました。
 
荒川のお陰で、杏奈の洗脳が解けてよかったです。
 
顔が落書きになっていく様子も、笑えました。
 
 
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※本ページの情報は2020年6月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXTサイトにてご確認ください。